踊る小児科医のblog

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福島県の甲状腺がん(2016年2月)39→51人、推定発症率7.8→8.6/10万に

2016年02月17日 | 東日本大震災・原発事故
2016年2月15日発表のデータをチェックしてみましたが、これまでの延長線上で増えている形で、新たな知見はありません。
先行調査のデータは追加修正なし。(2011-2013)

本格調査(2014-2015)は、前回(2015.11)と比較して、
2016.02発表 51人(A1 25人、A2 22人、B 4人)
2015.11発表 39人(A1 19人、A2 18人、B 2人)
     差 12人(A1 6人、A2 4人、B 2人)
(カッコ内は先行調査の結果で、A1からの発見がやや多めになってきている)

単純計算した発見率(患者数/一次受診者数)は、
先行 2015.08発表 37.3人
本格 2015.11発表 19.5人
本格 2016.02発表 21.6人/10万人あたり

これを、当サイトで従来より実施している
先行調査 スクリーニング効果10倍として 1/10
本格調査 受診間隔2.5年として 1/2.5
を掛けると、

推定の年間発症率は、
先行 2015.08発表 3.7人
本格 2015.11発表 7.8人
本格 2016.02発表 8.6人/10万人あたり



一次の判定率と二次対象者の受診率を加味すると、
 14.4人/10万人あたり
まで増加するものと推計されます。
(前回の推計値は12.4)

この数字は、現時点でベラルーシの思春期の1999-2000年の数字「6.6~9.5」に相当し、補正後の推計値は同じく2001年のピーク「11.3」を上回ることになります。(グラフは下に再度引用)

同日発表になった「中間とりまとめ最終案」でも、先行調査について「数十倍のオーダー」で発見されているが、放射線の影響は「完全には否定できない」としつつ、「考えにくいと評価する」と結論づけている。

一方、本来の目的である本格調査のデータの評価方法については、「どういうデータ(分析)によって、影響を確認していくのか、その点の「考え方」を現時点で予め示しておくべき」という前回の案とほぼ同じ内容であり、驚くべきことに、現在続々と発見されている本格調査の患者数が「増えているのか減っているのか」を評価する方法を全く用意していない事実が明らかになっている。

おそらく、これは現実を隠すための方便であろうと推測する。
先行調査で「数十倍のオーダー」だという一般的にはインパクトの強い結果の議論に焦点を向けることによって、先行調査の2~3倍(当サイトの評価方法)だということが明らかになりつつある本格調査の結果に、しばらくの間(=数年程度)目をそらさせることを考えているのだろう。

あるいは、気がついていないだけかもしれないが。

前回(201511)の結果についての記事;
福島県の甲状腺がん(11/30):本格調査で39人、推定発症率7.8人(補正後12.4)/10万 倍増は確実 2015年12月12日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/b244bf096d0d4f0d1a853a7101d9e47e

ベラルーシのグラフ



(追記)どうして「いわゆる脱原発派(※)」の人たちは、先行調査と本格調査の患者数を「足して」こんなに増え続けていると言いたがるのだろう。足すんじゃなくて「比較して」増えてるかどうかが問題なのに。。

※丸川環境大臣が創作した新用語である「反放射能派」と同義なのかは不明。また、ここで「いわゆる」を付けたのは、脱原発を考えて活動している人たちが皆んなそうなのではないという意味。