甲状腺がんに関する錯綜した状況について、何らかの判断ができるのは三巡目を見てからで、最終的な結論には10年は必要、それまで医療不信を解消しつつ受診率を維持することが肝要とお伝えしてきたが、危惧していた事態が現実となってしまった。
鎌田實氏は「福島県小児科医会には、驚いた。いったい、どういう考えなのだろうか」と批判した上で、「二巡目でも多数見つかっていることは、スクリーニング効果では説明できない。不安を取り除くには、しっかりと甲状腺検査をし、見つかったがんはできるだけ早期に治療すること。もし甲状腺検査を縮小すれば、不信感が起こり、かえって不安を増長することになる」という至極真っ当な見解を表明した(毎日新聞)。
→さあこれからだ/132 甲状腺検査縮小 隠れる真実=鎌田實
毎日新聞2016年9月18日
http://mainichi.jp/articles/20160918/ddm/013/070/026000c
同会が福島県に要請した声明を確認してみたが、縮小という文字はないものの、「事業実施の一部見直しを含む再検討」という表現には現状維持という意味はなく、地元紙の記事でも「会長は、規模を縮小しても放射線被ばくによる影響の有無などを把握することは可能との認識を示した」と、明確に規模縮小について言及している。
→平成28年度福島県小児科医会声明(2016年8月28日)
http://fukushima-ped.jp/archives/147.html
これに批判的な意見の中には、一巡目での「多発」が確定的であるという見解が含まれているが、ここではその立場はとらない。3月に発表になった「中間とりまとめ」では、被曝線量、発見までの期間、事故当時の年齢、地域別の発見率の4点を総合的に判断して、放射線の影響を「完全には否定できない」が「考えにくい」と評価している。しかし、この評価には二巡目との比較を考慮していないという重大な欠落がある。
同会の声明にも二巡目と比較して考察した形跡は見当たらない。
ここで、9月までの甲状腺がん検出状況を確認してみると、先行検査(一巡目)では確定101+疑い14=115人、本格検査(二巡目)では確定34+疑い25=59人。有病率は先行検査が38.3人、本格検査は21.2人/10万。推定発症率の推移はグラフに示した。「先行検査は保留、本格検査での増加は確実」という1年前の判断は何ら変わりない。

推定発症率は、スクリーニング効果を10倍と仮定して計算した。これを20倍まで上げれば、検討委員会の評価も妥当と言えるかもしれないが、その場合は本格検査との差が更に大きく拡がってしまう。原因の如何に関わらず、本格検査での増加は否定できない。
生検や手術は従来からのガイドラインに従って実施されており、過剰治療の可能性は否定されている。本格検査における年齢分布が先行検査と大差ないことは希望的材料と言えるが、現在の検出状況を合理的に説明できる見解はどこからも出されていない。
いずれにせよ、最低でも三巡目の結果を待たなくてはならず、「中間とりまとめ」でも検査継続の必要性が強調されている。同会の要請は問題点をはき違えた間違った判断だと言わざるを得ない。
何よりも問題なのは、同会の要請に対して、全国の小児科医や医療関係者から批判的意見が全くと言っていいほど聞こえてこないことだ。鎌田氏が指摘したように、この事態が医療不信を増長させたことは間違いない。
(この記事の内容は環境部や保険医協会の統一見解ではなく、青森県小児科医会とも全く関わり合いがないことをお断りしておく)
※某業界紙に掲載予定の原稿です
鎌田實氏は「福島県小児科医会には、驚いた。いったい、どういう考えなのだろうか」と批判した上で、「二巡目でも多数見つかっていることは、スクリーニング効果では説明できない。不安を取り除くには、しっかりと甲状腺検査をし、見つかったがんはできるだけ早期に治療すること。もし甲状腺検査を縮小すれば、不信感が起こり、かえって不安を増長することになる」という至極真っ当な見解を表明した(毎日新聞)。
→さあこれからだ/132 甲状腺検査縮小 隠れる真実=鎌田實
毎日新聞2016年9月18日
http://mainichi.jp/articles/20160918/ddm/013/070/026000c
同会が福島県に要請した声明を確認してみたが、縮小という文字はないものの、「事業実施の一部見直しを含む再検討」という表現には現状維持という意味はなく、地元紙の記事でも「会長は、規模を縮小しても放射線被ばくによる影響の有無などを把握することは可能との認識を示した」と、明確に規模縮小について言及している。
→平成28年度福島県小児科医会声明(2016年8月28日)
http://fukushima-ped.jp/archives/147.html
これに批判的な意見の中には、一巡目での「多発」が確定的であるという見解が含まれているが、ここではその立場はとらない。3月に発表になった「中間とりまとめ」では、被曝線量、発見までの期間、事故当時の年齢、地域別の発見率の4点を総合的に判断して、放射線の影響を「完全には否定できない」が「考えにくい」と評価している。しかし、この評価には二巡目との比較を考慮していないという重大な欠落がある。
同会の声明にも二巡目と比較して考察した形跡は見当たらない。
ここで、9月までの甲状腺がん検出状況を確認してみると、先行検査(一巡目)では確定101+疑い14=115人、本格検査(二巡目)では確定34+疑い25=59人。有病率は先行検査が38.3人、本格検査は21.2人/10万。推定発症率の推移はグラフに示した。「先行検査は保留、本格検査での増加は確実」という1年前の判断は何ら変わりない。

推定発症率は、スクリーニング効果を10倍と仮定して計算した。これを20倍まで上げれば、検討委員会の評価も妥当と言えるかもしれないが、その場合は本格検査との差が更に大きく拡がってしまう。原因の如何に関わらず、本格検査での増加は否定できない。
生検や手術は従来からのガイドラインに従って実施されており、過剰治療の可能性は否定されている。本格検査における年齢分布が先行検査と大差ないことは希望的材料と言えるが、現在の検出状況を合理的に説明できる見解はどこからも出されていない。
いずれにせよ、最低でも三巡目の結果を待たなくてはならず、「中間とりまとめ」でも検査継続の必要性が強調されている。同会の要請は問題点をはき違えた間違った判断だと言わざるを得ない。
何よりも問題なのは、同会の要請に対して、全国の小児科医や医療関係者から批判的意見が全くと言っていいほど聞こえてこないことだ。鎌田氏が指摘したように、この事態が医療不信を増長させたことは間違いない。
(この記事の内容は環境部や保険医協会の統一見解ではなく、青森県小児科医会とも全く関わり合いがないことをお断りしておく)
※某業界紙に掲載予定の原稿です