熊本レポート

文字の裏に事件あり

コメリと熊谷組のコンプライアンス

2012-03-29 | インポート

 これほど関係者が総ぐるみという時代があったであろうか。皮肉なことに、いま最も叫ばれているコンプライアンス(遵法)の問題である。
 農協をライバルとしていることでも分かるが、日本の自然と共有する企業として、今年度は1000店舗体制を確立するというコメリ(捧雄一郎社長・新潟市)。そのコメリが結果的に熊本の自然を破壊した。
 同社は5月1日の開店を目指してコメリパワー宇土店(宇土市・8935㎡)の建設を急ピッチで進めているが、そこに無許可、無登録の山ずり(岩石を含む土砂・岩砕)を持ち込んだ。
 搬入したのは同建設を受注した熊谷組九州支店(森次誠治支店長・福岡市)。同社は造成用として3万立方メートルの山ずりを予定し、そこに違法的な手段による山ずりを搬入。
 1万平方メートル以上の山地開発には開発許可を要し、それ以下の面積でも地形改造としての届け出が求められ、それが山ずりとなると採石場としての許可、搬出業者としての登録許可も要する。ところがコメリと熊谷組は、これに違反。
 熊谷組の同業者からの通報で違法が明るみとなったが、これについて同社の現場所長は「違法とは知らなかった」と回答。
 しかし同社は全国大手の中のゼネコン。公共工事の場合、搬入する岩砕には材質証明も要する程で、彼らには許可、登録証明が必要なことは常識。それを承知で違法行為とは、明らかにコンプライアンスが問われる。「公共工事への入札参加停止という処分にも相当する悪質な行為」同業他社の見解は手厳しいが、そうした中にも同情の声はあった。「コメリの発注価格が破壊価格で足も出る」足の出る超低価格の発注に際し、材料費からの補填を考えたというのが、彼らの推察する同情の背景。
 指摘後の現在、同社は廃土の搬入に切り替えたが、そうなると手抜き工事という見方も出る。それについても彼らは、「表面も廃土では駐車場としては通用しない」と懸念する。
 一方、施主のコメリ側はどうかというと、それが「全く把握していなかった」と同社の開発部。施工業者だけでなく、建設業界の見解とは別に施主であるコメリのコンプライアンスも問題。
 ところで、こうした違法業者による岩砕の搬入は、新幹線建設の頃から増えた。
 それが理由とはいわないが、この二年の間に破綻、また廃業に追い込まれた県内の採石業者は三社。残りの業者も大方は危機的な経営内容にある。
 林地の乱開発は県農林水産部林務保全課の監督下にあって、また違法業者における採石場と採石及び同搬出の管理、指導は同商工観光労働部産業支援課に存在する。「熊谷組への罰則は想定されない」(同業者談)
 その理由もこの「県は誘発犯」という点にあるが、熊本のひとつの産業を衰退させた責任が行政にもあるとしたら、それは彼らのコンプライアンス…。