熊本レポート

文字の裏に事件あり

特報!大損したのは相良村のどっちだ?

2015-02-08 | ブログ

 平成24年9月、相良村の発注工事に関して、指名競争入札で違法に指名業者から外されたと、建設会社「旧技建日本」が村に約1、630万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が熊本地裁であった。

 原告は訴えの中で、同社が同20年の村長選挙で村長の対立候補を支援したことへの報復と主張したが、判決は同報復の有無には触れず、「意図的に指名を回避していたことが認められ、裁量権の範囲を逸脱している」と原告の主張を認めて、村に約640万円の支払いを求めた。

 後日、敗訴したことで控訴するか否かで村議会が開かれたが、同議会は反対多数でこれを否決。

 この時、徳田正臣村長は 「村民の利益を考えれば控訴すべきであった」  否決への不満を語った。

 なお賠償金について同26年4月、福岡高裁が「賠償金など約850万円は徳田村長が支払うべき」と、住民訴訟を認める判決を下した。

 ところで旧技建日本は、同14年度から同19年度の矢上雅義前村長時代の相良村から99件の発注工事で指名を受け、その中で39件を受注している。矢上前村政は同社にとって「良好過ぎた関係」(他指名業者側での見解)にあったことは確か。

 それが徳田村政となって、 「選挙で対立候補を推したことから反発し、意図的に指名を外した」と同社は控訴したわけだが、これについて徳田村長を誕生させた村民は、 「応援を頼む予定などなかったし、選挙での対立が指名を外した理由ではない」

 別に理由はあったと語る。

 徳田村長も 「判決には事実誤認がある。村民の利益にはならないと考えた」

 別の背景、「指名排除」の理由とは、果たして何であったのか。

 矢上村政時代、技建日本は人事権にも口出しをしているという話も浮上して、『相良村ではなく堀川(技建日本の代表)村だ』という噂も村、いや球磨地域に流れた」

 村民の語る風評だが、球磨郡の建設業者も「当時、技建日本側から『指名に入れてやる』と村長のような発言まであった」と語る…。

  昨年末、公正取引委員会から「熊本の球磨郡地域に長期的な談合話が浮上」という話が漏れ出てきて、 「相良村の村民から談合疑惑の調査が公取(公正取引委員会)に申請された…時期は平成14年度から19年度分の長期」

 そんな情報が入った。

 そこで、公取に提出されたと推察される開札調書(入札結果)を相良村に求めて(情報開示請求)、それを情報公開条例に基づき入手したのだが見た途端、それに驚いた。

 技研技建日本の落札率が99・1パーセントから超高値の99・9パーセントで、それが並んでいるとなると驚異。 そして、これは単に同14年度に限ったことではなく、矢上村政の終わる同19年度まで続いた(右下表ただし合計39件中で95%~97%が9件)。 「落札を外した場合ならともかく、落札率が99パーセントで続くというのは、発注側と組んでいるか、そうでなければ『神業』である」  熊本市内で建設業を営む3人が、この落札表を見て絶句し、そして揃って言った。 「相良村には予定価格の事前発表がないとなると、正しく村長との協力技か『神業』」

 また、落札率99パーセントが最低価格での落札となると、他の入札参加業者は予定価格の100パーセントを超えるわけで、それが続いたとなると談合容疑は濃厚。

 1月28日、公正取引委員会(公取)は東日本大震災で、被災した高速道路の復旧工事において談合を繰り返していた疑いが濃厚だと、道路舗装大手のNIPPO、日本道路、東亜道路工業など13社を独占禁止法違反容疑で強制調査に入った。

 容疑の12件は「一般競争入札の形を取りながら、落札率が95パーセント前後と不自然に高い」と公取周辺は見ているが、それでは相良村における旧技建日本の超高値落札率への見解はどうなのか。 「公取は、落札率98パーセント以上の入札は談合容疑が濃厚としている」

 同記者クラブの話。  さて、ここで高値落札率が何で問題かと改めて説明すると、公共事業の原資は国民の税金で、それを公正に無駄なく使用するという意味で競争入札が実施されていて、そこで一番の安値業者へ仕事は発注される。

 落札率85パーセントよりも同99パーセントでの落札の方が、業者の方は儲けが大きくて得だが、反対に税金を納めている村民の方はそれだけ無駄、損をしたとなる、

 高松地方検察庁は摘発した溜め池改修工事を巡る談合事件で、 「公正な競争が行われていれば、2000万円は落札価格が下がっていた」  高値の落札額を厳しく指摘している。

 徳田村政になって、技建日本も指名されて参加した入札での落札率は81パーセントから87パーセント。

 旧技建日本は平成14年度から同19年度までの間で、相良村から総額10億9173万円の工事を受注しているが、それぞれの受注物件を徳田村政の落札率85パーセントで試算すると、何と1億5016万66021円の差額が浮上する。村民の金が約1億5000万円も浮き、余ったということにもなる。

 これは裏を返せば矢上村政と技研日本で、村民は1億5000万円も損したとはならないだろうか。

 後になったが公正取引委員会は「調査対象となり得る入札状況」と、その容疑はあるとしたが、その公取がなぜ強制調査で相良村に入らなかったというと、それは「行政執行権(5年間)外」(時効)という理由。

 そういう意味で、「知らなかった」、「見過ごした」という村議会の責任は、村民への情報開示、説明責任の上からも極めて大きいと言える。

 時効を前提にして当時の指名業者を訪ねて確認すると、予想通り複数の業者が「談合否定」をしなかった。 「独占禁止法違反容疑は執行権外でも、民事の方がある」

 弁護士はアドバイスを与えたが、後は人吉、球磨地域の住民がこの問題について、どう判断して、どう活かすかである。

 技建日本は平成23三年1月、五木村の大乗と合併して大乗技建日本となって、その本社を五木村に移転。 「相良村では自由が利かなくなったと、今度は五木村に狙いを定めた」

 村民は個人的な見解として語ったが、技建日本の相良村での騒動を考えると、その可能性が全くないとはいえないのも確かで、住民と注視していく必要はある。

 人間としての倫理観、政治理念で限界集落となれば、損するのは同集落、同住民…。