議員の大方は、特に地方選挙においては政策能力、公的実効能力という政治的資質、センスで誕生するものではなく、有権者の政治レベル、選択能力で称号(議員バッジ)、議席を得てなり得る職業でもある。鶏が先か卵が先かという解釈になるが、候補者はいかにして、こうした多くの有権者に支持されて選出されるかであって、当選は、その旧態依然とした政治力学、その知恵次第ということになる。
一方、それは、こうした大方の有権者を対象にして大きなアクションでも勃発すると、それは大きく狂うというリスクを抱えていることも確か。実に難儀な要求を求められる作業のようだが実態を理解して条件さえ整えば、極めて単純な構図での当選への道でもある。
こうした観点から、熊本県の第19回統一地方選挙を簡単に紹介することにした。(詳細は機関誌・熊本レポート、速報くまもとに掲載)
昨年4月、天草市議会において棚からぼた餅のように新議長が誕生 。
それは西村尚武議員による彼の所属する会派からの離脱が、その背景にあった。
昨年3月、西村氏は天草市議会議員選挙において上位で再選し、続いて先述した臨時議会を終えると彼は直ぐ辞職 。これについて意外な状況を作らされた議会を中心に「2400 票余りの民意を死なせた」と批判も挙がったが、同氏には重い決意があった。それが今回の県議選。
市議選後、西岡勝成県議の今期での勇退を知った西村氏は、ここで県議選への鞍替えを決意。
問題は、その転身への行動時期だが、彼の頭を過ったのは先ず3ヶ月以内という条件の繰り上げ当選。その条件にあった(次点)のが過去、県議選でトップ当選を続けていた池田和貴県議の地元(五和町)から出馬していた澤井一富氏。すなわち、西村氏の県議会員選挙は、ここから始まった。いまやJAあまくさ、西岡後援会、中村市長後援会の支持を得て、彼はトップ当選どころか2、3位を大きく引離す勢いにある。
県議選の上益城郡選挙区では昨年、益城町長選挙で敗れた元町長派がJAかみましきのM益城所長を担ぎ出そうとする動きがあった。ところが、その動きに大反対したのがM氏の父である。
平成19年の県議選で元町長(当時・町長)は田端義一氏を候補として擁立し、その選挙長を務め、同候補は初当選。
ところが、県から迎えていた副町長が選挙違反で逮捕され、また12月には「県議には向かない」という遺書を遺して自殺。実に不幸な選挙の結果であったが、その背景には別の黒い噂もあった 。
それは同選挙後、多額の金が要求されたという噂で、それに立ち会い人を務めたのがM氏の父 。
一方、平成23年の県議選で増永慎一郎氏を後継に指名して勇退した県議会の元重鎮であった児玉文雄氏が今回、「思うような働きがない」と増永氏を切り捨て、元御船町議の田端幸治氏 を擁立。そこに、これまた馳せ参じたのが、M氏の担ぎ出しに失敗した先述の元益城町長派。
これだけでは県下で1、2を争う激戦区と理解されるが、そこに埋没するのではないかと懸念されるのが増永氏と同じ現職の大平雄一氏。 彼を支持する益城町長と同じく「真面目さ一本」の大平氏だけに、土砂降りの中で米俵なしでも大丈夫かと、益城町で支持する若手らが意外な笑顔で返した 。
議員に「職員不正採用」という話は良くある話だが、それが前々から不正介入と浮上していたのが浦田勝前県果実連会長(前JAたまな会長)、浦田佑三子県議の事務所で番頭を務めるM。
M以外の語られる関係者が、仮に「金銭の授受はなかった」と言っても、そこに35万円から50万円の動き(金銭)があった以上、その不正行為という案件は明らかに贈収賄容疑。同事件の時効は行為が複数の場合、それは加重収賄として10年。
この不正行為はM自身の立場で成せる技ではないというのが一般的な見解で、浦田前会長、事務所責任者である佑三子女史にとって、「指示、示唆した記憶はない」と関与を否定しても最低限の道義的責任は常識的に存在する 。
Mは「公務員でもないのに何が悪い」と多種多様な 不正行為からの免疫なのか、 極めて幼稚な反応を見せたというが、彼の見解通り事件化はどうあれ、問題なのはJAたまなが舞台という背景での組合員、農家の見解と倫理観 。
同農協での理事の1人は「果実連会長ポストの禅譲、そして新組合長の選任には佑三子県議の絶対的な支持、推薦の確約があった」と語るが、こうした限られた中での既得権益が許されるとなると、極めて寛容というか、玉名の農家は既得権益においても持ちつ持たれつの関係というしかない 。
佑三子女史は懐が深いのか、人間関係に分け隔てがないのか、議員となっても 交遊 関係にイエローカードが出されたり、また情に厚いのか艶事でも福祉関係者に話題として上がる。
すなわち、こうした問題は個人的には自己責任の上で自由であっても、議員として巷の社会人に向けて模範となるべき立場を考えると、その「常識論では想定外」と見解が出るだけに首を傾げたくなるのは当然。
しかしMが語る通り、「JAたまなの全面的支持を得られ、そうした噂は何の影響も出て来ない」となると、やはり玉名の農家は極めて寛容で別格(政治感覚)。
確かに佑三子女史は選挙に強く今回、「明日の豊かな玉名の農業づくり」を掲げて城戸淳氏、坂梨豪昭氏の2人も出馬を予定しているが、城戸氏は陣営が高齢化して代議士派閥通りには支持も伸び悩んでおり、また坂梨氏も「働きの見返り」を求めて野田代議士派陣営が送り出した割には、それが佑三子女史と被る事もあってか、佑三子女史に大きく圧せられた感じにある 。
余ほど戦術の転換でも図らない限り、新人2人は佑三子女史に大差をつけられての2番手争いという状況。 。
選挙は田舎の有権者にとって、走り出したら政治資質、倫理観なんてまだ無関係で、動くのは得体の知れない風である。その風向きが変われば、それもまた選挙・・・。