万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

一人が世界を破壊する投機

2009年10月19日 16時00分28秒 | 国際経済
投機は市場の「必要悪」:上野泰也(みずほ証券チーフマーケットエコノミスト)(2)(Voice) - goo ニュース
 投機は、為替市場の価格形成の安定化という側面からは、擁護されるのかもしれません。しかしながら、投機行為の最大の問題点とは、一人の民間人が、世界を破壊する力を持つことなのではないかと思うのです。

 投機に端を発した事件として思い起こされるのは、1992年に発生した欧州通貨危機です。この時、かのソロス氏は、ポンド売りを仕掛け、イングランド銀行の外貨準備を空にしてしまいました。通貨危機の影響は経済全般に及び、欧州通貨間の為替協調の枠組みであったEMSにポンドが復帰するまで混乱が続くことになったのです。通貨危機は、得てして投機による”売り浴びせ”が原因となって発生するものであり、その行為の影響は、金融界のみならず、一般の人々をも巻き込みます。通貨危機に至らずとも、今日でも、為替相場はしばしば投機によって動き、そのリスクは日常化してもいます。為替相場は、企業収益や物価を左右しますので、誰もが投機の影響からのがれることができないのです。

 政治家といった公人は、政策の失敗によって国民を混乱に陥れることがありますが、経済の混乱は、しばしば国民に対して責任を負わない民間人によって起こされることがあります。投機の怖さとは、”知らない誰か”によって世界が危機に陥れられることにあるのではないかと思うのです。経済の大破局を避けるためにも、やはり、投機には、国際的な合意による一定の規制が必要なのではないでしょうか。

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コメント (7)
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