万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ウイグル問題―民族自治権行使という方法

2009年10月12日 15時32分54秒 | アジア
騒乱招いたウイグル族襲撃、主犯格の漢族に死刑(朝日新聞) - goo ニュース
 ウイグル族襲撃事件の主犯格とされる漢族に対して、中国では、死刑の判決が下されたようです。漢族に対して厳しい判決となった理由は、ウイグル人の不満を抑えるためと説明されていますが、小手先の懐柔策では、民族問題は解決しないのではないかと思うのです。

 東トルキスタンの歴史とは、シルクロード沿いに居住する西域の諸民族と東西通商の大動脈を押さえたい中国王朝との抗争の歴史でもありました。言い換えますと、常に西域の人々は、中国からの圧力と植民地主義に悩まされてきたと言えます。現在でもこの状況は続いており、中国による支配の頚木から逃れることは、この地域の人々の偽らざる願いであることは想像に難くありません。頚木からの離脱には様々な方法がありますが、その試みの一つとして挙げられるのが、民族自治区の権限の行使です。中華人民共和国憲法の第116条は、民族自治区の人民代表大会に対して、自治条例と単行条例を制定する権限を認めております。また、地域財政管理権や公安部隊を組織する権限も与えています。条例については、全国人民代表大会の常務委員会への報告と承認、公安部隊組織には国務院の承認を要しますが、当局の厳しい取り締まりの中で沈黙するよりも、合法的な手段を用いて不満や要望を中央に伝えた方が建設的ではあります。

 もちろん、民族自治区の人民代表大会が共産党組織を介して中央にコントロールされているかもしれませんし、漢人の代表や中央の承認機関によって阻止されるかもしれません。しかしながら、中国政府が、世界ウイグル会議のラビア・カーディル女史との交渉を頑として拒否している現状に鑑みますと、内部から合法的に自治要求を中央に上げることで、中央の反応を引き出すことはできます。少なくとも、中国政府が、ウイグル代表との交渉を拒否している間、この方法を試してみてはどうかと思うのです。

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