万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

グローバル化で先進国は貧乏に?

2009年10月07日 15時22分49秒 | 国際政治
もう、お金には振り回されない 正規雇用労働者にも忍び寄る“貧困” (日経ビジネスオンライン) - goo ニュース
 つい最近まで、WTOの総会やG7などが開催される度に、グローバル化に対する過激な反対運動が起きたものです。反対派のスローガンは、グローバル化は、先進国と後進国との間の経済格差を拡大する、というものでしたが、果たして、この主張は的を射ているのでしょうか。

 実のところ、グローバル化で窮地に追い込まれるのは、先進国なのではないかと思うのです。何故ならば、後進各国が工場の誘致を歓迎することで、多国籍化した企業は、人件費や不動産価格が最も安価な国で製造を行えるようになったからです。経済合理性に従えば、当然、先進国の雇用は後進国へと流出し、失業問題が発生すると同時に、後進国で生産された安価な製品が国内市場に流れ込みますので、国内に製造拠点を持つ企業も経営が苦しくなります。つまり、先進国では、国民の雇用機会は減少し、企業も国内シェアの低下の危機に直面してしまうのです。

 この側面から見えてくるグローバル化の行く先とは、先進国と後進国との間の経済レベルの収斂であり、先進国における経済レベルの低下と後進国の向上です。後進国の経済発展そのものは、望ましいことでもありますので、要は、先進国が、一定の雇用を確保し、また、新たな産業分野の育成に如何に取り組むのか、という戦略が問題となります(この観点から見ますと、移民受け入れ政策や人口増加政策は時代に逆行している・・・)。フロント・ランナーとしての役割を断念したとき、先進国は、グローバル化の波に飲まれてしまうことになるのではないでしょうか。

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コメント (8)
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