万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

英雄が存在しないノーベル平和賞の世界

2009年10月15日 17時22分51秒 | アメリカ
米大統領ノーベル賞授賞 “身内”から批判噴出(産経新聞) - goo ニュース
 オバマ大統領のノーベル平和賞受賞については、アメリカ民主党の身内からも批判が噴出しているそうです。その理由として、チベットのダライ・ラマ14世との面会を中国に媚で回避したり、アフガニスタンの民主化を放棄しそうなことが、平和賞の受賞者として相応しくない、といった点が挙げられていました。

 この記事から見えてくる批判の焦点とは、横暴な大国に支配されている国や普遍的な価値を犠牲にした妥協は、平和賞には値しないということにあるようです。英雄とは、得てして如何なる困難にも挫けずに悪と闘い、不条理な立場に置かれている者を助け、この世に正義の秩序をもたらすものと、一般的には観念されています。しかしながら、ノーベル平和賞の基準では、悪しきと対峙して闘う者よりも安易に妥協する者を、平和への貢献者として高く評価しているようなのです。

 ノーベル平和賞をめぐる議論は、現代の国際社会が抱える平和の持つ二面性の相克と欺瞞をも映し出しています。正当な権利を奪う行為を咎めず、民主主義や自由の旗印を降ろした平和は、”奴隷の平和”となるかもしれません。

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コメント (5)
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