万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ASEAN vs. 共同体構想?

2009年10月26日 15時24分30秒 | アジア
影薄まるASEAN 首脳会議閉幕 「枠組み論議」に終始(産経新聞) - goo ニュース
 地域共同体構想は、鳩山首相が提唱した東アジア共同体のみではなく、オーストラリアもまた、米ロを含むアジア・太平洋共同体構想を提案したそうです。地域共同体をめぐって、”大国”の思惑が交錯することになったのですが、ASEAN諸国は、今後、どのような方向に動くのでしょうか。

 ところで、中小国の連合という形態において、欧州の地域統合とASEANは類似しています。欧州経済共同体(EEC)の場合には、その設立にあたっては、ソ連邦への対抗を意識しており、外部の超大国に対して中小国が結束することに意義がありました。一方、ASEANを見ますと、東アジア共同体では、近年、頓に軍事的脅威となりつつある中国が加わり、アジア・太平洋共同体では、アメリカやロシアといった”超大国”も参加します。どちらのヴィジョンを取りましても、大国がメンバーとなるのです。中国が共産主義体制を敷いていることを考えますと、これは、欧州経済共同体に、最初からソ連邦が参加するようなものです。しかも、東アジア共同体構想では、通貨や安全保障の政策領域にまで統合を進めるというのですから、政策権限の共同体機関への移譲を通して、ASEANが、大国の支配に組み込まれる恐れもあります。

 地域共同体構想を打ち上げることが、ASEANの警戒心と疑心暗鬼を生み、内外の諸国との対立要因や混乱要因となっては、元も子もありません。共同体の設立どころか、構想の提案そのものが、分裂の種を蒔くことになるのですから。
 
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コメント (2)
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