万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

友愛外交―政治が法秩序を破壊する?

2009年10月18日 16時08分42秒 | 国際政治
中国、東シナ海の主権主張 「友愛」無視の強硬姿勢(産経新聞) - goo ニュース
 とかくに、政治と法は同類視されがちですが、しばしば、両者は鋭く対立するものです。外交における政治は、あくまでも当事国の合意の形成であり、一方、国際法は、侵してはならない個々の国家の権利の範囲を定めているからです。もし、政治的合意が優先されるとしますと、国家間に政治力学が働いて、強国が弱国の権利を侵害することが合法的にできることになります。

 日中の東シナ海問題においても、この緊張をはらむ政治と法の綱引きを観察することができます。 中国の政治文化には、法の支配が欠如していることはよく知られています。中国は、海洋法条約を無視し、自国の主権を日本国側の海域に及ぼそうとしていますが、この要求を鳩山政権が”友愛の海”を具体化させるために受け入れますと、政治決定は、法に優先するという悪しき前例をつくることになります。この時点で、国際社会の法の支配は、人の支配にとって代わられてしまうのです。

 ”友愛”や”平和”といった美辞麗句を並べて、政治家が、法を越えた妥協をしますと、より大きな意味での平和の基礎を壊すことになります。全ての国々が、曲がりなりにも法秩序によって安全と権利が保障されているのですから、たとえ善意に基づくものであっても、その破壊行為は、人類に対する罪に他ならないと思うのです。 

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コメント (5)
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