万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

尖閣諸島―不可解な棚上げ論

2010年10月06日 14時58分04秒 | アジア
中国の漁業監視船、尖閣諸島近海から姿消す(朝日新聞) - goo ニュース
 しばしば、尖閣諸島問題の説明として、1978年の小平氏の「棚上げ論」が持ち出されます。あたかも、尖閣諸島問題は、両国の間で棚上げの合意ができている、とでも言うかのように。

 しかしながら、日本国政府は、一貫して日中間には領土問題はない、という立場を表明していますので、少なくとも、日本国側は、棚上げに合意したとは考えられません。何故ならば、”棚上げ”とは、問題があることを前提とした表現であるからです。日中平和友好条約に際しては、交渉過程にあって、周恩来氏の”今回は話したくない。…石油が出るから問題になった…”といった発言はありましたが、この周氏の発言をもって棚上げ合意の根拠とするのは、拡大解釈となります(むしろ、中国側の本当の狙いは、天然資源であったことを示している…)。また、小平氏の発言も、記者会見での一方的な発言に過ぎませんので、日本国側の合意を証明するものともなりません。

 尖閣諸島沖から中国の漁船監視船が消えたとするニュースが伝えられていますが、天然資源が埋蔵する可能性が明らかとなった1968年以来、「棚上げ論」の流布をはじめ、着々と既成事実を積み上げ、尖閣諸島に忍び寄ろうとして中国の態度からしますと、簡単に中国が諦めるとも思えません。もし、中国が、本心から尖閣諸島の領有権主張と武力による威嚇が、国際法に反し、他国の権利を侵害する行為であることに気づき、その要求を取り下げた時こそ、真に中国が、法を尊ぶ現代国家に脱皮への第一歩を踏み出した時と言えるのではないかと思うのです。

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