万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

パンドラの箱を開けた南沙諸島紛争

2011年06月19日 14時18分22秒 | 国際政治
南シナ海、神経戦 中国がシンガポールに巡視船、比は反発(産経新聞) - goo ニュース
 *本記事は、情報不足の段階で書かれたため、幾つかの点で誤りを含んでいます。(2016年7月8日)

 南沙諸島の領有をめぐる紛争は、今や、”火薬庫”となりそうな様相を呈しています。この問題、蓋を開けてみますと、実に様々な問題が飛び出してきそうなのです。

(1)南沙諸島の最初の領有国は日本国
 驚くべきことに、南沙諸島の領有を最初に宣言したのは、日本国でした。これは、1938年のことです。領有に際して、日本国は、南沙諸島を台湾の高雄市に編入しています。

(2)サンフランシスコ講和条約での放棄
 日本国は、サンフランシスコ講和条約第2条に基づいて、下関条約の結果として併合していた台湾と澎湖諸島、並びに、新南群島として南沙諸島を放棄します。ここで二つの立場が発生しました。その一つは、台湾が、南沙諸島の領有権を引き継いだとするものであり、もうひとつは、帰属先が未定のまま放棄された、というものです。当然に、台湾は、前者の立場ですが、他の東南アジア諸国は、後者の立場に立ち、相次いで、領有を主張し、実効支配することになります(フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ)。

(3)中国による領有権主張
 さらにこの問題を複雑にしているのは、中華人民共和国による領有権主張です。中国は、尖閣諸島と同様に、1970年代に至り、南沙諸島に天然資源が埋蔵されている可能性が公表されると、領有権を主張し、人民解放軍を派遣して建造物を建てるなど、実効支配を始めました。

(4)二つの中国対一つの中国
 中国は、南沙諸島の領有権を主張するに際して、”一つの中国”つまり台湾は自国の一部であるとする主張に基ついて、その行為を正当化しようとしました。現実には、台湾は、国際法上における独立国の要件を満たしていますので、中国の主張には無理があります。しかしながら、ここで、この問題は、台湾の地位をめぐる対立とリンケージすることになったのです。

 以上に述べてきたように、南沙諸島の問題は、様々な見解の対立が絡み合っています。ギリシャ神話では、パンドラの箱を開けると、最後に希望が残りますが、関係各国は、平和的な解決という希望を、決して閉じ込めてはならないと思うのです。

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コメント (4)
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