万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

疑問に満ちた外国人ポイント制

2011年06月13日 15時07分27秒 | 日本政治
能力高い外国人優遇へ、職歴や年収などを点数化(読売新聞) - goo ニュース

 政府は、能力の高い外国人を優遇するために、ポイント制を導入する方針と報じられています。しかしながら、この制度、疑問だらけなのです。

 第1に、様々な国の出身者が存在することを考えますと、学歴のポイント化は、簡単そうで難しいことです。国ごとに、教育方法、レベル、さらには、評価基準さえ違いますので、学士号、修士号、博士号といっても、相当のばらつきが予測されます。また、中国のように、政府が証明書を偽造することもありますので、信頼性を確保するための何らかの調査を要します(真に能力の高い人材であるのか分からない・・・)。

 第2に、この制度、70点以上を獲得した合格者の入国を許可するということなのか、それとも、優遇するということなのか、はっきりしていません。前者である場合には、日本企業が外国人を採用するに際し、合格者リストから選ぶということになります。一方、日本企業が、独自に採用したい外国人を見つけても、本人が、このポイント制の試験に合格できず、雇用できない事態も発生する可能性があります。さらに、後者となりますと、外国人を雇用しているのはあくまでも企業ですので、政府は、民間企業に対して、合格者に対する特別な優遇措置を求めることはできないはずです。それとも、入国に際して、点数の高い順から優先的に許可を与える、ということなのでしょうか。

 第3に、仮に、70点以上を獲得した外国人に対して無制限に入国を許可するとしますと、入国後に雇用する企業が現れなかった場合、その外国人は、どうなるのか、判然としません。近年、外国人に対する生活保護が増加傾向にありますが、ポイント制で入国した人々もその対象として認めますと、さらなる財政負担が重くのしかかることになります。

 この他にも、この制度が自動化されますと、自国の雇用事情を考慮せず、失業問題を悪化させる可能性も指摘できます。杜撰な制度設計のままで運営を始めますと、後になって問題が噴出し、対応に苦慮することになるのではないかと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする