なぜ円高で大騒ぎするのか。そこに財界の時代遅れの発想が見え隠れする【出口治明の提言】(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース
超円高によって、日本企業の収益が大幅に低下する現状を見れば、産業空洞化論は絵空事ではありません。にもかかわらず、円高危機の大合唱は、財界の時代遅れな意識の現れとして、批難する意見もあります。政府頼みより、21世紀型の産業の構造改革を進めよと。
しかしながら、この楽観論こそ、時代遅れに思えるのです。楽観論の主たる論旨とは、(1)米英も産業の空洞化を容認した、(2)日本企業の海外展開と外国企業の呼び込みで経済の活性化を、(3)量的緩和は効果がない、(4)G7では通貨の為替介入はしない…などですが、以下に、これらの諸点の問題点を挙げておくことにします。
(1)製造業を軽視し、金融とサービスに頼った結果として、米英を始め、先進国は高い失業率と中間層の崩壊に苦しむことになりました。同じ轍を踏まないためにも、国内における製造業を維持する政策が必要であり、これらの諸国も製造業への回帰を模索しています。
(2)もし、この政策を実行しますと、破滅的な結果を迎えるかもしれません。何故ならば、企業の立地条件としての日本の競争力の低下を理由に、日本企業の海外移転を認めるならば、不利な条件下にある日本に海外企業を呼び込めるはずもないからです。しかも、日本に進出する企業に対しては、税制などで優遇せよとまで主張してるのですから、呆れるばかりです。一つ間違えますと、日本企業が海外に出払う一方で、国内市場は、”日本政府の後押し”によって外国企業に席巻されることになりかねません(日本企業には政府に頼るなと批判していますので、矛盾している…)。
(3)超円高の要因は複合的であり、通常の量的緩和によって効果が現れないのは、原因と対策との間にミスマッチがある可能性もあります。今日では、購買力平価によって為替相場が決定されるのではなく、投機、債券市場の動向(日本国債買い…)、企業による外貨の投資先、外国の財政事情(米、EU)、外国政府の政策(韓国のサムライ債の発行…)などがあり、時代の変化に即したきめ細かな対策を立案する必要があります。効果がないから何もしない、では済まされないのです。
(4)21世紀であるからこそ、G7以外の新興諸国が経済アクターとして台頭してきたのであり、中国、インド、韓国といった諸国が、政府が乗り出して積極的に為替政策を実施している現状では、G7を基準とした判断だけでは、不十分です。むしろ、これらの諸国を加えた国際的なルール作りを行いませんと、円の独歩高という現状は改善されない可能性があります。
以上に述べたように、円高楽観論こそ、時代の変化に鈍感なのではないかと思うのです。パナソニックは、調達部門をシンガポールに移転するそうですが、本社機能の一部まで流出するとなりますと、将来的には、日本企業は国内からいなくなるかもしれません。これを危機と言わずして、何を危機というのでしょうか。21世紀型への産業構造の転換とは、聞こえは良いのですが、その実、無責任な日本国放棄論であるあるかもしれないのです。
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超円高によって、日本企業の収益が大幅に低下する現状を見れば、産業空洞化論は絵空事ではありません。にもかかわらず、円高危機の大合唱は、財界の時代遅れな意識の現れとして、批難する意見もあります。政府頼みより、21世紀型の産業の構造改革を進めよと。
しかしながら、この楽観論こそ、時代遅れに思えるのです。楽観論の主たる論旨とは、(1)米英も産業の空洞化を容認した、(2)日本企業の海外展開と外国企業の呼び込みで経済の活性化を、(3)量的緩和は効果がない、(4)G7では通貨の為替介入はしない…などですが、以下に、これらの諸点の問題点を挙げておくことにします。
(1)製造業を軽視し、金融とサービスに頼った結果として、米英を始め、先進国は高い失業率と中間層の崩壊に苦しむことになりました。同じ轍を踏まないためにも、国内における製造業を維持する政策が必要であり、これらの諸国も製造業への回帰を模索しています。
(2)もし、この政策を実行しますと、破滅的な結果を迎えるかもしれません。何故ならば、企業の立地条件としての日本の競争力の低下を理由に、日本企業の海外移転を認めるならば、不利な条件下にある日本に海外企業を呼び込めるはずもないからです。しかも、日本に進出する企業に対しては、税制などで優遇せよとまで主張してるのですから、呆れるばかりです。一つ間違えますと、日本企業が海外に出払う一方で、国内市場は、”日本政府の後押し”によって外国企業に席巻されることになりかねません(日本企業には政府に頼るなと批判していますので、矛盾している…)。
(3)超円高の要因は複合的であり、通常の量的緩和によって効果が現れないのは、原因と対策との間にミスマッチがある可能性もあります。今日では、購買力平価によって為替相場が決定されるのではなく、投機、債券市場の動向(日本国債買い…)、企業による外貨の投資先、外国の財政事情(米、EU)、外国政府の政策(韓国のサムライ債の発行…)などがあり、時代の変化に即したきめ細かな対策を立案する必要があります。効果がないから何もしない、では済まされないのです。
(4)21世紀であるからこそ、G7以外の新興諸国が経済アクターとして台頭してきたのであり、中国、インド、韓国といった諸国が、政府が乗り出して積極的に為替政策を実施している現状では、G7を基準とした判断だけでは、不十分です。むしろ、これらの諸国を加えた国際的なルール作りを行いませんと、円の独歩高という現状は改善されない可能性があります。
以上に述べたように、円高楽観論こそ、時代の変化に鈍感なのではないかと思うのです。パナソニックは、調達部門をシンガポールに移転するそうですが、本社機能の一部まで流出するとなりますと、将来的には、日本企業は国内からいなくなるかもしれません。これを危機と言わずして、何を危機というのでしょうか。21世紀型への産業構造の転換とは、聞こえは良いのですが、その実、無責任な日本国放棄論であるあるかもしれないのです。
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