万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

超円高―政府の対策は”延命措置”では

2011年09月19日 15時26分31秒 | 日本政治
リンク: 失業率30%以上が迫る深刻事態 - 速報:@niftyニュース.
 超円高に見舞われたことで、国内企業は、海外に生産拠点を移さざるを得ない状況に追い詰められており、この状態が半年続くと、失業率が30%上るとする試算もあるようです。政府は、近日中に超円高対策を打ち出すそうですが、果たして、政策効果は期待できるのでしょうか。

 ニュースの報道によりますと、現在検討されている政府案とは、中小企業を対象にして、為替変動で減益した分を、低利融資制度で補うというものです。超円高が、短期間に終息する見通しがあれば、暫定的な措置でも構わないかもしれません。しかしながら、円高が長期化するとしますと、この対策は、財政を巻き込む形で破綻を迎える危険すらあります。何故ならば、この政策では、円高が続く限り、企業は、永遠に融資を受け続けねばならず、中小企業の負債は膨張し続けるからです。経営が行き詰るのは時間の問題であり、いわば、”延命措置”に過ぎないのです。また、低利融資制度の財源も無限ではありませんので、早晩、財源問題も深刻化します。加えて、民間企業に海外企業のM&Aを進めるとの方針も示されていますが、M&Aでは、国内雇用を増加させる要因としては期待薄です。一時凌ぎの政策は、問題を先延ばしにするに過ぎません。

 先日の日経新聞では、識者の意見として今後は円安に振れるとする楽観論も掲載されていましたが、逆に、今後、円相場は50円台まで上昇するとする予測もあります。抜本的な円高対策としては、(1)市場介入などで円相場そのものを下落させる、(2)円高でも輸出競争力を失わない付加価値の高い製品を製造する、(3)民間部門での円売り促進策を考案する…などがありますが、政府の方針は、小手先に過ぎないようです。もちろん、産業が空洞化し、日本経済が衰退すれば円安に振れるのですが、その時には、日本国内は大量失業と財政破綻で悲惨な状況に陥っているのではないかと心配になるのです。

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コメント (8)
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