万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北方領土の全島返還を-侵略の追認は歴史の不名誉

2013年04月29日 16時08分50秒 | 国際政治
北方領土「交渉を再開」…日露首脳が共同声明へ(読売新聞) - goo ニュース
 報道によりますと、安倍総理のロシア訪問を受けて、日ロ両首脳は、北方領土に関する交渉再開を含む共同声明を発表するそうです。具体的な解決案の内容については詳らかではありませんが、日本国は、人類のために全島返還を貫くべきなのではないでしょうか。

 第二次世界大戦の発端は、1939年9月のナチス・ドイツによるポーランド侵略に始まりますが、この時、ソ連軍もまた東方からポーランドに侵攻しております。その後、独ソ開戦により、ソ連邦は連合国側の一員となりますが、戦乱に乗じて領土拡張政策を遂行し、冷戦下において超大国として君臨しました。連合国側の戦争事由が、侵略国家との闘いであったわけですから、ソ連邦の拡大政策は、不拡大を掲げた連合国の基本方針に反する共に、武力による領土併合を実行したことにおいて、人類に対して罪を負っています。戦後、ドイツは敗戦国となることで断罪されましたが、ソ連邦、そして、今日のロシアは、この罪の責任をとってはいないのです。マスコミなどの論調では、安倍首相に対して、リアリズムに徹してロシアとの妥協を奨める意見も見受けられますが、領土割譲という侵略の追認は、第二次世界大戦における多大な犠牲を無駄にするようなものです。連合国が掲げた武力による領土併合の禁止は、国際秩序が法の支配に向かう、極めて重要なステップとなったのですから。これが否定されますと、今後、中国、イラン、韓国、北朝鮮といった諸国は、不法占拠優位を歓迎し、さらなる暴力主義に走ることでしょう。国境線とは、国家間の軍事力、政治力、並びに経済力に合わせて変化するものではなく、国際法で確定された領土は、決して侵害してはならないのです。

 ロシアへの割譲を認める形での平和条約の締結は、歴史に名を残すことはあっても、時計の針を逆戻りさせ、人類を法なき野蛮状態に戻すのであれば、決して名誉を伴うものではありません。日ロ両国が、北方領土の全島日本帰属で合意する時、それは、国際社会が法秩序の下での平和を享受する長い道のりにおいて、一つの峠を越えた時となるのではないかと思うのです。

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コメント (12)
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