核兵器ある限り「未来ない」=米朝首脳会談は「生産的」―トランプ大統領
2月28日にベトナムのハノイで開かれた第2回米朝首脳会談は、北朝鮮側が一部核施設の破棄と引き換えに経済制裁の全面的な解除を要求したため、事実上の決裂となりました。経済制裁の解除こそが北朝鮮が会談の大舞台に臨んだ最大の目的であるとしますと、同国の経済状況はもはや破綻寸前であるのかもしれません。安保理決議に基づく対北経済制裁の目的は北朝鮮の完全なる非核化ですので、この目的が未達成、即ち、寧辺の核施設限定の‘非核化’によって同制裁が完全に解除されるはずもないのですが、対北経済制裁については、しばし、考えさせられる点があります。
北朝鮮の主張に従えば、今日の同国の経済的苦境は経済制裁を受けたためであり、あたかも全責任は、アメリカ、及び、国際社会にあるかのように振る舞っています。その一方で、シンガポールで開催された第1回米朝首脳会談に際しては、アメリカ側も北朝鮮の‘明るい未来’を描いたプロモーションビデオを作成しており、非核化に応じさえすれば、海外からの投資も集まり、同国が一気に先進国並みの豊かな国に変貌するかのような夢を振りまいていました。乃ち、そこには、北朝鮮の非核化⇒経済制裁の完全解除⇒改革開放路線への転換⇒急速な経済発展というシナリオが読み取れるのです。しかしながら、この筋書き、よくよく考えてもみますと、疑問点も少なくないのです。
そもそも、北朝鮮は、経済制裁を受ける以前から最貧国の一つに数えられてきました。国民の反乱を怖れた‘金王朝’によって意図的に作出された飢餓とする見方もある程であり、国民の生活水準の向上には一切、関心を払わなかったのです。海外からの食糧支援も国際市場に横流しにされ、一部の特権階級の懐を温めたに過ぎませんでした。何れにしても、北朝鮮の経済的困窮の最大の原因は、国民の生活を顧みない同国の体制自身にあります。仮に、今般の経済制裁によって堪えられぬほどの打撃を受けている人々が同国にいるとすれば、それは、核・ミサイル開発や奢侈な生活に国費を投じてきた金一族とその取り巻き以外には考えられません。北朝鮮は、国民を出汁に使いながら経済制裁の緩和を訴えているのであり、仮に改革開放路線へと舵を切り替えたとしても、中国と同様に、独裁者、並びに、朝鮮労働党のみに利権が集中することでしょう。つまり、対北経済制裁は、非核化には有効な手段となりますが、国際法に反して秘密裏に核・ミサイル開発を行った張本人に対しては、何ら罰することもなくその独裁的な地位を温存し、より巨大な利権を手にするチャンスを与えることとなるのです(国民は国際市場における安価な労働力化…)。非核化は実現するとはいえ、こうしたモラル・ハザードは許されるのでしょうか。
第2に指摘し得るのは、改革開放路線を歩むことによって北朝鮮が韓国をも凌ぐ先進国へと急成長を遂げる可能性があるとしますと、これまでの北朝鮮の経済政策とは、一体、何であったのか、という疑問です。世界三大投資家の一人であるジム・ロジャース氏は、北朝鮮の潜在能力を高く評価しており、ウラン鉱を含む豊富な天然資源に加えて、勤勉で優秀な国民性に期待を寄せているようです(共産・社会主義国の国民は怠惰となる傾向にあり、今日の北朝鮮国民が勤勉であるという評価には疑問符が付くのですが…)。このことは、裏を返せば、共産主義に基づく統制経済があらゆる資源を有効活用させることなく眠らせてしまう‘冬眠システム’であるか、あるいは、歴代の北朝鮮指導者の統治能力が極めて低レベルであったことの証左ともなります。
そして第3の疑問とは、最も閉鎖的な経済体制を敷いてきた北朝鮮が、国際的な経済制裁網によって追い詰められている点です。共産主義における通商体制とは管理貿易体制であり、自由貿易主義とは異なり全ての貿易は国家によって管理されます。かつてのソ連邦も、OECDに対抗してCOMECONなる組織を結成して共産主義陣営内の国家間貿易促進に努めましたが、結局は有名無実化してしまいました。冷戦時代の経済関係を引き継ぎ、今日なおも北朝鮮の主要な貿易相手国は中国やロシアなのですが、両国並びに韓国は、制裁決議成立後も秘かに石油製品などを北朝鮮に提供しているとされていますので、今般、北朝鮮が経済制裁で悲鳴を上げているとしますと、どこかその訴えには腑に落ちないところがあるのです(もしかしますと北朝鮮は、本心では、対米交渉を機に輸入面ではなく輸出先の拡大や外資導入を目指しているのかもしれない…)。
北朝鮮側は積極的な姿勢を示しつつも、第3回米朝首脳会談の日程は未定のままであり、その間、北朝鮮に対する経済制裁は継続されることとなります。中国の動きを含め、北朝鮮を取り巻く状況には不安定要因や不透明な部分が多いのですから、ここは焦らず、北朝鮮という国の実像を徹底的に調査・分析するとともに、上述の非核化シナリオについても再検討を試みても遅くはないと思うのです。
よろしければ、クリックをお願い申し上げます。
にほんブログ村
2月28日にベトナムのハノイで開かれた第2回米朝首脳会談は、北朝鮮側が一部核施設の破棄と引き換えに経済制裁の全面的な解除を要求したため、事実上の決裂となりました。経済制裁の解除こそが北朝鮮が会談の大舞台に臨んだ最大の目的であるとしますと、同国の経済状況はもはや破綻寸前であるのかもしれません。安保理決議に基づく対北経済制裁の目的は北朝鮮の完全なる非核化ですので、この目的が未達成、即ち、寧辺の核施設限定の‘非核化’によって同制裁が完全に解除されるはずもないのですが、対北経済制裁については、しばし、考えさせられる点があります。
北朝鮮の主張に従えば、今日の同国の経済的苦境は経済制裁を受けたためであり、あたかも全責任は、アメリカ、及び、国際社会にあるかのように振る舞っています。その一方で、シンガポールで開催された第1回米朝首脳会談に際しては、アメリカ側も北朝鮮の‘明るい未来’を描いたプロモーションビデオを作成しており、非核化に応じさえすれば、海外からの投資も集まり、同国が一気に先進国並みの豊かな国に変貌するかのような夢を振りまいていました。乃ち、そこには、北朝鮮の非核化⇒経済制裁の完全解除⇒改革開放路線への転換⇒急速な経済発展というシナリオが読み取れるのです。しかしながら、この筋書き、よくよく考えてもみますと、疑問点も少なくないのです。
そもそも、北朝鮮は、経済制裁を受ける以前から最貧国の一つに数えられてきました。国民の反乱を怖れた‘金王朝’によって意図的に作出された飢餓とする見方もある程であり、国民の生活水準の向上には一切、関心を払わなかったのです。海外からの食糧支援も国際市場に横流しにされ、一部の特権階級の懐を温めたに過ぎませんでした。何れにしても、北朝鮮の経済的困窮の最大の原因は、国民の生活を顧みない同国の体制自身にあります。仮に、今般の経済制裁によって堪えられぬほどの打撃を受けている人々が同国にいるとすれば、それは、核・ミサイル開発や奢侈な生活に国費を投じてきた金一族とその取り巻き以外には考えられません。北朝鮮は、国民を出汁に使いながら経済制裁の緩和を訴えているのであり、仮に改革開放路線へと舵を切り替えたとしても、中国と同様に、独裁者、並びに、朝鮮労働党のみに利権が集中することでしょう。つまり、対北経済制裁は、非核化には有効な手段となりますが、国際法に反して秘密裏に核・ミサイル開発を行った張本人に対しては、何ら罰することもなくその独裁的な地位を温存し、より巨大な利権を手にするチャンスを与えることとなるのです(国民は国際市場における安価な労働力化…)。非核化は実現するとはいえ、こうしたモラル・ハザードは許されるのでしょうか。
第2に指摘し得るのは、改革開放路線を歩むことによって北朝鮮が韓国をも凌ぐ先進国へと急成長を遂げる可能性があるとしますと、これまでの北朝鮮の経済政策とは、一体、何であったのか、という疑問です。世界三大投資家の一人であるジム・ロジャース氏は、北朝鮮の潜在能力を高く評価しており、ウラン鉱を含む豊富な天然資源に加えて、勤勉で優秀な国民性に期待を寄せているようです(共産・社会主義国の国民は怠惰となる傾向にあり、今日の北朝鮮国民が勤勉であるという評価には疑問符が付くのですが…)。このことは、裏を返せば、共産主義に基づく統制経済があらゆる資源を有効活用させることなく眠らせてしまう‘冬眠システム’であるか、あるいは、歴代の北朝鮮指導者の統治能力が極めて低レベルであったことの証左ともなります。
そして第3の疑問とは、最も閉鎖的な経済体制を敷いてきた北朝鮮が、国際的な経済制裁網によって追い詰められている点です。共産主義における通商体制とは管理貿易体制であり、自由貿易主義とは異なり全ての貿易は国家によって管理されます。かつてのソ連邦も、OECDに対抗してCOMECONなる組織を結成して共産主義陣営内の国家間貿易促進に努めましたが、結局は有名無実化してしまいました。冷戦時代の経済関係を引き継ぎ、今日なおも北朝鮮の主要な貿易相手国は中国やロシアなのですが、両国並びに韓国は、制裁決議成立後も秘かに石油製品などを北朝鮮に提供しているとされていますので、今般、北朝鮮が経済制裁で悲鳴を上げているとしますと、どこかその訴えには腑に落ちないところがあるのです(もしかしますと北朝鮮は、本心では、対米交渉を機に輸入面ではなく輸出先の拡大や外資導入を目指しているのかもしれない…)。
北朝鮮側は積極的な姿勢を示しつつも、第3回米朝首脳会談の日程は未定のままであり、その間、北朝鮮に対する経済制裁は継続されることとなります。中国の動きを含め、北朝鮮を取り巻く状況には不安定要因や不透明な部分が多いのですから、ここは焦らず、北朝鮮という国の実像を徹底的に調査・分析するとともに、上述の非核化シナリオについても再検討を試みても遅くはないと思うのです。
よろしければ、クリックをお願い申し上げます。
にほんブログ村