EU、5Gからファーウェイ排除せず リスク巡る情報を共有
EUの対応が注目されてきたG5の政府調達をめぐるファウエイ製品の排除問題は、加盟国政府の判断に任せる方向で決着を見るようです。一先ずは、アメリカからの排除要請を跳ね除けて‘独自路線’を選択することとなったのですが、その採用コストも無視はできないように思えます。
ハンガリー、スロバキア、ポルトガルに続き、イタリアなどがファウエイ製品の導入に積極的な姿勢を示した最大の要因は、その安価な価格にあります。これらの諸国は経済が停滞傾向にあり、独仏やベネルクス3国等のように財政的な余裕はありません。また、独仏や北欧諸国のように、自国にグローバル競争に打ち勝てるようなIT大手企業も育っていません。その大半が、EU予算での財政支援を受けている諸国ばかりなのです(もっとも、政治的な理由からか、ドイツも容認の方向へ…)。こうした諸国ができる限り政府調達コストを低く抑えたいと考えるのは至極当然なのですが、EU全体からしますと、長期に及ぶファウエイ対策のために膨大な出費を強いられる可能性も否定できません。
その理由は、セキュリティーに関する懸念を払拭するために、EUは、ファウエイ製品の導入に当たって厳格な監視体制の構築を求めているからです。今般、EUは、10月1日を目途に域内のG5に関するサイバーセキュリティーリスクを検証すると共に、年内に加盟各国間でリスクを最小化する措置について合意を形成する方針を示しました。言い換えますと、バックドアなどのスパイ装置内臓疑惑があるファウエイ製品を使う以上、常に、中国による情報盗取や工作活動への利用がないよう厳格にチェックしなければならないのです。ファウエイ製品の核心的部分はブラックボックス化されているか、解析不能な技術が用いられているでしょうから、監視体制の構築は言う程には容易なことではありません。人間のスパイであれば尾行したり、通信内容を完全に傍受すれば監視体制下に置いたことになりますが、高度なサイバー技術を有する中国の製品ともなりますと、その性能を上回るセキュリティー技術の開発を要します。言い換えますと、ファウエイ製品の導入には、研究開発から日常的な監視業務に至るまで、セキュリティー関連の追加コストがかかるのです。
ファウエイ製品の導入を目指す加盟国は苦しい財政状況にありますので、こうした追加コストは導入コストの上昇を意味しますし、ファウエイ製品を排除する加盟国に至っては、本来、自国が負担しなくてもよい余計なコストとなります。G5が国境を越えて接続され、単一のデジタル空間となる以上、ファウエイ製品のセキュリティー・リスクは自国にまで及ぶからです。となりますと、新たに生じるファウエイ対策費はどの国がどの程度負担するのか、EU内の排除国と採用国との間で激しい論戦が起きるかもしれません。
グローバル市場で互角に戦える欧州企業の育成という欧州市場設立の目的に照らせば、同市場がリスク含みの中国製品に席巻される今日の状況は、EUの敗北に近い忌々しき状況とも言えます。仮に、セキュリティー対策のコストが上積みされるぐらいならば、採用予定国に対して、ファウエイ以外の企業からの製品調達を促すべく、補助金を支給した方がまだ‘まし’であるかもしれません。あるいは、一部であれ、G5関連の製造拠点を採用予定国に移転させれば(移転先国では雇用効果が期待できる一方で、民間IT企業も販路を拡大できる…)、これらの諸国の政府も翻意する可能性もあります。何れにしましても、ファウエイ・リスクを抱えたままEUがG5時代を迎えるとしますと、それは、経済のみならず、軍事的にも域内に、何時、発火するか分からない火種を持ち込むに等しいのではないかと思うのです。
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EUの対応が注目されてきたG5の政府調達をめぐるファウエイ製品の排除問題は、加盟国政府の判断に任せる方向で決着を見るようです。一先ずは、アメリカからの排除要請を跳ね除けて‘独自路線’を選択することとなったのですが、その採用コストも無視はできないように思えます。
ハンガリー、スロバキア、ポルトガルに続き、イタリアなどがファウエイ製品の導入に積極的な姿勢を示した最大の要因は、その安価な価格にあります。これらの諸国は経済が停滞傾向にあり、独仏やベネルクス3国等のように財政的な余裕はありません。また、独仏や北欧諸国のように、自国にグローバル競争に打ち勝てるようなIT大手企業も育っていません。その大半が、EU予算での財政支援を受けている諸国ばかりなのです(もっとも、政治的な理由からか、ドイツも容認の方向へ…)。こうした諸国ができる限り政府調達コストを低く抑えたいと考えるのは至極当然なのですが、EU全体からしますと、長期に及ぶファウエイ対策のために膨大な出費を強いられる可能性も否定できません。
その理由は、セキュリティーに関する懸念を払拭するために、EUは、ファウエイ製品の導入に当たって厳格な監視体制の構築を求めているからです。今般、EUは、10月1日を目途に域内のG5に関するサイバーセキュリティーリスクを検証すると共に、年内に加盟各国間でリスクを最小化する措置について合意を形成する方針を示しました。言い換えますと、バックドアなどのスパイ装置内臓疑惑があるファウエイ製品を使う以上、常に、中国による情報盗取や工作活動への利用がないよう厳格にチェックしなければならないのです。ファウエイ製品の核心的部分はブラックボックス化されているか、解析不能な技術が用いられているでしょうから、監視体制の構築は言う程には容易なことではありません。人間のスパイであれば尾行したり、通信内容を完全に傍受すれば監視体制下に置いたことになりますが、高度なサイバー技術を有する中国の製品ともなりますと、その性能を上回るセキュリティー技術の開発を要します。言い換えますと、ファウエイ製品の導入には、研究開発から日常的な監視業務に至るまで、セキュリティー関連の追加コストがかかるのです。
ファウエイ製品の導入を目指す加盟国は苦しい財政状況にありますので、こうした追加コストは導入コストの上昇を意味しますし、ファウエイ製品を排除する加盟国に至っては、本来、自国が負担しなくてもよい余計なコストとなります。G5が国境を越えて接続され、単一のデジタル空間となる以上、ファウエイ製品のセキュリティー・リスクは自国にまで及ぶからです。となりますと、新たに生じるファウエイ対策費はどの国がどの程度負担するのか、EU内の排除国と採用国との間で激しい論戦が起きるかもしれません。
グローバル市場で互角に戦える欧州企業の育成という欧州市場設立の目的に照らせば、同市場がリスク含みの中国製品に席巻される今日の状況は、EUの敗北に近い忌々しき状況とも言えます。仮に、セキュリティー対策のコストが上積みされるぐらいならば、採用予定国に対して、ファウエイ以外の企業からの製品調達を促すべく、補助金を支給した方がまだ‘まし’であるかもしれません。あるいは、一部であれ、G5関連の製造拠点を採用予定国に移転させれば(移転先国では雇用効果が期待できる一方で、民間IT企業も販路を拡大できる…)、これらの諸国の政府も翻意する可能性もあります。何れにしましても、ファウエイ・リスクを抱えたままEUがG5時代を迎えるとしますと、それは、経済のみならず、軍事的にも域内に、何時、発火するか分からない火種を持ち込むに等しいのではないかと思うのです。
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