新元号の保秘、政府ピリピリ 関係者の携帯預かり足止め
新天皇の即位に伴う改元をめぐり、日本国政府は、極端なまでに情報漏洩に神経をすり減らしております。こうした政府の態度には、元号に関する情報を絶対に国民には知らせてはならない、とする確固たる意志が感じられるのですが、元号の極秘決定につきましては、素朴な疑問があります。それは、何故、国民に元号の考案者や決定者、並びに、その過程を知られてはならないのか、という疑問です。
4月1日に予定されている公表当日の手続きを見ましても、前例に従い、新元号は、有識者による元号に関する懇談会に始まり、官房長官による新元号の発表に至る一連の手続きを経て決定するそうです。平成への改元に際しては、この間に要した時間が凡そ1時間半でしたが、今般の改元では、2時間から2時間20分を予定しているそうです。しかも、絶対に外部に情報が洩れぬよう、出席者の携帯電話の保管や電波遮断も検討するといった念の入れようなのです。それでは、政府がかくも元号の決定を隠したがるのは、一体、どのような理由からなのでしょうか。
今日に至るまで一貫して用いられている元号制度が始められたのは701年の文武天皇の時代です(『日本書紀』によると645年の「大化」ですが、以後、数次にわたり中断がある)。もっとも、701年の「大宝」の制定は、文武天皇の在位四年目のことですので、天皇即位と同時に改元(代始改元)が行われたわけでも、かつ、治世を通して一つの元号が使われていたたわけでもありませんでした。天皇の諡号(崩御後に贈られる尊号)をその在位期間の元号となす今日の一世一元の制は明治に始まるのであり、また、皇室典範等も明治期に制定されておりますので、現行の元号制定の手続きは、日本古来の伝統とは言えないようです。
伝統の踏襲が理由ではないとしますと、政府による元号極秘決定の方針は、天皇の神聖性や権威を高めるためなのでしょうか。ベールに覆われていた方が神秘性を纏うことができるとする考え方は確かにありますし、突然の公表の方がサプライズ効果もあります。しかしながら、国民の知る権利が保障されている今日という時代にあっては、政府による秘密主義は、逆効果となるリスクがあります。国民は、‘知らないこと’で神秘性を感じるよりも、‘知らされていないこと’に不信感と不快感を募らせるかもしれないからです。仮に、政府が天皇の神聖性を理由に国民に対する情報遮断を選んでいるとしますと、どこか時代感覚がずれているようにも思えます。
あるいは、新元号が国民に不人気であり、厳しい批判や様々な憶測が飛び交うような状況に至った場合を想定し、予め、責任の所在を曖昧にしておきたいのかもしれません。国家的な秘密事項にしておけば、誰の責任でもなくなるからです。
そして、もう一つ考えられる理由とは、新元号は、実のところ、国民のあずかり知れないところで既に決まっているというものです。この推測では、政府は、決定済みの新元号をあたかも公式の手続きを踏んで選定されたかのように、国民の前で発表しているに過ぎないこととなります。この推測を補強するのが、政府高官によるとされる「丁寧に意見を聴いた感じを出さなければならない。最長で前回の倍かかってもいい」とする発言です。上述したように、今般の改元手続きでは、前回よりも30分から50分長く時間が採られています。この時間の長さは議論の紛糾が予想されているために手続きに時間を要するという意味ではなく、同高官によれば、‘丁寧に意見を聞いた感じを出す’ためと説明されているのです。この発言のニュアンスからすれば、‘手続き上、有識者や出席者の提案や意見を聞くには聞くけれども既に新元号は決まっている’とする憶測が真実味を帯びてきます。政府が情報漏洩の阻止に躍起になるのも、新元号が外部に漏れるのを恐れてのことではなく、新元号が決定済みであった事実を隠すためである可能性も否定はできないのです。
‘隠れたるより現るるはなし’という諺がありますが、隠そうとすればするほどに態度や言動が不自然となり、人々に気が付かれてしまうのが世の常です。新元号につきましても、日本国政府の神経質なまでの秘密主義は、その不自然さ故に国民の怪しむところとなるのではないかと思うのです。我が国が民主主義国家を国是としている点を踏まえますと、国民が公的に使用せざるをえないことになる元号もまた、国民の合意の上で制定されるべきなのではないでしょうか。
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新天皇の即位に伴う改元をめぐり、日本国政府は、極端なまでに情報漏洩に神経をすり減らしております。こうした政府の態度には、元号に関する情報を絶対に国民には知らせてはならない、とする確固たる意志が感じられるのですが、元号の極秘決定につきましては、素朴な疑問があります。それは、何故、国民に元号の考案者や決定者、並びに、その過程を知られてはならないのか、という疑問です。
4月1日に予定されている公表当日の手続きを見ましても、前例に従い、新元号は、有識者による元号に関する懇談会に始まり、官房長官による新元号の発表に至る一連の手続きを経て決定するそうです。平成への改元に際しては、この間に要した時間が凡そ1時間半でしたが、今般の改元では、2時間から2時間20分を予定しているそうです。しかも、絶対に外部に情報が洩れぬよう、出席者の携帯電話の保管や電波遮断も検討するといった念の入れようなのです。それでは、政府がかくも元号の決定を隠したがるのは、一体、どのような理由からなのでしょうか。
今日に至るまで一貫して用いられている元号制度が始められたのは701年の文武天皇の時代です(『日本書紀』によると645年の「大化」ですが、以後、数次にわたり中断がある)。もっとも、701年の「大宝」の制定は、文武天皇の在位四年目のことですので、天皇即位と同時に改元(代始改元)が行われたわけでも、かつ、治世を通して一つの元号が使われていたたわけでもありませんでした。天皇の諡号(崩御後に贈られる尊号)をその在位期間の元号となす今日の一世一元の制は明治に始まるのであり、また、皇室典範等も明治期に制定されておりますので、現行の元号制定の手続きは、日本古来の伝統とは言えないようです。
伝統の踏襲が理由ではないとしますと、政府による元号極秘決定の方針は、天皇の神聖性や権威を高めるためなのでしょうか。ベールに覆われていた方が神秘性を纏うことができるとする考え方は確かにありますし、突然の公表の方がサプライズ効果もあります。しかしながら、国民の知る権利が保障されている今日という時代にあっては、政府による秘密主義は、逆効果となるリスクがあります。国民は、‘知らないこと’で神秘性を感じるよりも、‘知らされていないこと’に不信感と不快感を募らせるかもしれないからです。仮に、政府が天皇の神聖性を理由に国民に対する情報遮断を選んでいるとしますと、どこか時代感覚がずれているようにも思えます。
あるいは、新元号が国民に不人気であり、厳しい批判や様々な憶測が飛び交うような状況に至った場合を想定し、予め、責任の所在を曖昧にしておきたいのかもしれません。国家的な秘密事項にしておけば、誰の責任でもなくなるからです。
そして、もう一つ考えられる理由とは、新元号は、実のところ、国民のあずかり知れないところで既に決まっているというものです。この推測では、政府は、決定済みの新元号をあたかも公式の手続きを踏んで選定されたかのように、国民の前で発表しているに過ぎないこととなります。この推測を補強するのが、政府高官によるとされる「丁寧に意見を聴いた感じを出さなければならない。最長で前回の倍かかってもいい」とする発言です。上述したように、今般の改元手続きでは、前回よりも30分から50分長く時間が採られています。この時間の長さは議論の紛糾が予想されているために手続きに時間を要するという意味ではなく、同高官によれば、‘丁寧に意見を聞いた感じを出す’ためと説明されているのです。この発言のニュアンスからすれば、‘手続き上、有識者や出席者の提案や意見を聞くには聞くけれども既に新元号は決まっている’とする憶測が真実味を帯びてきます。政府が情報漏洩の阻止に躍起になるのも、新元号が外部に漏れるのを恐れてのことではなく、新元号が決定済みであった事実を隠すためである可能性も否定はできないのです。
‘隠れたるより現るるはなし’という諺がありますが、隠そうとすればするほどに態度や言動が不自然となり、人々に気が付かれてしまうのが世の常です。新元号につきましても、日本国政府の神経質なまでの秘密主義は、その不自然さ故に国民の怪しむところとなるのではないかと思うのです。我が国が民主主義国家を国是としている点を踏まえますと、国民が公的に使用せざるをえないことになる元号もまた、国民の合意の上で制定されるべきなのではないでしょうか。
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