北朝鮮非難決議案の提出、今回は見送る方針
報道に拠りますと、日本国政府は、11年連続でEUと共に国連人権委員会に共同提出してきた対北非難決議案を、今年は見送る方針なそうです。その理由として、‘拉致事件解決のきっかけ’としたい安倍首相の意向が挙げられています。しかしながら、この見送り、北朝鮮に対する悪しきメッセージになるのではないでしょうか。
第一の理由は、日本国政府による非難決議案見送りが、北朝鮮の独裁体制下における国民弾圧や人権侵害の容認に転じた証と解される点です。過去11年間に亘って非難決議案を提出してきたのですから、北朝鮮、並びに、国際社会は、日本国は北朝鮮の人道犯罪を厳しく糾弾し、人権弾圧体制と鋭く対峙する人道国家として認識してきたはずです。そして、日本国民も、対北非難決議案を提出し続けてきた日本国政府に誇りを感じてきたはずなのです。ところが、今般、突然に共同提出から離脱するとなりますと、これを体制容認への転換と見た金正委員長は歓迎するのでしょうが、北朝鮮の人権弾圧に同調した国として国際社会における日本国のイメージは悪化することでしょう。
第二の理由は、同決議案の見送りが、日朝首脳会談を前提とした対北譲歩となっている点です。上述した同決議案提出見送りの説明からしますと、安倍首相は、近々、北朝鮮の金委員長と日朝首脳会談に強い意欲を示していると推測されます。つまり、決議案見送りは、北朝鮮が‘何もしない’うちに、既に日本国側が‘見返り’を与えてしったようなものなのです。
第三点として挙げられるのは、仮に、日朝首脳会談が実現した場合、日本国側の譲歩が制裁緩和の引き金となるリスクです。日朝首脳会談の最大の議題は、拉致問題の解決とされています。ベトナムで開催された第2回米朝首脳会談では、トランプ大統領は北朝鮮による全面制裁解除の要求を退けて合意を見送りましたが、日朝間の首脳会談でも、拉致問題の解決の‘見返り’として金委員長は経済制裁の緩和を日本側に強く求めてくることでしょう。この時、日本国は、仮に自国の人道問題は解決しても、北朝鮮の人道問題に‘見て見ぬふり’をする、というジレンマに陥ることとなります。また、狡猾な交渉術で知られる北朝鮮のことですから、拉致被害者の解放を小出しにしつつ、日本国から段階的に‘見返り’を引き出そうとするかもしれません。何れにしましても、対北制裁網を緩ませるきっかけを日本国が造るとしますと、国際社会からの批判は免れ得ないのではないでしょうか。
以上に3点ほど述べてきましたが、米朝首脳会談が事実上の決裂となり、日朝首脳会談の今後の見通しも不透明な中、日中首脳会談の開催を前提とした対北譲歩は相応のリスクが伴います。対米関係に対するマイナス影響も予測されます。もっとも、仮にアメリカが日朝首脳会談の開催を影ながら容認しているとしますと、(1)日朝交渉の場で、決裂後の北朝鮮の意向を探らせる、(2)アメリカに替って日本国に対北経済支援を実施させる、といった思惑があるのかもしれません。(2)については、米朝首脳会談に先立ってトランプ大統領が日本国による経済支援を示唆したこと、並びに、同会談の席で二度も拉致問題に言及したことなどから、少なくとも決裂以前の段階ではアメリカのシナリオの射程内にあった可能性はないわけではありません。
何れにいたしましても、日本国政府による北非難決議提出の見送りは、一般の日本国民をいたく落胆させると共に、‘人道の名を持って非人道的な体制を許してもよいのか’という問題をも提起しております(近年、善の名目で悪を擁護する手法が散見される…)。拉致事件の発生が人を人とも思わない北朝鮮という国家の独裁体制に起因している以上、元を断たなければ根本的な解決とはならないのですから、ここは、人道国家としての矜持を捨てることなく、EUと共に日本国政府は共同提案国となるべきではなかったかと思うのです。
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報道に拠りますと、日本国政府は、11年連続でEUと共に国連人権委員会に共同提出してきた対北非難決議案を、今年は見送る方針なそうです。その理由として、‘拉致事件解決のきっかけ’としたい安倍首相の意向が挙げられています。しかしながら、この見送り、北朝鮮に対する悪しきメッセージになるのではないでしょうか。
第一の理由は、日本国政府による非難決議案見送りが、北朝鮮の独裁体制下における国民弾圧や人権侵害の容認に転じた証と解される点です。過去11年間に亘って非難決議案を提出してきたのですから、北朝鮮、並びに、国際社会は、日本国は北朝鮮の人道犯罪を厳しく糾弾し、人権弾圧体制と鋭く対峙する人道国家として認識してきたはずです。そして、日本国民も、対北非難決議案を提出し続けてきた日本国政府に誇りを感じてきたはずなのです。ところが、今般、突然に共同提出から離脱するとなりますと、これを体制容認への転換と見た金正委員長は歓迎するのでしょうが、北朝鮮の人権弾圧に同調した国として国際社会における日本国のイメージは悪化することでしょう。
第二の理由は、同決議案の見送りが、日朝首脳会談を前提とした対北譲歩となっている点です。上述した同決議案提出見送りの説明からしますと、安倍首相は、近々、北朝鮮の金委員長と日朝首脳会談に強い意欲を示していると推測されます。つまり、決議案見送りは、北朝鮮が‘何もしない’うちに、既に日本国側が‘見返り’を与えてしったようなものなのです。
第三点として挙げられるのは、仮に、日朝首脳会談が実現した場合、日本国側の譲歩が制裁緩和の引き金となるリスクです。日朝首脳会談の最大の議題は、拉致問題の解決とされています。ベトナムで開催された第2回米朝首脳会談では、トランプ大統領は北朝鮮による全面制裁解除の要求を退けて合意を見送りましたが、日朝間の首脳会談でも、拉致問題の解決の‘見返り’として金委員長は経済制裁の緩和を日本側に強く求めてくることでしょう。この時、日本国は、仮に自国の人道問題は解決しても、北朝鮮の人道問題に‘見て見ぬふり’をする、というジレンマに陥ることとなります。また、狡猾な交渉術で知られる北朝鮮のことですから、拉致被害者の解放を小出しにしつつ、日本国から段階的に‘見返り’を引き出そうとするかもしれません。何れにしましても、対北制裁網を緩ませるきっかけを日本国が造るとしますと、国際社会からの批判は免れ得ないのではないでしょうか。
以上に3点ほど述べてきましたが、米朝首脳会談が事実上の決裂となり、日朝首脳会談の今後の見通しも不透明な中、日中首脳会談の開催を前提とした対北譲歩は相応のリスクが伴います。対米関係に対するマイナス影響も予測されます。もっとも、仮にアメリカが日朝首脳会談の開催を影ながら容認しているとしますと、(1)日朝交渉の場で、決裂後の北朝鮮の意向を探らせる、(2)アメリカに替って日本国に対北経済支援を実施させる、といった思惑があるのかもしれません。(2)については、米朝首脳会談に先立ってトランプ大統領が日本国による経済支援を示唆したこと、並びに、同会談の席で二度も拉致問題に言及したことなどから、少なくとも決裂以前の段階ではアメリカのシナリオの射程内にあった可能性はないわけではありません。
何れにいたしましても、日本国政府による北非難決議提出の見送りは、一般の日本国民をいたく落胆させると共に、‘人道の名を持って非人道的な体制を許してもよいのか’という問題をも提起しております(近年、善の名目で悪を擁護する手法が散見される…)。拉致事件の発生が人を人とも思わない北朝鮮という国家の独裁体制に起因している以上、元を断たなければ根本的な解決とはならないのですから、ここは、人道国家としての矜持を捨てることなく、EUと共に日本国政府は共同提案国となるべきではなかったかと思うのです。
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