万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

最悪を想定すべき新型コロナウイルス―健康保菌者のリスク

2020年02月09日 13時33分55秒 | 国際政治

 本日の報道によりますと、日本国内初の新型コロナウイルス肺炎の感染者となった奈良県のバス運転手の方が退院されたそうです。重い病から回復し、無事に退院することができたのですから、本来は、大変おめでたいお話なのですが、同ウイルスが生物兵器として開発された人工ウイルスであると仮定しますと、一抹の不安が脳裏をよぎります。

 人工ウイルス説において最も有力な説は、同ウイルスは、SARS等を含むコロナウイルス菌とエイズウイルスを組み合わせたというものです。つまり、両ウイルスのハイブリットにより、自然界ではありえない感染力も毒性も強いウイルスが出現したこととなります。しかも、エイズは、後天性免疫不全症候群という正式名称が示すように、一旦感染しますと完治することなく長期的に人の免疫システムを蝕みます(免疫細胞であるCD4陽性T細胞に取りついて減少させる…)。仮に新型コロナウイルスがエイズウイルスの特性を帯びているとしますと、その感染予防対策と事後的治療措置は、インフルエンザやSARSとは比較にならないほどの困難に直面することが予測されます

 エイズの死に至るまでのプロセスは、凡そ3段階に分かれています。第一期が急性感染期であり、この時期では、インフルエンザや風邪のような症状を示すに過ぎません。その後、数週間から一か月ほどで抗体が作られるようになり、無症候期に入ります。この期間にあっては、自己免疫性疾患に類似する症状が見られることはあっても、5年か10年は、無症状のままに日常生活を過ごすことができます。しかしながら、体内では、HIVの増加により徐々にCD4陽性T細胞が減少していますので、感染者の免疫システムが対抗しきれない時期を迎えます。この時が発症期であり、感染者の免疫システムは機能不全に陥り、HIV以外の様々な日和見菌にも容易に感染することで、死に至るのです。

 こうしたHIVの特徴を遺伝子操作によって誕生した新型コロナウイルスが引き継いでいるとしますと、たとえ発熱や呼吸困難といった症状が一旦治まったとしても、第一期の急性感染期である可能性があります。エイズの治療でも、CO4陽性T細胞が未だ少量であるうちに治療を開始した場合にはHIVは殆ど体内から検出されなくなりますが、リンパ節や神経中枢系には潜んでいるそうです。治療を中止すると再び増殖を始めるのですが、新型コロナウイルスのケースでも、感染者の体内に同ウイルスが潜伏している可能性があります。あるいは、新型コロナウイルスは、短期間で爆発的に増殖し、かつ、免疫システム破壊力が極めて強いことから、感染者の状況によっては無症候期を経ずして死に至るケースもあるのかもしれません。HIVの場合には、感染力が弱いために気を付けていれば感染を防ぐことができますが、新型コロナウイルスの場合には飛沫感染や接触感染のみならず、空気感染もあり得ます。
 
 ウイルスの保有者でありながら自らは発症せずに感染源となる健康保菌者(無症候性キャリア)は、19世紀にあって腸チフスの事例(チフスのメリー)からその存在が知られるようになったそうです。同ケースでは、健康保菌者を隔離する措置によってチフス拡大を防いでいますが(健康保菌者の数は、メアリー・マローンを含めてニューヨークで100から200名ほど…)、新型コロナウイルスのケースではその数は桁違いです。中国では、武漢を初めとした大都市で封鎖措置が採られているものの、完全なる新型コロナウイルスの予防法や治療法が確立するまでの間、都市、あるいは、国家そのものを隔離する、すなわち、全国境を封鎖する事態に至らないとも限らないのです(あるいは、保菌の有無を100%判別し得る完璧な検査により無感染が証明されない限り、中国からの出国を禁じる…)。また、日本国のように未だに感染者が少数な国でも、長期的対応を視野に、感染者の治療と生活支援を目的として、離島などの外部と遮断された場所を準備すべきかもしれません。
 
 新型コロナウイルスが、人工的なハイブリッドによって呼吸器感染症と免疫系感染症の二つの顔を持っているとしますと、前者のみを前提とした対処的な対応では、将来、甚大なる健康被害を招く恐れがあります。杞憂に過ぎなければよいのですが、そうとも言い切れないところが辛いところです。日本国政府も、同ウイルスの分析や人体に対する長期的影響の調査に努めるとともに、国民を護るために、最悪の事態を想定した長期的な対応の策定を急ぐべきではないかと思うのです。


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