万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北朝鮮のミサイル実験で早まる最終決断の日

2017年09月15日 11時27分29秒 | 国際政治
安倍首相「国連安保理緊急会合開催を要請する」
 国連安保理の緊急会合において対北制裁決議が採択されてから僅か一週間も経たぬ内に、北朝鮮は、ミサイルを太平洋方面に向けて発射しました。飛距離は3700㎞ほどと報じられていますが、この発射、関係各国の最終決断の時期を早めたのではないでしょうか。

 今般の対北制裁決議では、“さらなる核実験や発射にはさらなる重大な措置を取る決意を表明する”と明記されており、この方針に従えば、安保理緊急会合が再招集されることとなります。この点、仮に中ロが、北朝鮮による“さらなる”行動を抑制しつつアメリカを交渉の罠に引きずり込み、自国の国益に沿った方向に誘導しようと目論んでいたとしますと、この思惑は外れます。逆に、制裁レベルのアップを明記した決議文に縛られ、早々に、石油禁輸への合意という踏み絵を踏まされることとなりましょう。つまり、中ロは、あくまでも北朝鮮を擁護するのか、アメリカ主導の経済制裁の枠組に留まるのか、という岐路に立たされるのです。後者を選択した場合、中ロもまた北朝鮮と同列となり、国際社会において“悪の枢軸”と見なされることでしょう。

 そして、最も重大な決断を迫られるのがアメリカであることは、言うまでもないことです。アメリカは、上述した安保理緊急会合における中ロの対応によって、最終決断を下すのではないかと推測されるのです。仮に、同会合で中ロが石油禁輸にまで踏み込むことに同意した場合には、あるいは、猶予期間を設けた上であれ、経済制裁路線を継続するかもしれません。その一方で、中ロがあくまでも石油禁輸措置に反対し、安保理の決裂が明確となった場合には、単独、または、有志連合による制裁、及び、北朝鮮の核・ミサイル保有の承認といった他の選択肢もあり、かつ、中ロの軍事介入の可能性と軍事的制裁の効果とを天秤に図る必要があるものの、ミサイル迎撃を含め、アメリカが武力行使のオプションを選択する可能性は格段に高まることでしょう。

 日本国もまた、北朝鮮の攻撃対象であることにはアメリカと変わりはなく、北朝鮮の暴発リスクを考慮すれば、Jアラートのみの対応では、最早不十分な段階に達しているのではないかと思うのです。

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北朝鮮による核使用の可能性-身勝手な無理心中の心理

2017年09月14日 16時37分11秒 | 国際政治
北朝鮮「列島、核で海に沈める」=制裁に便乗と日本非難
 北朝鮮問題の解決につきましては、中国やロシアのみならず、アメリカの国内においても北朝鮮を正式に核保有国として認定し、アメリカ本土に届くICBM開発の停止や部分的核実験禁止条約への参加を交渉を以って実現すべし、との意見が聞かれます。しかしながら、この見解、北朝鮮の国柄を考慮すれば説得力に乏しいのではないでしょうか。

 そもそも、北朝鮮は、NPT条約の加盟国でありながら秘密裏に核開発を開始し、全世界を震撼させました。常識を逸脱した北朝鮮の行動に対して、アメリカは、硬軟両面から対応を検討したものの、結局は交渉による解決を選択し、米朝枠組み合意において北朝鮮に“あめ”を与える一方で、核放棄の約束を取り付けます。ところが、北朝鮮は、枠組み合意で放棄したのはプルトニウム型の核兵器であると主張し、濃縮ウラン型の核兵器の開発に乗り出すのです。

 94年の米朝合意ほど、北朝鮮という国の行動様式を表している事例はありません。NPTという一般国際法のみならず、二国間合意をも破っているからです。つまり、この事例から、北朝鮮という国は、法で縛ることも、合意で拘束することも不可能であり、まさしく、“主体思想”という名の通り自己中心主義の塊であり(ただし、他者の主体性は認めない…)、野獣の如く、自らの欲するままに行動する国であることが分かるのです。

 こうした北朝鮮の国柄を考慮しますと、たとえ、正式に同国を核保有国と認めたとしても、その後の行動は凡そ予測がつきます。NPTに違反するぐらいですから、当然に、ICBMの開発停止や部分的核実験禁止条約の誠実な遵守を北朝鮮に期待することはできません。暴力しか信じないのですから、法も合意も紙切れに過ぎず、北朝鮮は、これらを自らが有利な地位に上り詰めるために悪用することでしょう。続く六か国協議も時間稼ぎでしかなかったわけですから、これらの主張は、“もう一度騙されよ”と勧めるようなものです。

 そして、北朝鮮の本質が、極端な自己中心主義にあるとしますと、核の抑止力も色褪せます。核の抑止論は、双方ともに理性が備わっており、“相打ちによる自国の滅亡を予測すれば、双方とも核兵器を使用しない”とする前提に立脚していますが、北朝鮮の場合には、この前提は成り立たないからです。自己中心主義が嵩じますと、“自国が滅亡しても相手国を破滅させてやる”、あるいは、“自分が支配者になれなければ人類を滅ぼしてやる”という心理に行き着きます。こうした無理心中の心理は、しばしば人間社会に見られますが(このケースは、相手を不憫に思う故の無理心中ではなく、自らの欲望が満たされない場合に現れる身勝手な利己主義型)、生存本能に従って勝負に負けるとすごすごと逃げ出す動物よりも厄介な感情です。

 北朝鮮の思考や行動様式からしますと、核の使用可能性はアメリカよりも北朝鮮の方が格段に高く、核の抑止力頼みにも危うさがあります。言い換えますと、アメリカの対北抑止力は弱い一方で(日本国が核武装した場合も同様…)、北朝鮮の対米抑止力は強く、米朝間には抑止力の強度に差があるのです。北朝鮮問題に関しては、同国に対して理性的な行動を期待せず、身勝手な無理心中型核攻撃の阻止をも考慮した対策を講じるべきではないかと思うのです。

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“平和の基礎”を守る武力行使vs“.平和的手段”による平和の破壊

2017年09月13日 15時36分07秒 | 国際政治
北朝鮮外務省 安保理制裁「全面的に排撃」強く反発
北朝鮮問題は、国連安保理において制裁強化のための決議が成立したものの、未だ視界不明瞭の状態にあります。この問題、突き詰めてゆきますと、「“平和の基礎”を守るための武力行使“」と「”平和的手段“による平和(正確には”平和の基礎“)の破壊」の間の二者択一となるのではないかと思うのです。

 ここでは、“平和の基礎”という言葉は、一先ずは、国際社会の安定を支える法秩序、即ち、一般的ルールに基づく体制やその目的を実現するための制度という意味で使用しています。国家にあって法秩序なくして全ての国民の安全(治安)が守られないように、国際社会にあっても、全ての国家の安寧、即ち、侵略や武力による威嚇なき平和は、法秩序なくしてあり得ません。国家の行動規範となるべき法やルールが存在し、それらが一定のフォームを成して諸国を規律するからこそ、侵略行為やジェノサイド等の違法が国際犯罪と見なさるのです。そして、平和に対する脅威に対しては、各国の自衛の権利のみならず、国連レベルでも軍事的措置による排除が認めています。

 一方、“平和的手段”とは、一般的には紛争に際して武力を用いない解決方法を意味します。国連憲章においても明記されているように、国連加盟国には、先ずは、外交交渉、調停、仲裁裁判、国際司法制度の利用など、紛争の平和的解決が義務付けられています(国連憲章第6章)。加えて経済制裁も、軍事的措置と並ぶ実力行使による危機の排除方法でありながら(国連憲章第7章)、武力を用いないという意味においては平和的手段の一つと見なされています。何れにしても、戦後の国際社会では、紛争が発生する度に、“平和的手段”を以って解決せよ、との大合唱が起きるのです。

 “平和の基礎”と“平和的手段”との違いを念頭に置きながら北朝鮮問題を見据えますと、今日、人類が直面している深刻なジレンマが見えてきます。何故ならば、“平和の基礎”を守ろうとすれば武力を行使せざるを得ない場合があり、一方、あくまでも“平和的手段”に固執するならば、“平和の基礎”が破壊される場合があるからです。北朝鮮問題の場合には、“平和の基礎”とはNPT体制を意味しており(因みに南シナ海をめぐる中国の国際仲裁判決の破棄は、国際司法制度の崩壊をもたらす…)、上記の立場の何れかを選択するのかによって、NPT体制の運命が決まってきます。

NPT体制とは、基本的な構図としては、核保有国を“世界の警察官”と目されている国連安保理の常任理事国に凡そ限定し、核不拡散の義務を負わせる一方で、非保有国に対しては核の開発や保有を禁じる体制です。不平等条約との批判がありながらも、核保有国の特権は、国連常任理事国の地位と同様に、国際社会における“警察官”としての役割と平和に対する責任を引き受け、権利と義務をバランスさせることで、一先ずは是認されてきたと言えます。

 今般、北朝鮮は、NPTが定めた行動規範に反し、核開発と保有に手を染めたわけですが、仮に、北朝鮮を核保有国として認めますと、この体制は、核保有国と非核保有国の両者の違反行為により、崩壊する道を辿ります。NPTの非批准国であるイスラエル、インド、パキスタンも核保有国とされ、NPT体制の不備は既に指摘されてはいるものの、これらの諸国の核保有は、公式の場で核拡散問題として議論されることなく既成事実化しました。こうした手法が許容されるとは言えないにせよ、首の皮一枚で繋がっていたNPT体制は、北朝鮮の核保有が核拡散の危機として表面化した以上、その存在意義は根底から揺ぎかねないのです。

北朝鮮問題の解決に当たって、中ロは、核保有国でありながらNPT体制の‘警察官’としての義務を捨てて北朝鮮の核を認め、アメリカもまた、“平和的手段”を優先して両国に追従すれば、義務と権利の均衡は崩れ、核保有国としての特権を認める必要性も消滅します。そして、北朝鮮の核保有が認められたからには、他の全ての諸国も、NPT体制の下で抑制されてきた核開発・保有の権利を主張することでしょう。“警察”がその職務を放棄する、否、犯罪者を幇助した以上、各自が正当防衛の権利を回復するのは、当然と言えば当然のことです。ロシアの識者は、北朝鮮の核がロシアに向かず、また、アメリカをも攻撃対象としないならば、北朝鮮の核保有は容認されるのではないか、とする見通しを述べていましたが、仮に、全ての諸国の核武装が実現すれば、如何なる弱小国であれ、相当数の諸国、特に周辺諸国が、ロシア、及び、中国に核ミサイルの照準を定めることでしょう。「平和的手段」を選択した場合、その先には、全諸国による核武装と軍拡競争が待ち受けているかもしれません(しかも、北朝鮮は核兵器、並びに、各種ミサイルの輸出国となる可能性が高い…)。もっとも、NPT体制という法秩序は崩壊しても、核の均衡が、幸いにも全世界レベルで実現し、多角的抑止による平和が訪れるならば、この選択が“絶対悪”であるとも言い切れないのが複雑なところです(ただし、核の使用をも厭わないテロ集団の手に渡った場合には平和は実現しない…)。

 その一方、あくまでもNPT体制を維持しようとすれば、武力を行使してでも北朝鮮の核・ミサイルを排除する必要があります。上述したように、核保有国が特定の違反国にのみ核保有を認めるとすれば、それは、NPT体制の終焉を意味するからです。“平和的手段”ではないにせよ、武力行使の結果として、核保有国が責任を負う核管理体制としてのNPT体制は維持されれば、人類は、一先ずは“ならず者国家”による核の脅威から解放されると共に、核の拡散を防ぐことができるのです。ただし、この場合でも、もとより同体制が内包する不平等性が問題視されていることに加えて、今般の中ロの行動で露呈したように、核保有国による義務違反は深刻な脅威ですし、NPT非批准核保有国等の問題も残ります。言い換えますと、たとえNPT体制が武力行使により維持されても、同体制は全ての諸国の安全を保障しないのです。そこで、同体制を永続的に維持しようとすれば、核保有国の義務の強化、核保有国を含む違反国に対する厳罰化、非批准国のNPT加盟と核放棄など、核保有国に丸投げせずに国際レベルで核管理を厳格化し得る方向へのNPT体制の抜根的な改革を要することでしょう(核兵器禁止条約よりは現実的…)。この改革に失敗しますと、やはりNPT体制は崩壊の危機に瀕します。

 長期的に見ますと、武力行使に訴えてでも“平和の基礎”の維持を優先した方が国際社会の安全性は高まるようにも思えますが、果たしてアメリカは、このジレンマを前にして、どちらを選択するのでしょうか。そしてそれは、NPT体制のみならず、人類の運命もがかかる重大な選択であると思うのです。

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限界が露呈した中ロの対北制裁協力-骨抜き国連制裁決議

2017年09月12日 14時49分38秒 | 国際政治
国連安保理、北朝鮮制裁決議案を全会一致で採択
 本日、国連安保理では、原案に大幅な修正を加えた形で対北経済制裁決議案が全会一致で採択されました。予定されていた全面的な石油禁輸措置は上限設定に緩められ、金正恩朝鮮労働党委員長に対する資産凍結なども見送られるという“骨抜き決議”となったのです。

 修正の背景としては、北朝鮮の早急な混乱を避けたい中ロによる強固な反対に対して、早期、かつ、全会一致での決議成立を優先したアメリカ側の妥協が指摘されております。しかしながら、本提案の目的が、強力な経済制裁を以って北朝鮮を“兵糧攻め”にし、依って核、並びに、ICBMの開発・保有の放棄を迫るものであるならば、優先順位をはき違えた本末転倒という他ありません。修正案によって合意された主たる項目を検討しましても、悲観的とならざるを得ないのです。

 第一に、石油部門については、原油は過去12か月分が上限とされ、400万バレルの現状の輸出量がそのまま維持される一方で、石油精製品については、年間200万バレルの上限が設定されました(ただし、コンデンセートと天然ガスについては全面禁輸)。アメリカ政府は、この措置で石油輸出量を3割ほど削減できると説明しておりますが、北朝鮮の核・ミサイル開発を放棄させ得るほどではなく、開発完了時期を遅らせる程度の効果しか期待できません。また、公海における禁輸品輸送が疑われる船舶の臨検についても、旗国の合意を要する方向で修正されたため、密輸を取り締まることもままならないのです。しかも、陸運面でも、中国との国境地帯では(元瀋陽軍区)、既に石油の密輸が横行しているため、石油部門での制裁効果は望み薄です。

 第二、北朝鮮製の繊維については全面的な輸出禁止となり、今年度の貿易額から算定すれば、北朝鮮は、7億5200ドル程度の減収が見込まれています。繊維産業は石油に次ぐ主要な輸出品ですので、比較的高い制裁効果が期待される部門ですが、輸出の8割が中国向けですので、石油部門と同様に密輸の黙認が懸念されます。

 第三の主たる制裁は、海外で外貨を稼ぐために派遣されている9万3000人あまりの北朝鮮労働者に対する措置です。この措置も、原案にあった即時の強制送還よりも緩和されており、新たな就労許可の付与を禁じるに留まりました(ただし、契約期限終了後は更新できない…)。長期契約を締結している場合には、効果が現れるまでには時間を要しますし、永住資格取得者や密入国者による本国送金の可能性も残されています(この点は、日本国政府にも責任がある…)。

 以上に主要な三つの部門について挙げてみましたが、繊維部門のように一定の成果が予測される部門もあるものの、これらを全て忠実に実施したとしても、北朝鮮が、核・ミサイルの開発・保有を放棄するほどの圧力となるとは思えません。中国外務省は、“完全履行を望む”とする談話を公表していますが、この発言は、対北制裁に対する積極姿勢の表明と言うよりも、制裁効果の限界を見越した余裕から来ているのでしょう。また、北朝鮮は、核兵器の原料となるウランのみならず、各種レアメタル、金、マグネサイトなどの鉱物資源にも恵まれており、今なお諸外国との間で貿易、あるいは、密貿易が行われている可能性もあります。

 そして、何よりも重要なことは、今般の安保理制裁決議の採択によって、対北制裁における中国とロシアからの協力の限界もまた露わになったことです。北朝鮮を温存させるとする両国のスタンスは明瞭であり、今後、更なる核・ミサイル実験等を機に国連安保理の臨時会合が開かれ、制裁レベルを上げた案が提出されたとしても、中ロが、石油の全面禁輸等に同意する可能性はゼロに近いと言わざるを得ないのです。

国連における経済制裁路線が隘路に至ったとしますと、残された道は、(1)国連の枠組みを離れた有志連合による経済制裁(先端技術面での入手ルート遮断…)、(2)米軍による武力制裁、並びに、(3)北朝鮮の核保有の黙認となります。既にロシアは(3)立場を示唆しており、アメリカ国内のリベラル派にも同様の見解が散見されます。中国は、六か国協議の再開によって関係諸国の泥沼の交渉に引きずり込み、状況をできる限り曖昧化することで、(3)に伴う日本国の核武装を封じつつ現状を維持しようとすることでしょう。

 となりますと、日本国政府は、(1)の場合には、有志連合による対北制裁を自ら提起する、他国が呼びかけた有志連合に参加する、あるいは、単独で独自制裁を強化するといった選択肢があります。ただし、中ロが不参加の状態での経済制裁頼りには、効果不足のリスクが伴います。また、アメリカが(2)を選択した場合には、北朝鮮からの攻撃リスクを覚悟しつつ、自衛隊は、米軍に全面的に協力することとなりましょう(なお、中ロも、以前は米軍による核・軍事施設の破壊を目的としたピンポイント空爆であれば容認の立場であったのでは?…)。そして、アメリカが(3)を選択した場合には、日本国は、速やかに核武装を実現する、発射前にミサイル破壊、あるいは、発射阻止可能な敵地攻撃能力を備える、並びに、完璧なるミサイル防衛システムを構築せざるを得ないのではないでしょうか。なお、核武装については、たとえアメリカが、ICBMのみの計画放棄で北朝鮮と妥協したとしても、主権平等の原則(NPT体制の崩壊により核保有にも適用…)、過去に繰り返された北朝鮮の合意違反、並びに、中国による核をバックとした威嚇と先制攻撃の可能性を考慮すれば(今般の対応でも明らかなように、中国は核保有国としての義務に違反…)、日本国は、核武装を強く主張すべきかもしれません。

 時間は待ってはくれないのですから、中ロの立場が明白となった以上、国連安保理の枠組とした経済制裁路線には見切りをつけ、より有効な解決への道に向けて舵を切るべきと思うのです。

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北朝鮮は“死の商人”?-イランとの違い

2017年09月11日 16時40分33秒 | 国際政治
北朝鮮問題解決へ貢献の用意=イラン核対応参考に―独首相
 北朝鮮問題については、9月11日に、国連安保理において石油禁輸を含む新たな制裁決議案が採決に付される予定です。制裁に慎重な姿勢を示してきた中ロの出方を読み切ることは難しく、予断を許さない状況のようですが、水面下での交渉を経て採決にまで漕ぎ着けたところを見ますと、成立の可能性は相当に高いのではないかと推測されます。

 こうした中、ドイツのメルケル首相は、同問題について外交による解決に貢献する意向を示したと報じられております。同首相がモデルとするのは2015年の米・イラン核合意であり、北朝鮮もまた、イランと同様に制裁解除を条件として核・ミサイル放棄に合意すると見込んでいるようです。しかしながら、イランと北朝鮮とでは全く状況が違います。

 第一に、イランは核開発の途上にあり、未だに核兵器を保有していない状況にありました。一方、北朝鮮は、少なくとも核兵器については既に開発を済ませており、かつ、核という脅迫、並びに、攻撃兵器を手にした以上、それを易々と手放すとは思えません。

 第二に、北朝鮮が、厳しい経済制裁を受けてもなお核・ミサイル放棄に応じない理由は、それが、今後、北朝鮮の有力な外貨獲得の手段となる見込みがあるからです。北朝鮮はウラン資源に恵まれており、今般の行動でNPT体制が完全に崩壊すれば、核やICBM等を輸出品として諸外国に売却することができます。おそらく、イランなどの反米国家も、有力な取引先となりましょう。言い換えますと、北朝鮮は、核やICBM等が自国の有力な輸出商品となり得るからこそ、外部からの如何なる制止をも振り切って、商品の性能を潜在的“バイヤー”にデモンストレーションする場として実験を繰り返していると考えられるのです。

 イランのケースでは、核開発を停止することに経済的なメリットがありますが、北朝鮮の場合には、開発を停止しないことにメリットがあるのですから、両者を同列に論じることはできないはずです。もっとも、仮に、ドイツが北朝鮮の暴挙を押さえることができるとしますと、北朝鮮がウラン濃縮に使用している遠心分離器のPLC(制御装置)がドイツのメーカー、シーメンスの製品であることを利用する方法があります。

 パキスタンの科学者であるアブドゥル・カディール・カーン氏は遠心分離機を開発するにあたって同社のPLCを使用し、イラン、リビア、北朝鮮の三国に売却したされています。つまり、北朝鮮が、ウラン濃縮型の核兵器を増産して使用、あるいは、輸出しようとしても、シーメンス製のPLCを使用している限り、部品調達といったメンテナンスを含めて同社の販路や技術に依存せざるを得ないのです。PLC自体は汎用品なそうですが、かつて、アメリカがイランに対して実行したオリンピック作戦がシーメンス社製のPLCを利用したように、製造元であるシーメンス社の協力を得る、あるいは、供給経路を遮断することができれば、遠心分離の段階で北朝鮮の“核産業”を潰すことができます。もっとも、PLCの他社への乗り換えはソフトウェアの違いから困難とはいえ不可能ではありませんので、シーメンスのみならず、他のメーカーにも同様の協力や禁輸措置を要請する必要はありましょう。

 北朝鮮を“死の商人”と断定するにはより厳密なる検証を経る要しましょうが、北朝鮮の核・ミサイル開発は、物理的・技術的に阻止する方法がないわけではありません。交渉に持ち込まれることで危機が長期化する、あるいは、北朝鮮有利な展開となるよりは、ドイツ一国で動くよりも、国連決議等において、石油禁輸に留まらず、PLCを含む核・ミサイル開発に要するあらゆる関連機器の全面的な禁輸措置を講じた方が、北朝鮮が早々に白旗を揚げる可能性は高まるのではないかと思うのです。

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第二次世界大戦では日本人は難民にならなかった-朝鮮半島難民大量発生論への疑問

2017年09月10日 15時36分24秒 | 国際政治
金正恩氏「より大きな勝利を」=水爆実験祝宴で演説―北朝鮮
 緊迫の度を強める一方の北朝鮮問題については、米軍の対北武力行使の準備は既に整っているとされ、何時、有事発生の速報が届いてもおかしくない状況が続いております。米朝両国とも矛を収める気配はありません。

ところで、仮に軍事衝突に至った場合、朝鮮半島から大量の難民が押し寄せるとするシミュレーションがあります。チェタン・ペダッダ米退役陸軍大尉が「フォーリン・ポリシー」に寄せたシナリオでも、短期間で北朝鮮が制圧されることは確定的でありながらも、朝鮮半島は壊滅状態に至り、日本、アメリカ、中国に大量の難民が押し寄せると予測しております(9月10日付産経新聞一面に掲載)。このシミュレーションは、北朝鮮による核兵器の使用は想定していないそうですが、韓国の首都ソウルが壊滅し、生活・産業インフラも破壊される共に、北朝鮮が大量破壊兵器である生物・化学兵器をも使用するため、人的、並びに、物的被害が広範囲に及ぶと推測しているようです。

 おそらく、北朝鮮難民は中国を目指し、韓国からは日本国やアメリカを目的地とすると難民が流出すると予測しているのでしょうが(仮に米朝が開戦し、北朝鮮が核兵器を使用する場合には、難民の選択肢は中国一択となる…)、このシナリオには疑問があります。その理由は、歴史を振り返りますと、短期間で民間人居住地での戦闘が終結する場合には、それ程大量の難民は発生しないからです。例えば日本国の場合、戦争末期にあっては都市空爆を受け、多くの一般市民が住む家を失い、その日の食糧にも事欠くあり様となりましたが、難民となって国外に流出することはありませんでした。否、逃げずに日本国内に留まり、焼け野原を前にして多くの国民が日本国の再建を誓ったからこそ、戦後、奇跡と称された復興を実現することができたとも言えます。

この観点から見ますと、シリア難民問題がなかなか解決を見ない理由は、内戦が短期に終結しておらず、住民をも巻き込む形で長期化していることから説明できますし、アフガニスタンからの難民流出が止まらない原因も、同地でのテロや戦闘状態の継続にあります。

 かつて、リビアの独裁者であったカダフィ氏は、米欧諸国による空爆を前にして、自国民の難民化とヨーロッパへの大量移入を語って軍事行動を牽制しましたが、大量難民のリスクは、空爆に対して慎重な姿勢にさせる効果があります。しかしながら、軍事力としては米軍が北朝鮮を圧倒している状況にあっては、戦闘の短期終結が予測されますので、一時的避難はあり得ても、難民の大量発生は懸念材料とはならないのではないかと思うのです。また、日本国の経験からしますと、早期の戦後復興を成し遂げるためには、南北当事国の国民は、むしろ自国に留まり、祖国の再建に尽くす必要があるのではないでしょうか。

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アメリカの北朝鮮核保有容認派は“日本は座して死を待て”?

2017年09月09日 16時41分19秒 | 国際政治
北朝鮮の大気圏再突入技術は未完成=小野寺防衛相
 本日9月9日に建国記念日を迎えた北朝鮮では、労働新聞のトップページにおいて水爆を含む核、並びに、ICBMの保有が強調されたと報じられております。同記事は更なる“最先端武器”の開発にも言及したそうですが、一方のアメリカ国内では、リベラル派を中心に北朝鮮の核保有を認めるべきとする議論も起きていると伝わります。

 それでは、アメリカが北朝鮮の核保有を認めるとしますと、その後、どのような展開が予測されるのでしょうか。一説に因りますと、米朝間の対話が開始された場合、交渉の俎上には北朝鮮の核放棄は載らず、専らICBMの開発停止、あるいは、保有ICBMの破棄が合意事項となるそうです。つまり、北朝鮮が米国本土に届くICBMの開発さえ手控えれば、アメリカは北朝鮮の核保有を認めるとする取引です。

 この米朝間の“手打ち”の観測に対しては、韓国のみならず、日本国からも既に懸念の声が上がっております。何故ならば、この取引によってアメリカは自国の安全を確保し得ても、北朝鮮の核ミサイルの射程距離に含まれる同盟諸国は、依然、核の脅威に晒され続けるからです。仮に、同合意がなりますと、北朝鮮は、ICBMの保有路線を放棄していることになるため、日本国が核攻撃を受けた場合には、一方的にアメリカからICBMによる核の報復を受けることになります。従いまして、合意が維持されている限り核の傘は有効ですが、それでも、日本国が核による先制攻撃を受け、壊滅状態に陥るリスクには変わりはありません。遅きに失することになるのです。さらに、核を脅しの材料に使った北朝鮮からの恫喝や脅迫、経済・社会などあらゆる面における不当な要求にも晒され続けることにもなります。例えば、所謂‘皇室’の北朝鮮化の容認や経済支援など。

 そして、最悪の展開でありながら最も可能性が高いのは、北朝鮮が秘かにICBMの開発を継続するシナリオです。94年の米朝枠組み合意であっても、六か国協議であっても、過去、二度にわたって北朝鮮は相手国を騙しています。今般の危機において米朝間で合意に達しても、合意内容が遵守される可能性は極めて低いと言わざるを得ません。北朝鮮は、日本国を攻撃した場合、アメリカから一方的に核攻撃を浴びる立場を甘受するとも思えません。完全に秘密裏に開発・保有し、突如宣言するか(既に核保有を宣言しているのは、脅しの効果を狙っているからなのかもしれない…)、何らかの口実を見つけ、アメリカに責任を押し付ける形でICBMの保有を実現することでしょう。この状態に至りますと、アメリカも、自国が被爆国となることを覚悟してまで北朝鮮に対して報復攻撃を行うとも思えず、日本国に差し掛けられてきた核の傘は消滅するのです。

 米朝間で“手打ち”ともなりますと、相当に高い確率で核の傘が消え、NPT体制も崩壊しかねないのですから、当然に、周辺諸国においては核武装論が沸き起こります。実際に、韓国の世論調査では60%が核保有を支持しているそうですが、日本国でも、核の傘の消滅を仮定して世論調査を実施すれば、大多数の国民は、核保有に賛意を示すことでしょう。北朝鮮の核の脅威に晒され続ける諸国にとりましては、たとえ、アメリカが核の報復を約束したとしても、第一撃を防ぐためには、核武装は有効な選択肢の一つなのです。すなわち、電磁パルス(EMP)のように防衛に使用できるタイプの核保有が実現すれば、核兵器による第一撃を回避することができるのです(特に、同時多発的なミサイル攻撃の阻止には有効…)。

 ところが、北朝鮮の核保有を容認するアメリカのリベラル派の人々は、日本国の核保有については否定的なそうです。その理由は、日本国等に核保有を認めれば、核拡散の連鎖が起こり、東アジアの軍事バランスを崩すと共に、偶発的な核戦争の可能性も高まるため、と説明されています。しかしながら、この理由、全く以って説得力がありません。何故ならば、北朝鮮こそ、既に核拡散のドミノ倒しの最初の倒れた一枚となっており、東アジアの軍事バランスを一方的に崩し、かつ、最も偶発的な戦争を起こすリスクの高い国であるからです。これでは、“暴力による現状の一方的変更に対してどう対処すべきか”という問いに対して、“既に暴力によって変更されたのだから、その現状を認めよ”という回答では、答えになっていないどころか、違法行為の事後承認に堕しています。

 そして、この事後承認とは、日本国にとりましては、“座して死を待て”ということになりかねないリスクがあります。日本国のミサイル防衛システムの完備には時間を要しますし、たとえICBMの保有にストップがかかったとしても、北朝鮮は、今後とも軍事技術の向上に努めることでしょう。アメリカの北朝鮮核保有容認派は、日米安全保障条約を揺るがしかねい高飛車で理不尽、かつ、不誠実な主張を日本国に対して行っている自覚はあるのでしょうか。それとも、平和主義者を装いつつ、日本国の核保有を恐れる中国の利益ために働いているのでしょうか。

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日本国政府の9月9日への対応は万全なのか?

2017年09月08日 16時30分31秒 | 国際政治
幹事長代行に辻元氏=民進
 明日9月9日は、北朝鮮情勢において最も危機が高まる日とされております。何故ならば、この日は、北朝鮮の建国記念日に当たるからです。昨年の9月9日に北朝鮮は核実験を実施しており、今年も金正恩委員長が、核実験、あるいは、ICBMの発射実験を試みるならば、アメリカによる軍事制裁もあり得る展開となりましょう。

 朝鮮半島有事の可能性が高まる中、国際社会にあって、日本国政府は、各国要人を前にして積極的に北朝鮮に対する圧力強化の説得に当たっていますが、国内対策は十分なのでしょうか。仮に、有事ともなりますと、懸念されるのは、日本国内にネットワークを張り巡らしている朝鮮総連、並びに、その関連団体や北朝鮮出身者の動きです。二重国籍問題は、蓮舫前民主党幹事長の一件で注目を集めましたが、北朝鮮では、日本国に在住している自国民の離籍を許していないとされており、仮に、日本国籍を有する北朝鮮出身者が存在していた場合、二重国籍となっている可能性があります。また、直接、あるいは、中国や韓国経由で日本国に潜入した密入国者や工作員も相当数に上るはずです。となりますと、現在、数十万の北朝鮮籍を有する人が日本国内に居住していると予測され、いざ有事となれば、母国のために活動する可能性も否定できません。これらの人々は、北朝鮮の命令に従う義務を負っていますし、祖国の親族等が人質にとられているとすればなおさらのことです。

 しかも、皇室、創価学会、統一教会、ソフトバンクなど、日本国の政治、経済、社会等に亘って相当の影響力を持つ団体や組織までもが、北朝鮮との親密な関係を指摘されております。否、日本の国と国民を護ることを使命とする政治家の中からも、日本国を裏切る者が現れかねないのです。民進党では、辻本清美議員が幹事長代行を務めると報じられておりますが、辻本氏もよく知られた親北政治家の一人ですので、現下の国際情勢に鑑みますと、民進党の政治感覚は麻痺しているとしか言いようがありません。あるいは、北朝鮮有利に日本国の政局を運ぶために、敢えて人事刷新を機に党内組織を親北派で固めたのでしょうか。そうであるとしますと、民進党の支持率回復の見込みはゼロに近くなります。

 今日の戦争はハイブリット型に変化したと指摘されるように、正規の軍隊による戦闘が行われるのと並行して、国内では、工作員等が、相手国の戦争遂行能力を削ぐためにテロや内部破壊、世論誘導などを行うものです。一般の国家であれば、重要施設に対する警備体制を強化し、朝鮮総連等の活動の監視を強め、さらに、万が一の備え速やかな復旧手続きを整えるなど、テロ対策に最善を尽くすはずなのですが、昨今の政治家たちを眺めてみますと、心もとないとしか言いようがありません。9月9日を明日に控え、日本国政府が、既にあらゆる手段を以って、国内のテロを想定した万全の体制を整えていると信じたいところです。

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日本国も電磁パルスを配備しては?-防御型核兵器の議論を

2017年09月07日 15時30分59秒 | 国際政治
自民・石破氏、米核兵器の配備議論を=非核三原則見直し、政府「考えず」
北朝鮮の第六回目の核実験により、俄かに電磁パルス(EMP)なる兵器が注目を集めるようになりました。電磁パルスとは、高高度で核兵器を爆発させ、強力な電磁パルスを発生させることで、地上の電力インフラストラクチャーや情報通信機器の機能を狂わせ、相手国のあらゆる活動を破壊する兵器を意味します。電子機器を使用している先進国ほど、この兵器の破壊効果は高く、この兵器が使用されれば、アメリカでさえ石器時代に戻るとする説もあります。

 電磁パルス攻撃を受けると、ミサイル防衛システムも作動せず、無防備なままに核ミサイルの攻撃を一方的に浴びる事態となります。想像を絶する被害が予測されますが、それでは、電磁パルスを含む北朝鮮、あるいは、ロシアや中国からの核攻撃を防ぐ手段はあるのでしょうか。

 考えられ得る一つの方法は、相手国が電磁パルス攻撃を実行に移す、即ち、核ミサイルを発射する前に、こちらの側が、先に電磁パルス攻撃を行うという方法です。北朝鮮は、度重なる核・ミサイル実験により、軍事技術のハイテク化を図った結果、電子機器への依存度を高めています。正確にミサイルを着弾させるためにも、精密な誘導システム等を要するわけですから、電磁パルス攻撃を受けた場合、相手国への地上発射型のミサイル攻撃は、電磁パルスを含めて不可能となりましょう。北朝鮮が、トンネルから核弾頭を搬送して地上のミサイル基地に設置し、発射するまでの時間は10分程度とされる一方で、日本国から発射されたミサイルが北朝鮮に到達する時間は8分程度とされています。つまり、電磁パルス弾を距離的に最も近い位置に地上配備しておく、あるいは、潜水艦に搭載し、北朝鮮近海で待機させておけば、少なくとも、北朝鮮からの核攻撃を防ぐことができるのです。

 残されたリスクは、北朝鮮の潜水艦による核攻撃ですが、これに対しては、同国の海洋での活動を封じる策を講じる必要があります。つまり、日本国が、北朝鮮潜水艦の海中での行動を完全に探知する能力を備えることができれば、未然に防ぐことができます。

 北朝鮮については、武力制裁の可能性もあり、同国の核・ICBM保有は阻止される可能性はありますが、黒幕国とされるロシアと中国の戦略核兵器の脅威は残されたままとなります。核保有国である中ロが核兵器を拡散させた、あるいは、拡散を試みた事実は重く、現行のNPT体制が非核保有国の安全を保障しないことは明白です。日本国でも核武装の議論が起きてきましたが、まずは、防御型核兵器の配備を提起することから始めてはどうでしょうか。配備方法としては、非核三原則を見直し、在日米軍に配備してもらう、協定を締結し(ニュークリア・シェアリング協定)、1958年に既に電磁パルスの実験を行ったアメリカから譲り受ける、あるいは、独自に開発するといった方法が考えられます(高高度爆発については、1963年8月に米英ソ三国で締結された部分的核実験禁止条約により禁止されているため、今般の北朝鮮の実験は、ロシア、あるいは、中国による代理実験の可能性もある…)。核の攻撃的使用のリスクが高まっているからこそ、防御的使用の必要性も高まっていると思うのです。

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第二次世界大戦の反省なきメルケル首相-ミュンヘンの宥和の再来?

2017年09月06日 15時47分04秒 | 国際政治
安倍首相、独ロ印に協力要請=北朝鮮制裁強化で
 北朝鮮による第六回目の核実験は、アメリカのみならず、全世界をもその暴力主義によって震撼させることとなりました。水爆ともなりますと、広範囲に亘って電力網や電子・通信機器等を停止させる電磁パルス攻撃の可能性もあります。こうした中、アメリカの武力行使に対しては、中ロのみならず、ドイツのメルケル首相も、平和的解決の立場から反対の意向を示していると伝えられております。

 このメルケル首相の態度、第二次世界大戦の経緯に鑑みれば、首を傾げざるを得ません。何故ならば、ナチス・ドイツの第二次世界大戦を招いたのは、一時の“平和的解決”を選択したミュンヘンの宥和に他ならないからです。1938年9月、イギリスのネヴィル・チェンバレン首相は、平和主義の下で話し合い路線を選択し、ヒトラーによるズデーデン地方(チェコ領)併合を承認しました。マスコミは、一斉にこの平和的解決を歓迎し、チェンバレンも時代の寵児となったのですが、この宥和の結果は1年後の1939年9月のポーランド侵攻により明らかとなります。かくして、その場凌ぎの宥和は領土拡張の野望を抱く独裁者に対しては無意味である、とする教訓が歴史に刻まれたのです。

 ミュンヘンの宥和に今般の北朝鮮問題を当て嵌めますと、メルケル首相の話し合い路線は、当時の英チェンバレン首相の平和主義的態度と重なります。メルケル首相は、交渉によって北朝鮮の核・ミサイル放棄は可能と読んでいるのでしょうが、北朝鮮の独裁者である金正恩委員長が保有への意思を固めている場合には、ヒトラーのケースの二の舞になります。おそらく、表面的、かつ、打算的な合意には達しても、近い将来、人々はその結末を知ることとなるでしょう。しかも、過去の二度の交渉、即ち、94年の枠組み合意、並びに、六か国協議において、北朝鮮に対しては、話し合いという手段が無駄であったことは既に証明されています。

 それとも、メルケル首相は、その結果を十分に認識しながら、アメリカに対して北朝鮮の要求を呑むよう暗に仄めかしているのでしょうか。オバマ前大統領に近い立場にあるメルケル首相は、あるいは、前民主党政権と同様に、内心では北朝鮮の核保有を容認していたのかもしれません。

 絶対平和主義を貫くと戦争に至る、というパラドクシカルな因果関係を、今日、人類は、再び歴史が残した苦い教訓として思い起こす必要がありそうです。メルケル首相は、対北制裁強化については賛意を示しているそうですが、自国ドイツこそ、独裁者のリスクと惨禍を経験し尽くした国ではなかったかと思うのです。

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秋篠宮“眞子さん”の驚愕婚約会見-深刻な太陽と月の関係の逆転劇

2017年09月05日 14時47分41秒 | 日本政治
【眞子さまご婚約】経済効果1000億円?、結婚数2万組増予測
 今月3日、九州北部で発生した水害のため延期されていた秋篠宮“眞子さん”と小室圭氏との婚約会見が開かれ、両家の縁組は正式に内定したようです。“眞子さん”が一般の私人であれば祝福すべき慶事なのでしょうが、将来、皇籍を離脱するとはいえ、現時点では法的には公人であるために、マスメディア等の祝福一辺倒の報道ぶりには疑問を感じざるを得ません。

 とりわけ、同会見で驚かされたのは、両人がそれぞれを太陽と月に喩えあった件です。日本国の伝統によりますと、皇祖神は太陽神である女神、天照大神ですので、国民の多くは、仮にも太陽と月の関係に喩えるならば、当然に、皇族の側が太陽であると考えるはずです。ところが、同会見では、両人は、“眞子さん”が小室氏を太陽に喩えて褒め称え、小室氏もこの発言を受けて“眞子さん”を月として応えているのです。

同会見は即興であるはずもなく、ましてや、太陽と月の構図が最初から設定されていなければ、太陽と月が一対を成すはずもありません。練りに練られた原稿を両人が丸暗記し、会見中の仕草まで専門家から指導を受け、会見に臨んだものと推測されるのです。どこか不自然さを感じさせたのは、それが準備され、演出された“皇室劇”であったからなのでしょう。また、同婚姻について、殊更に、関係者たちが“本人の意思の尊重”を強調したのも、組織性を隠すための煙幕であるのかもしれませんし、「眞子本人の意思によって選ばれたのであるから、国民は文句を言ってはいけない」という小室氏の開き直りであるのかもしれません。

 いずれにいたしましても、この婚約会見は、何らかの組織によって、太陽と月の立場の逆転を国民に向けて宣言するために設けられたとしか言いようがないのです。そしてさらに疑問となるのは、小室氏が象徴する“太陽”とは、一体、何なのか、ということです。両人の説明によりますと、全く偶然に海外留学の説明会であったとされておりますが、それは、事実なのでしょうか。小室氏については、徹底した箝口令と情報統制が敷かれており、ネット上では、父と祖父の自殺、母親のカルト系新興宗教団体への入信と奇行、そして、在日韓国・朝鮮人の家系ではないか、とする疑惑が渦巻いております。太陽の擬人化と言えば、まずは北朝鮮や創価学会等のパーソナル・カルトが思い浮かびます。

婚約会見にあっても、小室氏の出自に関する具体的な情報が皆無であったため、今一つ祝賀ムードに欠けるのも、小室氏の出自不明の怪しさ以上に、その組織の不気味さにあるのではないでしょうか(国民に隠さなければならない組織なのでは…)。言い換えますと、確かな情報が乏しい中、両人が、敢えて太陽と月に言及したことこそ、抽象的ではありながら、同婚姻における組織的背景を推測し得る根拠を残したとも言えます。

 ‘皇族’の出自不明問題と姻族による‘皇室’乗っ取りという悪しき前例は、既に東宮家と小和田家との縁組が示しております。小室氏と小和田氏が、同じ組織に属しておりましたならば、事態はさらに深刻です。

小室氏に関する情報隠蔽に対しても、個人情報であるから詮索すべきではない、とする意見も聞かれます。しかしながら、仮に同婚姻が個人レベルの問題であるならば、宮内庁が敢えて会見を開く必要もなかったはずです。婚約会見とは、国民に対して新たな‘皇族の縁者’をお披露目する場であるのですから、小室氏が何処の何者であるのか、について個人情報を含め、包み隠さずに誠実に国民に知らせるべきではなかったかと思うのです。にも拘らず、宮内庁は、天皇の正統性をも支える神道の伝統に反し、太陽と月の関係を逆転させる問答を敢えて準備したとしますと、宮内庁までもが、小室氏を陰で支える何らかの組織に乗っ取られている可能性が高くなります。果たして、Let it beの先には、何が待ち受けているのでしょうか。

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罪深い北朝鮮とその支援勢力-瀬戸際に立たされる人類

2017年09月04日 16時31分19秒 | 国際政治
国連安保理、きょう緊急会合=日米、強力な制裁要求へ―北朝鮮核実験
 国際社会の制止を振り切って北朝鮮が行った第6回目の核実験は、ICBM搭載型の水爆である可能性も否定できず、朝鮮半島情勢は、新たな次元に移行したとする見解も聞かれます。

 六か国協議の再開については、既にかの中国さえも断念したとも伝えられており、北朝鮮の時間稼ぎ、あるいは、核とICBMを“凶器”とした脅迫による“身代金要求”の場となる話し合い路線は、今般の実験で遠のいたと言えます。そこで、残る選択肢は、武力制裁か、あるいは、経済制裁となりますが、どちらが選択されるかは、中ロの対応次第となりましょう。そこで、今後の展開については、幾つかのシナリオが想定されます。

 アメリカは現在、対北経済制裁網を強化し、制裁対象は、中ロを含む北朝鮮と取引のある全ての諸国に拡げております。“対北兵糧攻め”は同時に、中ロの経済にもマイナス影響を与えており、いわば、中ロに対しても間接的な圧力として働いています。今後、さらにそのレベルを上げるとしますと、中ロは、北朝鮮を見捨てるか、あるいは、表の仮面、即ち、“世界の警察官”としての常任理事国の責任をかなぐり捨てて北朝鮮を支援するか、の選択を迫られることとなります。

 仮にアメリカが、中ロの合意を取り付けることができれば、この問題は、短期間で決着が付くかもしれません。両国による石油禁輸が実施されれば、北朝鮮の核・ICBM開発、燃料不足等により大幅に抑制されますし、生産力の著しい低下は金正恩体制をも揺さぶります。また、石油禁輸によって北朝鮮が暴発した場合でも、北朝鮮の“兵站”は断たれていますので、その被害は最小限に留めることができます。なお、武力制裁は、核施設やミサイル基地を徹底的に破壊する点において、目下の脅威を即時に取り除き、北朝鮮の軍事力を大幅に削ぐ点においてメリットがあります。中ロも、国際社会における“世界の警察官”の役割と責任を自認し、常任理事国の特権の維持を望むならば、協力せざるを得ない立場にあります。

 その一方で、中ロがあくまでも北朝鮮を擁護する立場を堅持し、両国が軍事的な支援を表明した場合には、北朝鮮の核・ICBMの保有が固定化されるのみならず、米中戦争、あるいは、米陣営対中ロ陣営による第三次世界大戦にまで発展することも予測されます。このケースでは、アメリカの対応は二つに分かれるかもしれません。

 第一の対応は、一帯一路構想を掲げる中国の領土拡張主義や習近平独裁体制の確立を計算に入れた上での、早期対中開戦の容認です。これは、ハイテク軍事技術の急ピッチな向上により、近年、米中間の軍事的格差は縮小しつつあり、将来の何れかの時点で、中国から重大な軍事的挑戦を受けるのであれば、時期が早いほどアメリカ側に有利とする考えに基づきます。ただし、北朝鮮とは軍事同盟の関係にないロシアまでもが軍事介入を試みた場合、アメリカが軍事力において両国を凌駕できるか否かは不透明であり、慎重な判断を要します。

 第二の対応は、上記の何れの戦争も回避する一方で、対北政策の一環ではなく、直接、かつ、広範囲にわたって中ロ陣営への経済制裁を徹底することです。特に、外資を受け入れることで急激な経済成長を達成した中国経済は、アメリカ、並びに、その同盟国への経済依存度が高く、ハイテク兵器の分野でも製造に要する部品等も輸入頼りが少なくありません。外資系企業の撤退や輸出入制限は“兵站”を断つ効果があり、元より経済力に乏しい北朝鮮よりも高い効果が期待できます。その間、アメリカ並びに同盟諸国はミサイル防衛技術を始めとした軍事力の増強に努めることとなりますが、このシナリオは、冷戦構造の復活と言えるかもしれません。

 ところで、安保理緊急会談での提案が予定されている石油禁輸措置については、“くせ玉”なる可能性があります。何故ならば、北朝鮮の敵視の先は、アメリカやその同盟国となるとは限らず、中国に向く可能性があるからです。元瀋陽軍と北朝鮮軍部との関係は以前から知られており、しかも、中国東北部に睨みを利かせたいロシアが影響力を浸透させていた可能性があります。石油禁輸をめぐってロシアのみが北朝鮮の擁護に回る場合、中ロの結束が崩れる切っ掛けとなるかもしれません。もっとも、このシナリオでは、南シナ海問題を考慮すれば、即、米中接近とはいかず、米中ロ間の相互牽制により先が読みにくい状況となりますが、二極ではなく、三極冷戦に至る可能性もないわけではありません。

今般の一件は、暴力主義を奉じる北朝鮮に非があることは明白でありながら、国連安保理常任理事国の中ロが背後に潜んでいることから、第二次世界大戦後の国際秩序の行方をも左右する事態に至っています。今や、戦後に構築された法の支配を基調とした国際秩序は崩壊の危機に瀕しており、北朝鮮、並びに、その支援勢力の瀬戸際作戦で追い詰められているのは、全人類に他なりません。これらの勢力が、全世界を再び戦禍に巻き込み、無法な野蛮世界に逆戻りさせるとしますと、人類に対する罪は重いのではないかと思うのです。

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レッドラインを越えた北朝鮮-近づく最終局面

2017年09月03日 16時16分14秒 | 国際政治
北朝鮮、核実験か=北東部で地震―「ICBM用水爆」の可能性
 本日午後正午過ぎ、北朝鮮が第六回目の核実験を実施したとする速報が飛び込んできました。地震規模にしてマグニチュード6.3前後の揺れが観測されており、過去最大級の核実験との見方もあります。

 今般の核実験において注目されるのは、アメリカのトランプ大統領の決断であることは言うまでもありません。アメリカは、硬軟取り混ぜた姿勢で北朝鮮と対峙してきたものの、北朝鮮に対しては、越えてはならないレッドラインとして核、並びに、ICBMの実験実施を挙げてきたからです。ICBMについては発射されたミサイルの飛距離等の判断によって基準が曖昧となりますが、核実験に関しては、その並外れた爆発力と‘ゼロ’という震源の深さから容易に判別がつきます(ICBM搭載用の水爆とも…)。言い換えますと、北朝鮮は、レッドラインを越えることを承知の上で、核実験を敢行したのです。

 この実験により明らかとなったことは、北朝鮮は、核の保有こそ自らの命綱と考えていることです。否、“はったり”ではなく、核保有の裏付けの下でアメリカ、周辺諸国、並びに国際社会を脅迫し、自らの要求を呑ませるために核実験を急いだとも言えます。核兵器の開発と保有が前金正日政権から受け継がれた至上命題である限り、94年の米朝合意も六か国協議も、全く以って無駄であったことがよりはっきりしたのです。

 となりますと、米朝の解決に関する立場は逆転し、今後、アメリカに対して“対話”を強く要求するのは、北朝鮮側となることが予測されます。もっとも、北朝鮮が求める“対話”とは、核やICBMの放棄を取引材料とする外交交渉ではなく、北朝鮮を正式に核保有国として認めさせ、アメリカに対してTHAADの撤廃や対北敵視政策の放棄等を迫る脅迫の舞台としての“対話”です。言い換えますと、核実験に踏み切ったことで、北朝鮮は、この問題に関して自国が無傷で済む選択肢は、対米対話要求一択に狭まったのです。仮に、予告通りにグアム沖に向けてICBMを発射するなど、実際に攻撃を仕掛けようものなら、アメリカによる報復攻撃により、自国の破壊と破滅が待っているのですから。

 その一方で、アメリカ側の対応は、対話路線から武力、あるいは、経済制裁路線へと大きく傾くことでしょう。今般の核実験によって、北朝鮮とは逆に、対話は解決の手段として後退するのです。核・ICBMの放棄を前提としない北朝鮮との対話など、全く意味がないばかりか、アメリカが暴力国家に屈することに他ならないからです。

 早々、国連安保理でも緊急会合が開催されるそうですが、北朝鮮がNPTや国連決議等に明白に違反した以上、国際社会においても制裁強化への流れはさらに強まり、武力制裁を容認する決議も視野に入ってくる可能性もあります。なおも中ロの出方が懸念されるところですが、今般の核実験によって、北朝鮮問題の最終局面はいよいよ近づいたのではないかと思うのです。

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習近平国家主席に乗っ取られる中国-親衛隊化する人民解放軍

2017年09月02日 13時57分26秒 | アジア
【中国権力闘争】「私兵集団」形成に邁進する習近平氏 中枢粛清で軍掌握、腹心を抜擢
 今秋の10月18日に開催が予定されている中国共産党全国大会を前にして、習近平国家主席の人民解放軍掌握の動きが活発化してきております。本日も、胡錦濤前国家主席や江沢民元国家主席の系譜に連なる将官を規律違反の廉で更迭し、軍幹部を自らの子飼いのシンパで固める人事を行ったと報じられています。人事の刷新と云うよりも、これは、まさに粛清です。

 習主席が個人独裁体制の樹立を目指していることは、誰の目にも明らかです。実のところ、個人独裁を確立する手法は、昔も今も然して変わりはありません。20世紀初頭の知の巨人であったマックス・ヴェーバーは、‘カリスマ的軍事君主’が登場する手段として、“自己専属の有給親衛隊を従えること”を挙げており、親衛隊という暴力手段を手にすることが、独裁的な支配体制確立の第一歩としています。歴史を振り返りましても、紀元前6世紀に古代アテネに登場した僭主ペイシストラトスは、“棍棒隊”と呼ばれた親衛隊を結成して権力を握り、13世紀に世界帝国を建設したチンギス・カーンも、征服事業と並行して早々に己一人を守るための近衛部隊を結成しています。20世紀の親衛隊といえば、ナチスのSSがよく知られていますが、共産党の“赤軍”も基本的には党を守る親衛隊です。

 そして、親衛隊による正規の軍隊の乗っ取りこそ政権の近道であることは、ロシア革命時におけるロシア帝国軍の兵士達の革命参加が示しております。共産党は、軍隊内に秘かに共産党の組織網を広げ、革命に際して内部から反旗を翻させることで、武力でロマノフ朝を倒しました。労働者の団結による革命とは幻想であり、軍内部の離反がなければロシア革命はあり得なかったことでしょう。以後、党に忠誠を誓う“赤軍”は共産党一党独裁体制を堅持するための文字通りの“暴力装置”となり、内外に向けて牙を研ぐことになるのです。

 中国の人民解放軍も、中国共産党の“私兵”として1927年8月1日に設立されています。国共内戦の勝利を以って1949年10月10日に中華人民共和国が成立された後も、国軍化が図られたとはいえ、公式には共産党の指導下にあります。ところが、今日、習近平国家主席は、軍に対し、共産党ではなく習氏自身への忠誠を求めており、人民解放軍全体が、習近平独裁体制を暴力で支える親衛隊と化しつつあるのです。この現象は、ソ連邦の事例よりも、古典的な“僭主”の形態に近いと言えます。権力の基盤を親衛隊に置く体制が、古来、“僭主による支配”という国民が忌み嫌った体制であることを想起しますと、中国国民の将来には悲観せざるを得ません。民主主義諸国では、政府の存立基盤は国民の支持にありますが、中国の為政者は、前近代と同様に、軍事力の掌握に血眼になっているからです。習近平独裁体制が盤石となれば、内にあっては暴力で国民の不満や抵抗を押さえ付け、外に対しては軍事力で華夷秩序の復活を試みることでしょう。

 中国共産党は、国民が心から願ったからではなく内戦において武力勝利したが故に中国の統治権を掌握したのであり、中華人民共和国が建国された日は、共産党という外来のマルクス思想を奉じる政治団体に中国が乗っ取られた日とも言えます。そして今日、中国は、習近平主席という一私人によって、再度、乗っ取られようとしているように見えるのです。

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21世紀はユーラシアの時代の恐怖-領土拡張主義と特権グローバリズム

2017年09月01日 16時22分03秒 | 国際政治
中国、胡錦濤派の軍首脳2人を拘束 規律違反の疑いで
 80年代後半に鄧小平政権の下で中国が改革開放路線に舵を切ったことも手伝って、マルタ島における東西冷戦の終焉宣言以降、世界の様相は一変しました。経済分野では市場のグローバル化が急速に進展し、恰もイデオロギー対立はこの世から消え去ったかのような空気に覆われたのです。

 しかしながら、今となってみますと、冷戦構造の崩壊と同時にイデオロギー対立が解消したとする認識には、あまりにも甘かったと言わざるを得ません。BRICSと総称された新興国は、グローバリズムの波に乗ることで急速に国力を伸ばし、今では、地域大国として頭角を現しています。21世紀は、ユーラシアの時代と持て囃されるのも、ユーラシア大陸に位置する大国の台頭が著しいところにあります。ユーラシアの時代は、海洋国家であるアメリカの衰退をも含意していますが、ソ連邦は消滅しても、依然としてロシアはプーチン大統領が軍事大国として周囲に睨みを利かせ、中国は、習近平国家主席が、目下、毛沢東体制の復活ともいうべき個人独裁体制の確立を目指して猛進しています。そして、インドもまた、軍事、並びに、経済の両面において大国への道を歩んでします。

 それでは、これらの諸国が、かつての西側諸国と同様に自由で民主的な国家への変貌したのか、と言いますと、そうとは言い難い状況があります。上述したように、ロシアは、政経両面で共産主義を捨て、中国は、経済面では共産主義から脱したように見えながら、その実、共産主義よりも歴史を古く遡るユーラシア的価値観が、両国において表面化してきているからです。

 ユーラシア大陸とは、歴史的には広大な草原地帯を様々な遊牧諸民族が割拠した地域であり、放牧を生活の糧とする遊牧民には国境や所有権の概念は希薄です。中国では、古来、“北馬”が漢人の農耕民にとって脅威であったのは、‘匈奴’とも称された北方の騎馬遊牧民族が、暴力で“奪うこと”をも生業としてきたからです。加えて、同大陸東部は、他者の人格や生命に対する尊重も薄く、しばしば、掠奪のみならず、大量虐殺や住民の奴隷化が繰り返された地域でもありました。

 やがてチンギス・カーンが登場すると、遊牧民は主役として歴史の表舞台に駆け上がり、モンゴル帝国は、世界の大半を支配の頸木に繋ぐこととなります。13世紀もまた、ユーラシアの時代の始まりであったのです。そして、モンゴルが、一過性の占領を越えて世界帝国となり得た理由は、ユダヤ商人やイスラム商人(両者は区別されずに“回回”と呼ばれた…)等、外国人の知識や技術を受け入れ、活用したところにあります。世界史上初めて政府紙幣を発行し得たのも、おそらくこれらの外国人の入れ知恵によるものでしょう。遊牧民の国境感覚の欠如は、軍事面においては帝国の版図の拡大をもたらす一方で、本質的に広域性を志向する商業とも結びつき、帝国全域から莫大な税を徴収する体制を構築するのです(物品の取引に課された税は、今日の用語で表現すれば消費税に近い…)。モンゴル帝国は、農耕民といった一般の定住民に対しては過酷でしたが、特に元朝では、勅許を与えた商人や手工業者に対しては極めて寛容であり、その振興にも努めたのです。

 13世紀から大航海時代の到来によってヨーロッパに世界の中心が移る15世紀頃までを第一次ユーラシアの時代としますと、今日における第二次ユーラシアの時代のリスクも見えてきます。モンゴル的思考を受け継ぐ中ロの国境感覚の欠如は(因みにインドのムガール帝国の創始者であるバーブルももモンゴル系…)、軍事面では、伝統的領土拡張主義により今日の国際法に基礎を置く国民国家体系を脅かす一方で、経済のグローバリズムを利用する展開も予測できるからです。しかも、ユーラシア型の“グローバリズム”とは、“自由なグローバリズム”でもなく、その利権・利益分配型の支配体制からして、自らがビジネスを許可したグローバル企業のみに特権を与える“特権グローバリズム”となることでしょう(あるいは、中ロの背景には、モンゴル帝国と同様に、国際経済勢力が指南役として協力しているかもしれない…)。

 そして、各国とも、国内に中ロから特権を付与された“特権グローバル企業”を抱えるとなりますと、今日の価値観の対立は、冷戦時代の資本主義対共産主義の単純構図よりも、より一層、複雑化することが予想されます。中ロの軍事的脅威に対抗しようとすれば、とりわけ13億の中国市場に利益を有する国内の“特権グローバル企業”が反対に回るからです。果たして、21世紀はユーラシアの時代として歓迎すべきなのでしょうか。遊牧民由来の思想と利益第一主義との結合によって齎される危機に対してどのように対応すべきか、今日、真剣に考えるべき時期に至っているように思えるのです。

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