万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

RCEPの批准は見送るべきでは―高すぎる中国リスク

2020年11月15日 11時34分59秒 | 国際政治

 本日、日本国の菅首相をはじめ、RCEP参加各国の首脳は、RCEP協定に署名するそうです。同協定は秘密交渉であったため、署名の段となってようやくその内容が明らかにされつつあります。そして、漏れ伝わる同協定の内容からしますと、日本国は、RCEP協定の批准は見送るべきではないかと思うのです。

 

 RCEPにはアメリカが参加せず、かつ、中国が中心国となりますので、同枠組みは、行く行く先には人民元が決済通貨として使用される‘デジタル人民元圏’に発展するリスクがあります。グローバリズムの理想と現実は大きくかけ離れており、規模の経済が圧倒的な競争力を有する上に、‘共通通貨’が存在していない以上、決済通貨、あるいは、流通通貨における非対称性、否、不平等の問題に直面せざるを得ません。つまり、RCEPにあって、世界最大の貿易国である中国の通貨である人民元が地域限定であれ‘国際基軸通貨’となる可能性は極めて高いのです。それは、中国人民銀行、否、中国共産党のコントロール下に入ることをも意味しますので、日本国、並びに、他の参加国にとりましては重大なリスクとなりましょう。

 

 こうした懸念に加えて、もう一つ、重大な問題点を挙げるとすれば、IT分野におけるデータ・サーバーの設置国に関する合意項目です。日経新聞の朝刊2面に掲載された記事によれば、「事業をする条件としてサーバーなどの自国への設置を外国企業に強要することも禁止する」と記されています。仮にこのルールに従えば、日本国内に進出してきた中国IT大手に対して、日本国政府が、同社に対して日本国内にサーバーを置くことを求めることはできなくなります。サーバーとは、情報の提供、並びに、保管場所となりますので、日本国内の企業並びに個人のユーザー情報は、全てサーバーの設置場所、即ち、中国に渡ることとなりましょう。

 

しかも、現状にあって、5G分野にあってはファウェイ製品を政府調達から排除しても、日本国政府は、顔認証システム等において中国製品を採用していることが問題視されています。中国では「国家情報法」制定されており、民間企業であれ中国政府に情報を提供する義務を負っていますので、RCEPに乗じた中国IT企業の日本国内での事業拡大に伴って、日本国のあらゆる情報が中国政府に握られてしまう可能性も否定はできないのです。

 

こうした懸念に対しては、中国市場に進出する日本国のIT企業もまた日本国内にサーバーを置けるのであるから、公平であるとする反論もありましょう。しかしながら、規模において劣位する日本のIT企業が中国IT企業を差し置いてシェアを伸ばせるとは思えず、しかも、サーバーは電力料金の安い国に設置される傾向にありますので、日本国は、サーバーの設置国としての競争力も劣位しています。ここにも、現実としての日中間の不平等が見受けられるのです。

 

マスメディアの多くは、米中対立の最中にあって孤立化を恐れた中国が大幅に譲歩したとするスタンスですが、報じられる内容を見る限りでは、明らかに中国有利の協定です。例えば、工業製品の分野では、中国は、日本製品の輸入に際して86%の関税を削減するそうですが、同分野におけるRCEP全体91.6%ですので、結局、日本国の方が高い率で中国製品の輸入関税を撤廃することとなるのでないでしょうか。そもそも、自由貿易圏という広域的な枠組み自体が、大国、並びに、価格競争力を有する側に有利なのですから、その結果は、容易に予測できます。RCEPには、その他もろもろのリスクが潜んでいることでしょう。軍経が一体化した中国の危険性を多くの国民がしるところとなり、かつ、民間レベルにおいてもデカップリングを模索されている折、RCEPを推進しようとする日本国政府は、逆走して言えるようにも見えます。あるいは、リスクを知りながらの‘確信犯’なのでしょうか(国民を騙している?)。

 

協定が内包するチャイナ・リスクが明らかになったのですから、RCEP協定の批准の是非については、参加各国において議論されることとなりましょう。各国の首脳が署名するとなりますと、その際、批准を決定する権限を有する議会の役割は重大なのですが、日本国の国会は、大丈夫でしょうか。そして、同協定によって直接的な影響を受ける諸々の産業や国民も、積極的に意見や立場を表明すべきなのではないかと思うのです。


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アメリカ大統領選挙-‘マスメディア=正義’神話の崩壊

2020年11月14日 12時53分23秒 | 国際政治

 アメリカ大統領選挙に関する報道の多くは信憑性に乏しく、多くの国民が疑いを抱く状況に至っています。改めて、マスコミとは何か、という問題が問われることとなったのですが、民主的制度の発展とジャーナリズムの出現が凡そ時期を同じくしていることも、この問題が深刻であることを示しているように思えます。

 

 マスメディアは、‘社会の木鐸’と称されてきたように、その始まりを見れば、社会正義の実現を目指し、人々に事実を知らせることを使命としてきました。全てとは言わないまでも、古今東西を問わず、権力者とは、自らにとりまして不都合な情報を隠し、国民を騙すのが常であったからです。国民が為政者側の隠蔽体質をよく知るからこそ、果敢に事実を暴こうとするジャーナリストは、権力に抗して国民のために働く‘勇者’であり、イメージとしては‘正義の味方’であったのです。

 

 ところが、近年のマスメディアを見ますと、そのイメージは急激に薄れつつあります。SNS等におけるフェイクニュースを批判しながら自ら虚偽の情報を発信したため、そのダブルスタンダードが批判されてきましたし、日本国内でも、マスメディアの偏向報道は、‘報道しない自由’の行使として揶揄されてもいます。近代国家にあって基本的な自由の一つとされる‘報道の自由’とは、束縛からの自由を意味しますが、‘報道しない自由’とは、自ら隠蔽者になる、即ち、自らを権力者の側に置くことを意味しますので、最早、国民は、マスコミを自らの‘味方’とは認識しなくなるのです。そして、マスメディアを操って隠蔽を画策する‘権力者’とは、必ずしも国家の政府とは限らず、外国の政府や国際勢力、あるいは、メディアの所有者(会長、社長、筆頭株主など)である可能性についても、国民の多くは勘づくことともなったのです。

 

 今般のアメリカ大統領選挙戦は、‘マスメディアは正義である’とする神話の崩壊を決定づけてしまったように思えます。露骨なまでのバイデン陣営への肩入れ、あるいは、その全てを美化するような報道ぶりは自由主義国家のものとも思えず、独裁者礼賛を報道の任務とする中国や北朝鮮を思い起こさせるほどの異様さがありました。視聴者に‘気持ちが悪い’という印象を持たれるぐらいですから、マスメディアには、異常事態が発生していたとも言えましょう。それはまた、仮に、マスメディアで働く内部の人々が、内心にあって自局の報道姿勢に疑問を感じてはいても、‘権力’に逆らえない状況に置かれていることを意味しています。つまり、マスメディアそのものが全体主義体質に染まってしまっているのであれば、‘権力’に抗した報道など、できるはずもないのです。

 

そして、とりわけ注目されるのが、‘数字’です。民主主義国家では、最終的には数が決定要因となりますので、‘数字’は殊の外重要です。ここに、マスメディアが、数字を水増ししようとする動機を見出すことができるのです。まずもって、投票日に先立っては、バンドワゴン効果を期待することができます。これは、‘勝ち馬に乗る’ことを意味しており、どちらか一方が優勢という情報に接した場合、有権者は、雪崩式に優勢と報じられた方に投票する可能性があります。あるいは、仮に不正投票が行われていたのであれば、不自然な勝利とならないよう、辻褄合わせのために優勢を装ったのかもしれません。

 ‘

開票後にあっても、数字’おいて多数派であることを示せば、それが虚偽であれ、自らの支持する陣営の‘勝利’を演出することができます。実際に、マスメディアの多くは、調査や法廷どころか正式な集計さえ済んでいるわけでもないにも拘わらず、獲得した選挙人の推定数を報じることで、バイデン氏の当選が‘確定’したかのように報じています。また、‘米市民の8割がバイデン氏の勝利を受け入れている’する世論調査の結果も報じられましたが、こうした報道も、‘他の人々が受け入れているのだから、あなたも受け入れるように’という同調圧力を醸し出すことが目的なのかもしれません(フェイクニュースである可能性もある)。何れにしましても、マスメディアによる多数派の演出は、自らの描いたシナリオに国民を誘導するための、‘権力側’の情報操作である可能性が高いのです。

 

国民の多くがマスメディア、並びに、同様の罪を犯したSNSの異常性を認識するに至りますと、情報操作の効力も失われます。誰も信じなくなり、情報価値も失われるのですから。そして、後に残されたのは、今後、国民は、どのような方法や手段で事実を知ればよいのか、という民主主義体制の維持に関わる問題です。それは、中立公平性を確保するために、マスメディアを‘権力’から解放する、あるいは、情報提供機関の独立性を保障するシステムを新たに構築することであるのかもしれません。アメリカ大統領選挙におけるメディアの自滅は、日本国を含む他の諸故国にも同様の問題を投げかけているのではないかと思うのです。


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アメリカ大統領選挙は‘革命の真実’の一端を暴くのか?

2020年11月13日 13時01分03秒 | 国際政治

今般のアメリカ大統領選挙は、人類の歴史において、一体、どのような意味を持つのでしょうか。大変、興味深いところなのですが、同選挙は、近代以降の歴史の真実、とりわけ、ヨーロッパを震源地とする‘革命’なるものの真実の一端、否、欺瞞を暴いているように思えるのです。

 

 何故、このように考えるのかと申しますと、今般の大統領選挙の混乱には、近代以降において人類の歴史を操ってきた‘革命勢力’の実態を示す何かが浮かび上がっているように思えるからです。兎角に、アメリカの大統領選挙と言えば、二大政党制における共和党対民主党との政権を競う選挙として理解されがちですが、今般の大統領選挙では、これまで国民に気が付かれないように中立を装いながら、公平なジャーナリストを装いながら、選挙を巧みに操作してきたメディアが、民主党のバイデン陣営に露骨なまでに肩入れをしたことで、自らの正体を明かしてしまっています。

 

メディアが発信した情報には、ミスや取材不足によるものではなく、明らかなる捏造、すまり、フェイクニューズも混ざっていました。大手SNSもまた、フェイクニューズの取り締まりを根拠に自らの‘私的検閲’を正当化しながら、民主側に有利となるフェイクニューズを野放しにする一方で、トランプ陣営に有利となる情報については、検証することもなくフェイクであると決めつけて、その拡散を妨げてしまったのです。投票に際して有権者の判断に必要となる情報であったにもかかわらず…。こうした一連の情報空間における出来事は、大手メディアと大手SNSが民主党陣営の一員であり、連携しながらトランプ大統領再選の阻止に動いていたことを示唆しています。

 

投票日前から、かくも露骨なメディアや大手SNSによる選挙介入があったのですから、共和党支持者のみならず、良識ある民主党支持者も眉をひそめたかもしれません。いわば、この時点で、全アメリカ国民対マスメディア・大手SNSという、大まかではあれ、大統領選挙における対立構図と並ぶもう一つの対立構図が生じてしまっているのです。何故ならば、虚偽の情報を発信し、自らが支持する候補者が有利となるよう情報操作を行ったのですから、それは、‘仲間’であるはずの民主党支持者をも騙していることを意味するからです。今日では、マスメディアが発表するあらゆる‘世論調査’の結果も信憑性が著しく低下し、‘世論調査’という名の同調圧力の効果も低下してきています。

 

投票日直前にあっては、バイデン候補の中国スキャンダルも国民の間に広まっていましたので、メディアが報じたようにバイデン候補が優勢な状況であったとは考えられません。それにも拘わらず、最終局面にあってバイデン候補が逆転したのですから、多くの国民はこの結果に対して不正選挙を疑うに至ったのでしょう。人には‘直感’というものもありますので、誰もが‘どこかおかしい’と感じたからこそ、国民の多くも、不正選挙の有無をめぐる法廷決着を望んでいるのです。

 

もとより国民のみならず、民主党内にあっても人気が高いわけではなく、かつ、中道派であったバイデン氏が民主党の候補者に選ばれたのも、その背後には、ハリス女史が副大統領に指名されたように、BLMをも率いる党内の極左の勢力の支持があったとされています。BLMには、共産主義国家である中国の影も見え隠れしており、おそらく‘国際革命勢力’の下部組織なのでしょう。ここに、民主党内で主導権を握った極左暴力主義の影響が読み取れるのです。今般の選挙にあって、民主党が不正選挙に手を染めたとしますと(実のところ、オバマ政権の時代から不正選挙の噂はあった…)、目的のためには手段を択ばない極左勢力からの‘入れ知恵’であったのかもしれません。

 

そして、もう一つの要因とされるのが、同氏が集めた巨額の選挙資金です。中国に利権を有する国際金融やIT大手を含むグローバル企業は、トランプ大統領の再選を阻止するために積極的にバイデン陣営に資金を提供したそうです。バイデン親子も中国から利権の供与を受けていますので、グローバリズムを推進したい‘巨大財閥’にとりましては、中国とのデカップリングを主張するトランプ大統領の再選だけは、何としても阻止したかったのでしょう。結党以来、労働者を選挙基盤としてきた民主党の伝統、並びに、バイデン氏の富裕層への課税を根拠として、同氏の大統領への就任は、金融界や財界には不都合との意見も聞かれますが、中国を含めて事業を世界展開するこれらの企業、あるいは、個人の納税地はアメリカとは限りませんので、富裕層への課税は、同氏への不支持要因とはならないのかもしれません。

 

以上に述べた諸点を考え合わせますと、(1)世論先導者、並びに、情報統制者としてのマスメディア並びに大手SNS、(2)暴力手段、あるいは、実行部隊としての過激派集団、そして、(3)資金提供者としての国際金融財閥の三者が結託している様子を伺うことができます。この最後の資金提供者こそ、真の‘黒幕’なのかもしれませんが、この構図、フランス革命を彷彿させるのです。現代にあって、19世紀には存在していない現代文明の利器とも言えるITも登場し、これらが票の集計作業や分析に採用されていることも、不正投票疑惑を強めているとも言えましょう。IT大手の多くもまた、バイデン陣営の一員であるからです。

 

貧しきパリ市民の決起としてイメージされてきたフランス革命の真相については、今日では、背後で糸を引いた金融財閥と結託した国際結社の暗躍が指摘されており、近代以降の人類は、同組織によって振り回されてきたと言っても過言ではありません。そしてその存在は、今般のアメリカ大統領選挙にあって、バイデン陣営として遂に歴史の表舞台に朧げなる姿で現れたように思えるのです。


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RCEPは‘秘密協定’?-秘密主義の問題

2020年11月12日 12時01分54秒 | 日本政治

 報道によりますと、今月15日、RCEPの交渉が妥結したとして、参加15カ国の首脳が協定書への署名に臨むそうです(首脳会談はリモート会議方式で開かれるそうですので、署名もまた、電子署名なのでしょうか…)。しかしながら、このRCEP協定、すんなりと成立するのでしょうか。

 

 何故ならば、RCEPの交渉過程も合意内容も非公開であったからです。15日に各国首脳が協定書に署名することも、多くの国民にとりましては寝耳に水であったはずです。交渉の存在自体は知ってはいたものの、肝心の内容については国民は知ることはできず、RCEP協定は、いわば政府が国民に隠れて締結した‘秘密協定’の性質を帯びているのです。

 

因みに、2019年に11月14日の共同首脳声明で公開されたのも、協定を構成する20章にも及ぶタイトルのみです。交渉分野が20にも及ぶのですから、RCEPの包括性が伺えます(RCEPの日本語の名称は‘東アジア地域包括的経済連携’…)。公表された20のテーマの中には、移民問題と直結する「自然人の移動」、チャイナ・マネーの流入や中国IT大手の進出を意味する「投資」や「サービスの貿易(金融サービス、電気通信サービス、自由職業サービスに関する附属書を含む)」、さらには、ファウェイ製品排除問題とも関連する「政府調達」などもあり、どれ一つをとりましても、日本経済のみならず、政治や社会にも直接的な影響を与えます。

 

一党独裁体制を敷く中国であれば、こうした既成事実化の手法はまかり通るかもしれません。しかしながら、自由主義国家の国民にとりましては、政府による突然の協定妥結は、企業も国民もこれまでとは全く違った環境に放り込まれるようなものです。しかも、TPPとは違い、国内にあって賛否両論の議論が湧くことも、国政選挙にあってRCEPが争点になったこともなく、選挙公約に掲げた政党も候補者もなかったのではないでしょうか。つまり、国民的な議論も合意の形成もなく、政府が、一方的に国際協定を締結してしまったのです。これでは、国民は、政府から‘奇襲攻撃’を受けたようなものです。

 

 本来、通商協定とは国内産業と直結しますので、交渉の場に臨むに先立って、国内においてプラスマイナス両面の影響を受ける産業間の利害を十分に調整すると共に(必ず利害対立が生じる…)、国民の合意を得ることも必要不可欠のプロセスとなるはずです。安全保障の分野における条約や協定の締結には、機密保持の必要性から交渉過程が付されることはありますが、通商の分野では、むしろ、協定の内容を全面的に公開し、それを議論の叩き台にしないことには、真に相互利益となる協定は作成できないはずです。全ての参加国が、相互に他の諸国の国内産業や利益団体、並びに、国民の反応が分かっていれば、自国のみならず、相手国を配慮した提案や譲歩ができるからです。

 

 通商協定締結に際しての秘密交渉は、既にTPP交渉に際して問題視されていましたが、それでもリーク等により同協定の内容が事前に外部に漏れたため、議論されただけ‘まし’でした。一方、今般のRCEPに際しては、国民は、情報から完全に遮断されているのです。インドの離脱理由は安価な中国製品の流入ですので、農産物については各国とも一定の配慮がなされたものの(もっとも、日本国側が護ったのはコメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の「重要5品目」に過ぎない…)、工業製品、サービス、投資、人の移動等の分野では、原則自由化で合意されているかもしれません。メディアは、‘日本から中国に輸出する自動車や自動車部品の関税の削減・撤廃’のみを報じていますが、その他の製品分野はどのように合意されたのでしょうか(中国市場向けの自動車輸出、あるいは、現地生産拡大のために、他の国内産業が犠牲になる?)。

 

 アメリカが参加せず、かつ、RCEPの中心国が中国である点を考えましても、このまま同協定を発効させるのはあまりにも危険すぎます。RCEPは、大中華経済圏形成へのステップともなりかねず、貿易決済通貨も、人民元の使用が要求されるかもしれません。秘密交渉であったのですから、協定の内容が公表される今こそが、国内的な議論の本格的なスタート時点ともなりましょう。そして、同協定は首脳による署名のみでは発効せず、国会における批准手続きを要しますので、十分な情報開示と将来予測の結果、同協定が日本国に対する中国の支配力を強め、国民生活にもマイナス影響を与えると判断された場合には、RCEPからの離脱という選択肢も真剣に検討すべきではないかと思うのです。


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中国輸入目標22兆ドルは罠?

2020年11月11日 12時49分11秒 | 国際政治

 今月5日、中国の上海では「中国国際輸入博覧会」が開催されました。同博覧会の開幕前夜にあって、習近平国家主席がビデオメッセージを寄せていますが、この中で習主席は、今後10年間の間に輸入額を22兆ドルに増やす方針を示しています。年額にしますと2.2兆ドル、日本円に換算しますと230兆円という巨額に上るのですが、この拡大方針には警戒すべきではないかと思うのです。

 

 2019年における中国の輸入額は2兆769億ドルと既に2兆ドルを超えており、輸入博覧会で設定された年間2.2兆円の目標額は実現可能な範囲にあるのでしょう。同年の輸出額が2兆4984億ドルですので、中国の貿易黒字は4,215億ドルとなり、黒字ばかりを一方的に積み上げる状況はいささか改善されたようです。しかしながら、中国側の輸入拡大方針には、諸手を挙げて歓迎できない側面があります。

 

 第一に懸念されるのは、中国側は、対中輸出に際し、相手国企業側に対して貿易決済通貨として人民元を求めてくる可能性が高いことです。日本国企業、並びに、米企業以外の海外企業との決済にあっては、従来のように米ドルを使用する必然性はありません。第二次世界大戦後、否、ブレトンウッズ体制の崩壊後にあっても、米ドルが最も信頼性の高い国際基軸通貨の地位にあったからこそ、ドル決済が慣例化してきたと言えましょう。目下、全世界はコロナウイルス禍に苦しみ、アメリカも、大統領選挙をめぐって混乱状態にありますが、計算高い中国がこの機を逃すはずはなく、輸入拡大を誘引として人民元の国際化を一気に加速化させることでしょう。それを支える制度として、2015年に邦銀を含む各国の民間銀行が、中国の中央銀行である中国人民銀行と直接にリンケージされる決済システムとしてCIPSを設立しています。既存の国際決済システムであるSWIFT等を介さなくとも、同システムを利用すれば、中国国内の中銀による決済システムと同様に国境を越えた人民元決済は一瞬のうちに完了するのです。

 

 人民元決済は、近い将来、デジタル人民元が発効さればさらに普及することが予測されますし、CIPSとアントフィナンシャルが開発している送金システムやスマホ決済等とが統合されれば、デジタル人民元圏は、企業のみならず、一般の民間人を含めて他の諸国にも広がるかもしれません(個人情報も収集されていしまう…)。言い換えますと、中国との間で経済関係を深めれば深める程に、中国の貿易相手国は、中国中心の経済圏に取り込まれてしまうのです。

 

第二の懸念は、中国の貿易相手国は、内なる中国を抱え込み、最悪の場合には、その巨大な経済力、あるいは、潤沢なチャイナ・マネーによって政界、財界、マスメディア等が乗っ取られてしまわないとも限らないことです。中国は、他国を支配するための暴力手段として軍事力をも備えていますので、その影響力は計り知れません。

 

 グローバリズムとは、日本国内では、兎角に、全ての諸国に平等なチャンスを与える体制として理解されがちですが、貿易決済通貨に注目しますと、戦後の国際通商体制にあって米ドルが事実上の‘共通通貨’の役割を担ったように、現状では特定の国の通貨を使用せざるを得ません。アメリカの場合には、自由主義国家の旗手であり、かつ、‘世界の警察官’の役割を担ってきたこともあり、同国が通貨発行益を得ることに対しては他の諸国も一定の理解を示してきたものの、中国が国際基軸通貨の発行国ともなりますと、全体主義国家による経済的支配の手段として使われるに至ることは十分に想定されます。一つ間違えますと、日本国は、中国向けの‘生産国’となりかねませんので、中国の輸出拡大の誘いに迂闊に応じてはならないのではないかと思うのです。


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バイデン氏の怪しい‘国際協調主義’

2020年11月10日 12時51分51秒 | その他

 ‘アメリカ・ファースト’を訴えて当選したトランプ大統領は、第一期目の発足当初にあって、諸外国から懸念の声が上がっていました。自国優先主義となれば、諸外国の問題は後回しにされる、あるいは、負担を強いられる可能性があったからです。今般の大統領選挙にあっても、バイデン候補の当選を願う根拠として、しばしば、バイデン氏が掲げる国際協調主義への期待が指摘されています。

 

 それでは、‘国際協調主義’とは、一体、どのような政策方針、あるいは、国際秩序を構想しているのでしょうか。実のところ、この言葉には、全く正反対とも言える二つのヴィジョンが含まれているように思えます。その一つは、国家体制や価値観の相違に拘わらず、全ての諸国が連帯してゆこうとする宥和主義的なヴィジョンであり、もう一方は、国際法秩序の維持のために諸国が共同で脅威に立ち向かうとするヴィジョンです。両者は、一国主義ではなく、複数の諸国が協力して行動する点において共通しながら、その意味するところは、180度も違っているのです。

 

 第一の宥和主義的なヴィジョンに基づけば、‘国際協調主義’とは、独裁国家であれ、人権弾圧国家であれ、人道的な見地から批判を受ける国であっても、民主主義、自由主義、法の支配といった人類普遍とされる諸価値を共有しなくとも、アメリカは、協力路線を歩むこととなります。同ヴィジョンは、トランプ政権と鋭く対立している中国にとりましては願ってもいない最高のシナリオである一方で、日本国、並びに、中国の軍事的脅威に晒されている他の民主主義国家にとりましては最悪のシナリオとなるかもしれません。日米印豪が強化してきた中国包囲網はアメリカの離脱により急速に弱体化し、その対中抑止力も著しく低下するのは避けられないからです。また、中国は、半導体をはじめとした高性能部品もアメリカから自由に入手できますので、人民解放軍のハイテク化にも拍車がかかることでしょう。バイデン政権の誕生は、日本国最大の危機とされる理由も、バイデン氏と中国との利権を介したダークな繋がりから判断すれば、同氏の唱える‘国際協調主義’とは、第一のタイプである可能性が高いからです(アメリカの財界がバイデン氏を積極的に支持した理由では…)。

 

 もう一つのヴィジョンは、国際法秩序の維持を最優先とするものです。同ヴィジョンに基づけば、中国の如き国際法を無視する無法国家、かつ、軍事大国は、複数の国家が団結して立ち向かうべき国家となります。つまり、アメリカは、軍事的にはこれまで構築してきた対中包囲網をより強化すると共に、経済分野にあっても、中国とのデカップリング政策も友好国との協力の下で進められるべき政策となるのです。このヴィジョンでは、日本国は、日米同盟における役割分担の自国負担分の比率が増すとはいえ、中国に対する抑止力、並びに、有事に際しての実戦力を高めることができます。デカップリングに伴うサプライチェーンの再編過程にあって若干のコストが掛かろうとも、長期的に見れば、中華経済圏に飲み込まれるリスクを回避できますし、共産主義の政経一致体制の下で日本国を支配しようとする中国の魔の手から逃れることもできます。

 

 以上に述べましたように、‘国際協調主義’には二つのヴィジョンが混在しているのですが、バイデン氏の主張が第一のヴィジョンであるとしますと、同候補の当選は、まさしくオバマ政権時代の悪夢の再来となることも予測されます。今般の大統領選挙の結果が確定するまで時間がかかるのでしょうが、‘国際協調主義’を以ってバイデン氏に期待を寄せる人々は、一体、どちらのシナリオを想定しているのでしょうか。

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不正選挙疑惑はアメリカ国民が訴訟を起こすべきでは?

2020年11月09日 12時57分52秒 | アメリカ

 アメリカ大統領選挙は、開票結果としての票数としてはバイデン氏がトランプ大統領を上回ったものの、不正選挙疑惑は未だに燻っているようです。その一方で、露骨なまでにバイデン氏を支持してきたメディアが一斉にバイデン氏当選を既定路線化する一方で、トランプ大統領に対しては、共和党幹部や家族が敗北を認めるよう説得していると報じられています(もっとも、同報道は、本人たちが否定しており、フェイクニューズらしい…)。

 

 アメリカの大統領選挙では、勝者側の勝利宣言と敗者側の敗北宣言の両者が揃った時、その勝敗が確定するというのが慣例なそうです。一方、票数においてバイデン氏を下回ったトランプ大統領は、不正選挙を主張し、法廷闘争に訴える構えを見せております。この慣例に従えば、現状では、未だに大統領選挙の決着はついていないことになります。しかしながら、仮に、上述したように同大統領が周囲の説得に応じ、敗北を宣言するとなるとしますと、バイデン政権の誕生は確定することになるのですが、この慣例、民主主義に関する重大な問題を投げかけているように思えます。それは、たとえ不正選挙の結果であったとしても、数字上の敗者が個人的に敗北宣言に応じれば、勝者に正当性が生じるのか、という問題です。

 

 メディアを含む民主党側が描く今後のシナリオとは、内外からの圧力によってトランプ大統領に法廷闘争を諦めさせ、同氏の敗北宣言を以ってバイデン氏による大統領就任を確定させるというものなのでしょう。しかしながら、トランプ大統領に票を投じた凡そ半数のアメリカ国民、否、民主党支持者をも含めて、今般の大統領選挙における民主党側による不正選挙を疑う全ての人々からしますと、トランプ大統領の敗北宣言は、こうした人々への裏切り行為ともなります。仮に、トランプ大統領が、民主党側に不正選挙疑惑がありながらそれを不問に付し、バイデン大統領の誕生をあっさりと認めるとなりますと、法廷闘争を期待していた国民の多くは憤懣やるかたなくなるからです。トランプ大統領にも裏切られた気持ちになりましょうから。

 

 不正選挙疑惑に蓋をしたままでの新大統領の誕生では、アメリカの民主主義は崩壊の危機に瀕することになるのですが、同危機を脱する方法はあるのでしょうか。そこで考えられる案は、アメリカ国民自身が選挙の不正の有無を確認するために訴訟を起こすというものです。訴訟好きのアメリカ人の国民性を考慮しますと、集団訴訟の形態となるのかもしれませんが、民主主義とは制度的な保障があって初めて実現しますので、国民にも、不正選挙を厳しくチェックし、民主的制度を維持する責任があります。民主主義国家にあって国民が有する参政権には、普通選挙における被選挙権や選挙権や司法にあって公正な裁判を受ける権利や陪審員となる権利といった諸権利のみならず、広義には不正選挙に関して裁判に訴える権利も含まれるはずなのです。

 

 熱狂的なトランプ支持者による暴動を予測する報道もありますが、暴力よりも法廷の場で疑惑の真偽を確かめる方が、民主主義国家に相応しい解決方法のように思えます。不正選挙に関する訴訟権は、大統領の専権ではないのですから。そして、やはりトランプ大統領は、アメリカを護る責務を担う大統領として、国民に嘘偽りのない事実を知らせ、民主主義を救うべく法廷闘争に訴えてこそ、真にアメリカを偉大ならしめるのではないかと思うのです。


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各国首脳の祝意―バイデン氏の当選は確定していないのでは?

2020年11月08日 10時50分27秒 | 国際政治

 メディアの報じるところによりますと、膠着状態が続いていたアメリカの大統領選挙は、激戦州であったペンシルバニア州においてトランプ大統領を上回る票数を得たことから、バイデン氏は、本日、11月8日には、勝利宣言に臨むそうです。しかしながら、今般の選挙では不正選挙疑惑が持ち上がり、敗北宣言を拒否しているトランプ大統領も法廷闘争の意向を示していますので、選挙人の獲得数のみでは勝敗が決せられたとは言い切れない状況にあります。ところが、早々に、日本国の菅首相をはじめ、ドイツのメルケル首相やカナダのトルドー首相、さらには、イギリスのジョンソン首相など、各国首脳がバイデン氏宛てに祝電を送っているというのです。

 

 既成事実化は社会・共産主義者やリベラルの常套手段ですので、バイデン陣営が、自らの陣営が獲得した‘数字’を以って、即、勝利を宣言することは、既に予測されていたことでした。ですから、バイデン氏による勝利宣言自体は驚くことではないのですが、首を傾げてしまうのは、各国首脳の反応です。不正選挙疑惑、並びに、トランプ大統領の訴訟意向については既に情報を得ていることでしょうから、司法における判断を待ってからでも遅くはなかったはずです。否、法廷闘争において不正行為が立証され、バイデン陣営が敗訴すれば、早々と祝意を表明したことを悔いることにもなりかねないのですから。

 

 また、アメリカ国民の凡そ半数がトランプ大統領に投票し、かつ、民主党支持者を含めて国民の多くが不正選挙を疑う最中にあって、海外の首相がバイデン氏の当選を認めたとなりますと、内政干渉と受け取られかねない恐れもあります。まるで、外堀を埋められているような印象を受けるからです。そして、あたかも申し合わせたかのように相次いで各国の首相が祝意を表明したとなりますと、真にアメリカにおけるバイデン政権誕生を望んでいるのは、アメリカ国民ではなく、海外勢力ではなかったのか、という疑いさえ生じることとなりましょう。開票の終盤に至り、バイデン氏優勢の報道を受けて真っ先に米中友好に向けた好意的な論評を公表したのは中国でしたが、バイデン氏の背後には、グローバル金融や大手IT企業、並びに、全世界のメディアのみならず、各国政府をもコントロールする国際勢力の影も見え隠れするのです。これまでの米大統領選挙になく、各国首相の祝意報道が大きく報じられているところにも不自然さが漂います。

 

 とりわけバイデン氏につきましては、認知症を患っているとする指摘に加え、選挙戦後半には副大統領時代における中国利権スキャンダルなども発覚しております。不正疑惑もありますので、今後ともダーティーなイメージが付き纏うこととなり、アメリカ国民から全幅の信頼を得ることは困難となりましょう。メディアは、バイデン氏勝利に歓喜する支持者の映像ばかりを積極的に報じていますが、その裏には、同報道に落胆し、あるいは、苦々しい思いをしている半数の国民がいますので、首相等による拙速な祝意表明は、必ずしも相手国国民に好印象を与えるとは限らないのです。

 

そして、自身の利益のためには独裁国家、かつ、人権弾圧国家である中国とも裏で手を結ぶ大統領が誕生するとなりますと、警戒すべきは、日本国民を含め、首脳がバイデン氏に祝意を送った諸国の国民です。バイデン氏支持を表明したことは、大手を振って中国との関係強化、あるいは、対中融和政策へと転じる可能性が高くなるからです。菅首相は、日米同盟の強化に言及していますが、その真意は、両国が結託して中国包囲網を解いてしまうことを意味するかもしれません。

 

 法廷闘争の道も閉ざされる、あるいは、不正選挙疑惑が有耶無耶にされるとしますと、今般の大統領選挙における‘勝者’とは、中国、否、同国をも裏から操る巨大な国際組織であったという、民主主義にとりましては悲劇的な顛末となりましょう。この‘勝者’は、バイデン氏のみならず、脅迫のために各国首脳や重要人物たちのスキャンダル情報をも掴んでいるかもしれません。こうした払拭し難い疑念や疑惑を持たれないためにも、各国首脳は、慎重に司法判断を待つ姿勢を貫くべきではなかったかと思うのです。


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‘神聖なる民主的選挙’は疑ってはならない?

2020年11月07日 11時39分43秒 | アメリカ

勝者の地位が宙に浮いてしまった今般のアメリカ大統領選挙は、民主主義について重要な問題を提起しているように思えます。トランプ陣営とバイデン陣営の両者は、国民を前にして全く異なる見解を示しているからです。

 

 トランプ大統領にとりまして、今般の大統領選挙の結果が示す数字は受け入れがたいものです。何故ならば、自身の票数を上回るバイデン陣営の投票数は、郵便投票をはじめとした不正選挙によるものである可能性が濃厚であるからです。メディア等では、‘不正の証拠が示されていない’としてトランプ大統領の主張を‘言いがかり’と見なしたり、‘往生際が悪い’として揶揄する風潮も見られますが、ネット上では、不正の証拠とされる動画や情報が飛び交っております。全てがフェイクニュースであるとも思えず(もちろん、真偽の検証が必要…)、終盤における不自然な票の動きを見ても全く根拠がないわけでありません。少なくとも、何れの民主主義諸国にあっても選挙における不正行為は頻繁に発生しており、犯罪として取り締まりの対象にされております。規模の大小に拘わらず、不正選挙は、現実には存在しているのですから、トランプ大統領が、不正選挙の疑いを提起することは、むしろ、民主的制度を護るための当然の行為であったとも言えましょう。

 

 にもかかわらず、民主党バイデン候補は、こうしたトランプ大統領の不正に対する懐疑心に対して痛烈に批判しています。民主的選挙の結果を疑うことは、選挙の神聖性に対する冒涜であると…。選挙は、民主的な制度の下で実施されたのだから、その結果に疑いを挟むのは、民主主義に対する冒涜行為と見なしているのです。‘神聖ゆえに疑ってはならない’とする態度は、他者に対する思考の抑圧や束縛を意味しますので、どこか、思想統制的な響きがあります。宗教であれば、神や教祖の存在を‘疑ってはならない’ということになるのでしょうし、世俗の全体主義体制や権威主義体制であれば、絶対的な指導者に対しては疑うことなく無条件に服従せよ、ということになるのでしょう。バイデン候補にとりましては、「民主的選挙」という名のもとで行われた選挙の結果としてカウントされた票数こそ、何人も疑ってはならない‘神聖なる数字’であり、この観点からしますと、トランプ大統領は民主主義の冒涜者となるのです。

 

 近代合理主義とは、神の存在をも人の理性的思考の対象に含めた懐疑主義から始まりますが(もっとも、必ずしも神を否定したわけではない…)、今日の政治の世界を見ますと、進歩派を自称してきた社会・共産主義者やリベラルと称されている人々の方が、余程、前近代的な思考の持ち主であり、時間軸からしますと退行現象を示しているようにも見えます。不正選挙はあらゆる選挙に付き物であるにも拘わらず、民主主義の神聖性の名の下で、不正の存在までをも否定しているのですから。それはもはや、理性を離れた別の世界に足を踏み入れていることとなりましょう。

 

 仮に民主的選挙結果に対して‘神聖’という言葉を付すならば、民意が正確に表出される完全なる制度の下で、一切の不正行為が排除された上で実施された選挙の結果に限られるはずです(人類は、未だにその段階に達していない…)。不正行為の結果であれば‘神聖’なはずもなく、否、不正行為を働いた側こそ、民主的選挙制度を冒涜したことになりましょう。

 

このように考えますと、バイデン陣営が不正選挙を疑うトランプ大統領に対して、何らかの反応や対応策を示すならば、それは、自らの陣営による不正行為はなかったことを立証する、あるいは、調査に協力することにあったのではないでしょうか(バイデン陣営は、不正票であれ全票のカウントを求めこそすれ、不正疑惑については口を噤んでいる…)。今後、法廷では不正選挙の立証責任はトランプ陣営に求められ、何らかの証拠も提示されるのでしょうが、バイデン陣営も、積極的に自らの潔白を示さないことには、国民の同陣営に対する疑いも深まるばかりとなりましょう。

 

そして、仮に、トランプ大統領のみならず、同大統領に一票を投じたアメリカ国民の凡そ半数の人々からの疑惑に対して誠実に回答することなく、‘神聖性’、あるいは、‘票数が絶対’の一点張りで切り抜けようとするならば、仮にバイデン政権が発足したとしても、常に国民から正当性を疑問視され、猜疑心に満ちた目で見られることになりましょう。バイデン陣営に見られる前近代的な思考傾向が全体主義との親和性を示す今、それは、アメリカが誇ってきた自由な精神、並びに、真の意味における民主主義の危機でもあると思うのです。


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法廷闘争こそ民主主義の証では?

2020年11月06日 12時02分19秒 | アメリカ

 本日の日経新聞朝刊の第一面には、混迷を深めるアメリカ大統領選挙に関して、「問われる民主主義の真価」と題する記事が掲載されておりました。この見出しを目にした瞬間、すっかりバイデン陣営の不正選挙疑惑を反民主的行為として批判しているものと早合点したのですが、内容を読んでみますと、その倒錯ぶりに愕然とさせられてしまいました。この記事、バイデン陣営を糾弾しているのではなく、強権的な態度を以って選挙結果に言いがかりを付けているとして、トランプ大統領側を反民主主義的であると決めつけているのです。

 

 仮に、アメリカが、民主主義国家ではなく、中国のような共産党一党独裁国家であれば、司法が不正選挙の有無を判断することは不可能であったことでしょう。そもそも、権力分立が否定され、司法が独立していない独裁体制では、普通選挙という制度そのものが存在していないのですが、百歩譲って、たとえ選挙というものが実施されていたとしても、その結果に異議を唱えることは許されないのです。如何に露骨で酷い不正が行われ、選挙結果が捻じ曲げられていたとしても…。

 

 今般のアメリカの状況を見ますと、民主党のバイデン陣営、並びに、その応援団であるマスメディアの方が、余程、共産主義国家、あるいは、全体主義国家の行動様式に近いように思えます。バイデン候補は、既に政権移行への準備を表明し、‘我々が勝者、間違いない’として事実上の勝利宣言を行っていますし、日経新聞社のみならず日本国内のマスメディアの大半を見ましても、正式に確定しているわけでもないにも拘わらず、バイデン候補の勝利を既成事実として報じているからです。常々、共産主義者やリベラル派の人々は、暴力革命をはじめ、既成事実化を以って人々に自らの意思を押し付けてきました。他の多くの人々の意見や倫理・道徳との合致、さらには正当性など全く問題にせず、先に‘事実’を造り出した方が‘勝ち’であると考えているのです(‘事実’は捏造であっても構わない…)。バイデン陣営にとりましては、たとえ不正行為の結果としての数字であっても、‘数字の上では勝者’という‘事実’が大事であり、‘目的のためには手段を択ばず’なのでしょう。

 

 一方、誰から見ましても、今般のアメリカ大統領選挙には不正選挙を疑われて然るべき点が多々見受けられます。おそらく、日本国内のネット上でも騒動となるぐらいですから、アメリカの民主党支持者であっても、僅かでも常識や良心があればバイデン陣営の票数を疑うことでしょう。郵便による投票自体が不正の温床になりやすいのに加え、州によっては、トランプ陣営優勢が伝えられながら開票終盤に至って突然に大量のバイデン票がカウントされるとなれば、‘疑うな’と言う方に無理があります(この懐疑心さえ許さないとする態度が共産主義的で恐ろしい…)。政治的スタンスの違いに拘わらず、一般的な人の常識的、かつ、合理的な認識力からしましても、明らかに異常と見なされる現象が観察されているのですから(アメリカの郵便投票制度は、郵便書留制度であり幾重にも署名がチェックされるので、少なくとも‘水増し’は不可能とする指摘があるものの、公開された開票所の映像からは丁寧な署名の照合作業が行われているようには見えず、また、州によって投票方法も違うのでは…)。

 

 幸いにして、アメリカは、権力分立に基づいて建国された民主主義国家ですので、大統領選挙にあって不正行為の疑いがあれば、司法に判断を委ねることができます。独裁国家にあっては疑うことさえ許されませんが、民主主義国家では、同体制を支える主要な基盤となる選挙にあって不正行為があれば、体制そのものが破壊されてしまいますので、中立・公平な立場にある司法機関が、厳正、かつ、徹底した捜査・調査を実施し、証拠に基づいて事実を確認し、そして法律に照らして判断することができるのです。法廷は公開されますので、全ての国民が、不正の有無を確かめることもできます。こうした民主主義体制の仕組みは、一党独裁体制よりも遥かに優れており、人類の叡智の結晶とも言えましょう。

 

 アメリカが、司法による‘審判’の道が保障されている民主主義国家であるからこそ、トランプ大統領は法廷闘争に訴えることができるのであり、この選択を非民主的として非難するのは、あまりにも的外れのように思えます。法廷闘争こそ、民主主義国家の証でもあるのですから。日本国も、自由で民主的な国家なのですから、不正疑惑がある点を誠実に報道した上で、選挙結果は未定であるとし、法廷における公平・公正な決着こそ支持すべきではなかったかと思うのです。

 

*最初の投稿時には、週によっては登録者数を超える投票者数があった旨を記しましたが、この情報は正確ではないとのことですので削除しました。

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不可解なバイデン候補優勢

2020年11月05日 12時21分53秒 | アメリカ

11月3日が投票日となったアメリカ大統領選挙は、勝敗を決することができない昏迷状態が続いております。不自然な票の動きから不正選挙疑惑も真実味を帯びてきており、最終的な決着は連邦最高裁判所の判決に持ち込まれることも予測されます。そして、多くの人々が今般の選挙にあって訝しく感じるのは、何故、かくもバイデン候補の得票数が多いのか、ということではないかと思うのです。

 

 実のところ、仮に、バイデン候補がオバマ政権の副大統領の職にあったキ時期に、今般の中国スキャンダルが発覚すれば、間違いなく辞任に追い込まれたことでしょう。副大統領という重職にあって外国政府から利権の提供を受けたのですから、議会にあって弾劾裁判に付されてもおかしくはなかったはずです(退任後の現下でも刑事罰は問える…)。真偽のほどは不明ですが、バイデン候補は、CIAの情報を中国側に漏らしたとも、あるいは、南シナ海や尖閣諸島問題にあって中国に譲歩したとも囁かれています。同情報がフェイクニューズであったとしても、オバマ政権時代における対中融和策が中国の無法国家化を加速させ、国際法秩序を危機に晒したのですから、現実のオバマ政権は、そのイメージとは逆に平和に対する罪があったと言わざるを得ないのです。

 

 今般の大統領選挙にあって、バイデン前副大統領が民主党の候補者として立候補し得たのも、中国スキャンダルの情報が隠されていたからに他なりません。言い換えますと、弾劾によって職を去るべき人物が、堂々と大統領選挙に立候補していることとなり、この現象は、不可解な異常事態としか言いようがないのです。

 

また、バイデン候補の圧倒的な優勢を報じ続けてきたマスメディアは、二期目の選挙は現職が有利とされてきたにも拘わらず、トランプ大統領が劣勢となった理由としてコロナ対策を挙げています。しかしながら、たとえ、民主党政権であったとしても、迅速、かつ、効果的に感染拡大を抑えられたのかどうかは疑問なところです。少なくとも、トランプ政権は、日本国よりも早い時期に中国からの渡航を禁じています。一方、親中派である民主党であれば、日本国政府のように中国に対して‘忖度’したかもしれませんし、中国に対する責任追及も曖昧なままであったことでしょう。あるいは、厳しすぎる対策により、アメリカは、失業者で溢れたかもしれません。メディアの説明は、新型コロナウイルスの発生地が中国武漢だけに、説得力に乏しいのです。

 

中国とのデカップリングを目指すトランプ政権の再選を嫌ってか、中国の習近平国家主席は、早々に、バイデン候補の対中関税緩和策に呼応するかのように、今後10年間で22兆ドル(凡そ2300兆円)に輸入を拡大させる方針を示しています。この巨額の目標輸入額にあってアメリカからの輸入品が含まれていか否かは不明ですが、バイデン政権が誕生すれば、半導体を含め、様々なハイテク製品の中国向け輸出が再開されるかもしれません。輸出再開により、中国は、軍事、並びに、経済の両面において、より速いスピードでアメリカに追いつき、追い越すことでしょう。しかも、22兆ドル分の貿易決済通貨は、米ドルではなく、人民元、否、デジタル人民元となるかもしれないのです。

 

常識的、かつ、合理的に判断すれば、アメリカの有権者は、バイデン候補に一票を投じることに躊躇するはずなのですが、かくも多くの人々が同氏を支持したとしますと、何か別な力が働いたのではないかとする疑いがもたげてきます。不正選挙疑惑についても、かつての民主党のイメージからすれば、誰もが‘民主党ならばあり得ない’として一笑に付したのでしょうが、中国スキャンダルなど、民主党のダーティーな部分が明るみになるにつれ、‘民主党ならばあり得る’に人々の反応も変化してきているのかもしれません。不自然な票の動きなど、疑われるだけの正当な根拠もあるのですから。

 

何れにしましても、不正選挙疑惑が払拭されない限り、バイデン候補は、大統領としての正当性を得ることはできないことでしょうし、国民も開票結果には納得しないことでしょう。この問題には、公平中立な司法機関による徹底的な調査が必要であり、それまでの間、大統領選挙の結果が確定しないとしても、それは致し方ないのではないかと思うのです。


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米大統領選挙に見る民主主義と投票制度の問題

2020年11月04日 11時23分56秒 | アメリカ

 4年ごとに実施されるアメリカの大統領選挙は、同国のみならず全世界の運命をも左右しますので、別格というほどに注目度の高い選挙です。投票日は11月3日に設定されているものの、今般の選挙は、民主主義国家における投票制度の問題を浮き彫りにした選挙でもあったと言えましょう。

 

 民主的選挙の結果の正当性は、偏に選挙制度にかかっています。選挙人名簿の作成、あるいは、有権者登録から投票用紙の送付、投票、そして開票・集計に至るまでの各作業段階において、一寸のミスやエラー、並びに、不当行為は許されず、全てが見事なまでに正確でなければならないのです。国民一人一人の自由意思による政治的な選択が票として正確にカウントされなくては、民主的制度はその意味をなさないのです。

 

 しかしながら、今日の民主的選挙制度は100%正確である、と言い切れる人は、何れの国にあっても少ないのではないかと思います。不正選挙と言えばロシアの名が上がりますが、自由主義国であっても、多くの国民が自国の選挙制度を疑っています。その一方で、政府側を見ますと、自由主義国の政府であって、長足の発展を遂げたITテクノロジーを国民管理システムとして導入しようとしながら、選挙制度については正確さを極めようとする姿勢には乏しいと言わざるを得ません。戸籍、住民登録、出入国管理といった個人管理の分野や給付金の支給といった行政サービス分野にあっても導入可能なほどにデジタル化の信頼性が高ければ、投票システムもまたデジタル化し得るはずです。しかしながら、投票システムについては、案外、旧態依然とした方法が維持されているのです。

 

 IT先進国であるアメリカを見ましても、期日前投票にあって郵送による投票が導入されています。多くの人々がこの方法を選択することとなりましたが、投票用紙に自筆で記入して投じるという基本的な方法には変わりはありません。それどころか、選挙戦の最中にあって議論されたように、郵送による投票は、正確さという点からしますと、投票所における期日前投票以上に難があります。例えば、(1)投票用紙への記入に際して本人確認が難しい(全米有権者を対象とした筆跡鑑定は困難)、(2)郵便ポストは投票箱ではないので、有権者は、自らの票が確実に開票所に届いたのか確認ができない、(3)本人確認が困難であるため、投票用紙の偽造が容易である、(4)第三者(対立政党、外国勢力、国際組織など)による組織的な郵便事業への介入がありえる(実質的な選挙への介入であり、郵送過程における意図的な投票用紙の紛失や水増し)…といった問題点を挙げることができます。つまり、不正選挙が起こりやすいという条件が揃っているのです。

 

 郵便投票のみならず、アメリカでは、ドライブスルーの投票所における票や開票日後に届く在外投票の有効性なども問われており、不正選挙に対する警戒心は高まる一方なのです。そして、こうした投票システムに対する両陣営、並びに、国民の不信感は、アメリカの民主主義を揺るがしており、報道によりますと、両陣営とも、敗北を受け入れない相手陣営の熱狂的な支持者による暴動を恐れているというのです。

 

 最も正確性の高い選挙の投票方法とは、全ての有権者が公開の場で投票用紙に記入すると同時に、その場で、即、票をカウントして表示する方法です。投票箱を用いないこの方法ですと、一票を投じた有権者本人が自らの選択を確認できますし、投票から開票までの全てが衆人の前に公開されますので、複数の人によって結果は常にチェックされることになります。選挙に関しては、案外、アナログな方法の方が正確性を確保することができるのかもしれません(もっとも、デジタル投票も、不正選挙の可能性を完全に排除できるのであれば、導入すべきなのでしょうが…)。

 

問題は秘密投票ではないことですが、政治的選択が秘密にすべき事柄であるのかどうかは、今日にあっては疑問なところです。何故ならば、政策や政党への支持は隠すべき事でもありませんし、多様性が尊重されるべきならば、政治的意見や支持政党の多様性こそ最大限に尊重されるべきであるからです(アメリカ国民の多くは、ステッカーやグッズなどで自らの支持を表明しているのでは…)。自由で民主的な社会であれば、自らの政治的スタンスを明確にしたり、政治について自由に討論することは至極当然のことであるべきなのです。

 

 法廷闘争も視野に入りますので、選挙結果が確定するには、相当の時間を要するとも報じられています。不正選挙疑惑が政権の正当性を揺るがし、民主主義さえも危機に陥れている今日、不正を完全に封じ、正確さを極めるような選挙制度こそ必要とされているのではないでしょうか。現行の選挙方法が維持される限り、今後とも、同様の問題を繰り返すこととなるのではないかと思うのです。


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アメリカ大統領選挙が混乱する理由とは―‘チャイナ・ファクター’の問題

2020年11月03日 12時30分19秒 | アメリカ

 本日11月3日は、全世界が注目するアメリカ大統領選挙が実施される日です。期日前投票が9000万票を超えているとはいえ、投票所における直接的な投票が趨勢を決することとなるでしょう。そして、今回の選挙程、米中対立の背後に潜むアメリカ国内の構造的な問題を明らかにした大統領選挙もなかったのかもしれません。

 

 米ソ冷戦期にあっては、イデオロギーにおいて民主党が社会・共産主義にシンパシーを示しつつも、共和、民主両党とも、ソ連邦との対峙は議論の余地のない共通のスタンスでした。第三次世界大戦の瀬戸際に立たされたキューバ危機も、民主党のケネディー政権にあって起きた事件です。キューバ危機後の米ソデタントはどちらかと言えば共和党政権時代に推進されつつも、ソ連邦を敵国と見なす基本姿勢は貫かれていたのです。

 

 一方、今般のアメリカ大統領選挙において焦点として浮上したのは、米民主党と中国との間の構造的な利権関係です。中国は、鄧小平氏による改革開放路線以降、自由主義諸国に自国の市場を開放すると共に、先進国から資本、製造拠点、先端技術などを貪欲に招き入れてきたのですが、このプロセスにおいて、米中両国、否、中国共産党と米民主党との間に利権を介した強固な繋がりが形成されているのです。昨今、アメリカのみならず、全世界を驚愕させたバイデン親子の醜聞は、まさに巨額の中国利権が絡んでおり、同親子は、自らの私益のために国権を私物化したと言っても過言ではないです。おそらく、民主党幹部の大半が中国利権を隠し持つ、あるいは、不正な資金提供を受けているではないでしょうか。

 

 中国共産党と民主党が利権を共有する状況下にあっては、中国経済が成長するほど米民主党側の懐に巨額のチャイナ・マネーが濡れ手に粟の如くに転がり込んでくることなります。加えて、米民主党には、中国市場への進出チャンスを得たい金融界や米企業群も‘訪中団’を結成し、中国利権を共有することとなったのでしょう。クリント政権やオバマ政権下において中国が急速な経済成長を遂げたことを考え合わせますと、アメリカの政界も財界もチャイナ・マネーに相当程度に汚染され、大手メディアやIT大手もまた懐柔されていたものと推測されるのです。この結果、中国は、常設仲裁裁判所の判決に対して無視を決め込むと共に、南シナ海の軍事拠点化を止めようともせず、際限のない軍拡に走ることとなったのでしょう。

 

もっとも、米中関係において最初に‘井戸を掘った’のはキッシンジャー元国務長官であり、米中国交樹立に向けて動き始めたのは共和党政権時代のことです。中ソ対立やベトナム戦争の泥沼化を背景とした‘敵の敵は味方’の論理に基づくものであったとはいえ、この頃から両国間では、既に水面下では中国の改革開放路線に向けての協力関係が模索されていたのかもしれません。少なくとも、ニクソン政権からブッシュ政権に至るまでの間に共和党にあっても中国利権に与った政治家が少なくなかったはずです。しばしば、軍事大国中国は、アメリカ民主党が育てたと評されるものの、チャイナ・マネーは、民主・共和両党に亘って浸透していたと推測されるのです。この時期、軍事的にも経済的にも弱小国に過ぎなかった中国はソ連ほどには警戒されてはおらず、中国の脆弱性が、米国民の大半が気が付かぬうちにアメリカ国内に‘中国利権集団’が形成されてしまった背後要因なのでしょう(もちろん、同利権集団は他の先進諸国にも存在し、国境を越えて連携する国際組織でさえあるかもしれない…)。

 

そして、アメリカ政界にあって珍しくも中国との間に柵がなく、中国色が比較的薄かったのが、トランプ大統領であったのかもしれません(もっとも、中国ではなく、ロシアとの関係が疑われましたが…)。然したる中国利権を持たない‘異端児’であったからこそ、有権者に向けて反グローバリズムを訴え、大胆な対中強硬政策を打ち出すことができたのでしょう(グローバリズムと中国とは半ば一体化している…)。

 

アメリカに内部化された中国脈の利権集団の存在こそ、今般の大統領選挙が‘アメリカの分断’を伴う混乱が生じた原因の一つとなっているのかもしれません。何故ならば、米中の対立構図は、国内におけるトランプ陣営とバイデン陣営との間の写し鏡となるからです。‘チャイナ・ファクター’は、外政内政両面における対立軸なのです(米ソ冷戦時代における’ソヴィエト・ファクター’は専ら外政問題…)。そして、マスコミ支配の原資ともなる資金力において圧倒的にバイデン陣営が優っていたのも、米国内の‘中国利権集団’が‘バイデン応援団’と化しているからなのでしょう。そして、今般のアメリカ大統領選挙は、‘中国利権集団’が共産主義、あるいは、全体主義とも容易に手を結ぶ‘マネー・ファースト’の集団である点を考慮しますと、民主主義の危機をも示しているのではないかと思うのです。


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‘隠れトランプ’を造り出したリベラルの罪

2020年11月02日 12時54分23秒 | アメリカ

 アメリカの大統領選挙は遂に明日、運命の投票日を迎えます。時期的に選挙戦がコロナ禍と重なったこともあり、一般的には現職有利とされながらも、トランプ大統領は苦戦を強いられ、マスメディアも揃って民主党のバイデン候補を報じる状況となりました。ここに来て、バイデン氏の醜聞が拡散したことにより状況が一転しましたが、前回から指摘されているのが、‘隠れトランプ’の存在です。

 

 日本人の多くは、アメリカ人とは自らの意見や考えをはっきりと述べ、自由闊達に議論する人々とするイメージを抱いています。ところが、このイメージに反して、今日、自らの本心を隠す人々が増えているというのです。‘隠れトランプ’とはこのような人々であり、周囲の反応を恐れてトランプ支持を公には表明できない人々を意味しています。

 

 ‘隠れトランプ’となる理由は、一様ではないようです。第一の理由は、‘知的エリート=リベラル=フェアな社会を目指す正義感に溢れた人々’とする構図がアメリカ社会に染み付いている点を挙げることができます。同構図の社会全体への浸透には、メディアや教育界による意図的な誘導があったのでしょう。知的エリートであると自負している人々、あるいは、他者から‘フェアな市民’であると見なされたい人々は、トランプ支持を表明し辛いというのです。アメリカのリベラルは、人種差別反対運動を主導してきましたこともあり、差別主義者と見なされたくないとする心理的な圧力も働くのでしょう。このため、こうした人々は、世論調査ではバイデン候補に投票すると回答し、同僚や友人達に対してはバイデン支持の同志を装いながら、実際にはトランプ候補に一票を投じるのです。否、実のところ、トランプ大統領は、上記の構図の欺瞞を初めて暴いたからこそ大統領に就任したとも言えるのであり、むしろ、‘隠れトランプ’の人々の方が、未だに同構図から抜け出せないでいるのかもしれません(バイデン親子に見られるように、現実におけるリベラルの腐敗や堕落は甚だしい…)。

 

 その一方で、もう一つの理由として指摘されているのは、暴力や脅迫です。この問題は、世論調査よりも、社会一般において観察される現象なそうです。例えば、職場や学校で、トランプ支持を表明するような服装をしたり、ステッカーを張ったりすると、‘そのようなことをすれば、身の安全は保証できない’と警告してくる人が現れるというのです。BLM運動が略奪や放火を伴う暴動と化したように、近年、リベラル=スマート=非暴力な知的エリートとする上述の構図が崩壊してきています。フランス革命であれロシア革命であれ、社会・共産主義者は暴力に訴えており、必ずしも平和的な手段を絶対視しているわけではありません。そして、これらの革命が恐怖政治や弾圧体制を帰結したことは、歴史が証明するところです。これまで隠されてきたリベラルの暴力主義的な一面が表面化し、今般、‘隠れトランプ’を生み出した原因となっているとも言えましょう。

 

 このように考えますと、‘隠れトランプ’を大量に出現させている主たる原因は、民主党を中心としたリベラルの側にありそうです。そして、それは、左派特有の独善、並びに、それに基づく抑圧、暴力、排除の是認に起因するものであり、仮に、アメリカが真に自由で民主的な国家であるならば、‘隠れトランプ’なる人々は存在するはずもないのです。アメリカ国民が、臆することなく、また、他者から何らの圧力を受けることなく、自らの政治的な意見や選択を自由かつオープンに表明し得てこそ、‘自由の国、アメリカ’であるはずなのですから。この点、アメリカの自由や民主主義を内部から侵食し、‘隠れトランプ’を生み出したリベラルにこそ罪があるのではないかと思うのです。


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黙示録と現代政治-命運を握るのは情報

2020年11月01日 12時42分53秒 | 国際政治

 大統領選挙の投票日である11月3日を目前にして、アメリカでは、トランプ大統領の逆転勝利を予測する報道も現れ始めているそうです。前回の選挙でも予測を外した前科がありますので、その真偽は別としても、これまで、民主党のバイデン候補が勝利を確実にしたとする報道を続いてきたマスメディアも、国内の空気の変化に抗しきれなくなったのでしょう。

 

 おそらく、民主党側としては、たとえ現実にはトランプ大統領が優勢であったとしても、アメリカ全州におけるバイデン優位を大々的に喧伝し、期日前投票を合わせた全ての票数においてバイデン票が数字の上ではトランプ票を上回っていれば(おそらく、郵便投票などによる不正投票も含まれているかもしれない…)、アメリカ国民が、内心にあって疑いながらも、この結果を受け入れると踏んでいたのでしょう。日本国内でも、どのように考えても国民多数から支持を集めているとは思えない政治家を、マスメディアが‘国民的人気’として持ち上げる不思議な現象が起きています。たとえ実態とはかけ離れていたとしも、こうした‘人気幻想’を醸し出しておけば、同調圧力が働いて、国民を納得させてしまう効果が生じると期待しているのでしょう(‘自分は支持していないけれども、他の皆が支持しているならば仕方がない’という諦め…)。

 

 仮に、ある重大情報が暴露されていなければ、この作戦は、バイデン陣営の思惑通りに実現したかもしれません。この隠されてきた情報を国民に広く知れ渡るに至ると、大統領選挙の行方が、一変することとなったからです。その隠されてきた情報とは、バイデン候補と中国との利権を介した汚職に関する醜聞であり、バイデン候補がアメリカ国民のみならず、全人類の裏切り者であったことを知らしめたのです。‘人気がある’とされるオバマ前大統領が梃入れのためにバイデン候補の応援演説に駆け付けたとしても、バイデン人気を引き上げるどころか、地獄への道連れとなったかもしれません。オバマ政権時代にあって副大統領を務めたバイデン候補が現職中に私腹を肥やしていたとすれば、実弟の姻族が中国人であるオバマ大統領にも疑惑が飛び火することとなるからです。

 

 賄賂や利権のばらまきは、習近平国家主席が‘トラもハエも叩く’とするスローガンを掲げて腐敗の撲滅に乗り出したように、中国に古くから根付いてきた政治文化でもあり、配分型のシステムである共産主義体制とも高い親和性があります。アメリカのみならず、日本国を含めて中国と関係を有する政治家や政党は、おそらく、中国利権によって繋がっているのでしょう。政治信条として共産主義に対立する立場でありながら共産主義国家中国と仲が良いという、矛盾に満ちた態度をとる保守系の政治家の背景には、おそらく、巨額の中国利権があるものと推測されます。あるいは、両者の背後には、その元締めとなる国際勢力が潜んでいるのかもしれません。

 

 何れにしましても、今般の大統領選挙ほど、情報というものの重要性を人々に知らしめた出来事はなかったように思えます。一つの重大情報が、もはや誤魔化しようもなく、情勢をひっくり返してしまったのですから。そしてそれは、‘人々を真に救うのは事実の暴露である’とする、全人類が知るべき真実の一片を示しているのです。しばしば、‘知らない方が幸せ’、あるいは、‘知らない方がまし’という言い方もされますが、逆は必ずしも真ならず、知らなければ決して救われないこともあります。新約聖書の最後を飾るのは「黙示録」ですが(原意としては‘暴露’を意味する)、この聖書の結末は、どこか今日の政治状況に鑑みても‘黙示的’に感じられるのです。

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