らびおがゆく Vol.3

山形県を中心とした演奏活動等

海音寺潮五郎「悪人列伝」~古代編を読む。

2012年09月05日 23時59分05秒 | 読書
 現在は、この本は「悪人列伝~古代編」となっていて、文集文庫から発売されています。私が読んだ本を正確に記すと、高校生時代に買った「悪人列伝一」という本です。昔は、古代編とか中世編とかのくくりではなく、一、二となっていました。作者の死後に、こうやって題名とかを改変することってあるのですね・・・・・。

 私が読んだ悪人列伝(一)には、蘇我入鹿、弓削道鏡、藤原薬子、伴大納言、平将門、藤原純友という6人の歴史上の人物が扱われています。歴史小説(時代物)を書く作家は大きく2つの種類があります。一つは所謂創作の時代物を書く方。そしてもう一つは、海音寺潮五郎や司馬遼太郎のような歴史資料を踏まえながら、物語を書く方。どちらのタイプも私は好きですが、特に海音寺潮五郎のような歴史資料を隅々調べて、多少堅苦しい文章を書く方には、尊敬の念を持ちながら読むことが出来ます。

 歴史好きのランキングがあるわけではありませんが、幕末・戦国時代などの人気がある時代ではない奈良時代~平安時代の物語には、今更ながらに強いあこがれを抱きました。たぶん高校生時代は歴史試験の知識補完のために読んだ本なのですが、何十年も経って、試験とは関係ない立場で読むと別の魅力を感じて読み進められました。

 歴史上、悪人だとされている人物が、別の立場から見れば、悪人ではなく、その周りにいた人こそ悪人なのでは?とか、自分の地位を守るために周りの人々を不幸にしていったりとか、現在の社会にも通じるような人間ドラマがいくつも読めます。いつの時代も変わらないですね。小知恵がきくするい者が、他者より出世して疎まれ、しかしその者は、そういうずるい行為が自分の努力だと信じている・・・・、出世した者をずるいと嫉みながら、自分は毎日正しいと思う同じ事を繰り返して、判を押したような生活している・・・・、どちらが正しいのかは永遠の謎で、結局自分の生き方の好き嫌いでしかありません。

 老眼がかなり進行していて、この本自体を読めるのはもう人生最後かもしれません。後は新丁版か虫眼鏡になるでしょう。ここ何日か、夜は古の時代にいっていました。
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