最近読んだ
「夏草の賦」とほぼ同時代背景の小説で興味深く読み終わりました。
織田信長の下で働き始めた山内一豊と妻千代の生涯の物語。
数年前に訪問した郡上八幡城に山内一豊と千代の像があって、NHK大河ドラマ効果もあってたくさんの観光客がいたのを思い出します。一豊の役を上川隆也さん、千代の役を仲間由紀恵さんが演じていたんですよね。
織田信長・豊臣秀吉・徳川家康へと仕えて、律儀だけを武器に少しずつ取り立てられ、江戸の世になるときに土佐24万石を拝領する物語です。「夏草の賦」は長宗我部元親の物語でしたので、ちょうどその続きの物語にもなっています。土佐は関ヶ原の戦いでやむなく豊臣側についてしまって、徳川家康から土佐を没収された後に、山内一豊が掛川6万石から国守として入ってきて元長宗我部家に仕えていた武士達を弾圧し、幕末まで上士と郷士という身分差別があったのは昨年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」を見ている人にはよく知っている事でしょう。幕末の頃の土佐藩主は山内容堂公で、徳川家から受けた恩というのを物語り中で何度も口にしていました。
律儀で謙虚なだけの山内一豊を妻千代はうまく乗せて内助の功で、どんどん出世させてゆきます。勇猛な武将でもなく、たいした功もないかわりにミスもないという武将が、妻からのアドバイス(夫を立てつつ上手く乗せてゆく妻の腕)を聞き、戦場でも政変でも上手く乗りきってゆくのは、ドラマとしては本当に面白く、引き込まれました。
ただ晩年は、自分の実力以上に出世してしまったために人物が変わってしまい、土佐の旧家臣(一領具足)達を弾圧してゆきます。反抗するものをことごとく殺してしまうのです。もし、千代のアドバイスどおり旧家臣達を召し抱えて、共に土佐を運営してゆくような体制をとっていたら幕末の土佐藩はどんな形になっていたでしょうか?色々と想像するのは楽しいものです。
「お金は人を滅ぼす。」「地位は人を育てる」とよく言いますが、男というものは「お金は有益に使えば問題なく、地位を得たときに謙虚さを失えばまったく魅力が無くなる」とこの小説では定義づけているような感じがします。得てして運で出世出来た人は、自ら偉くなってしまって謙虚さを失い、後々の世まで愚の行いをすると小説の中の千代は考えていたようでした。
人様の人生を歴史小説という形で体験できるのは色々と勉強できます。ますますのめり込みます。