Interplay For 2 Trumpets And 2 Tenor ( Prestige 7112 )
ジャム・セッションというは、ある意味残酷な形式で、単発のアルバムなら気にならないようないろんなことがかなり相対的に浮彫になります。
特にこのアルバムのように同一楽器の複数編成だとそれが顕著なので、当事者たちはさぞやりにくかったことでしょう。
Idrees Sulieman と Webster Young の違いは意外にはっきりとわかります。 Sulieman は硬質で鋭く尖った音、Young は柔らかくふくよかで
暖かい音です。 この2人は優劣の差は感じず、それぞれの良いところがくっきりと際立っています。 Sulieman は旋律の1つ1つをとても
丁寧に吹く人なんだなあということがよくわかる一方、Young はその音色がマイルスそっくりなのに驚きますが、旋律の妙よりもそのサウンドの
魅力で聴かせる人だということがわかります。
このアルバムの目玉は2つあって、1つは何と言ってもコルトレーンがいることですが、彼の最初のスタイルの完成形が最良の姿で聴けます。
彼が吹き始めると場の空気が急に変わってしまう様は凄くて、やはりその存在感が普通の演奏家とは根本的に違うことがよくわかります。
私はPrestige時代のコルトレーンが大好きで、どのアルバムも愛聴していますが、こういう出番の少ないアルバムほど彼の良さが際立つように
思います。 なので、Bobby Jaspar にはこれは気の毒なセッションだったなあ、とここでも彼の薄倖ぶりに同情してしまいます。 相変わらず
締まりのないボワッと膨らんだ音でフレーズの組み立て方も下手だなあ、バラードでこんな早いパッセージばかり入れてどうすんだよ、という感じです。
もう1つの目玉は、名曲"Soul Eyes"のレコード初演が聴けることです。 やっぱりこの曲はコルトレーンのインパルス盤が1番いいと思いますが、
この演奏も捨てがたい。 4管によるテーマの重奏が感動的で、Sulieman の丁寧な演奏が素晴らしい。 そして、コルトレーンの落ち着き払った
様子の見事さ。 この曲は彼のためにあるのだと思います。
そして、Paul Chambers がいることでこのアルバムカラーが決定づけられているように思います。 実は、本当の意味で演奏に色付けできるのは
ベースやドラムスたちなのですが、それができる演奏家は限られていて、Chambers はその稀有な1人でした。
このレーベルでかなり多くの割合を占めるジャム形式のアルバムの中で、こういう風に演奏家の個性や楽曲の素晴らしさを堪能できるものは
このレコードを筆頭にして枚数はさほど多くありません。 メンツだけは凄いけど中身は・・・・というレコードのほうが多く、値段だけで買うものを
判断していると失敗します。 Prestigeはリハーサルなしのジャム・セッションが多くてどれも素晴らしい、と十把一からげな言い方をされることが
多いですが、それは嘘です。 やはり、1枚ずつ内容を自分なりに消化していくことが大事なんじゃないでしょうか。