■ Ronnie Weisz Trio / One, True, Three... ( レーベル・番号不明 )
例によって稀少廃盤の再発ですが、そもそもCDのオークションなんて見る習慣がないので、どの程度の稀少盤なのかよくわかりません。
これはジャケットが如何にも廃盤向きの幽玄な感じで、もう最初からそうなることが運命づけられたかのよう。 ピアノトリオはあまり興味が
ないので元々買うつもりはなかったのですが、先週のCD漁りが不作で手持無沙汰で新品コーナーをブラブラしてたら試聴可能になっていたので
聴いてみると、うおっ、と思うことろがあったので買い求めました。
このCDはレーベル名も無ければCD番号も無く、中のライナーからわかるのはメンバーの名前と録音年月日と場所のみ。 この人はこの作品
1枚だけで姿を消したんだそうですから、そもそもこれは私家録音なんだろうと思います。 例によって音質もプロのエンジニアが
マスタリングをしていないようなざらっとした録りっぱなしの感じです。 各楽器の配置感も悪く、ドラムの音がやたらうるさい。
録音機材も悪かったようで、ピアノの音は場末の古いアップライトのようだし、ドラムもダンボール箱を叩いているかのよう。(言い過ぎか・・・)
激レア盤が再発されるのはまあいいとして、このサウンドの悪さはどうにかならないんでしょうか。 これなんて、きちんとリマスタリングすれば
きっといい音盤として再評価されるのではないか、と思うんですけどね。 ただ再発さえすればそれでいいでしょ、というのではなくて、
どうせ世に出すのであれば、資本力のあるところにマスターを持ち込んで、当初は不十分だったところに手を入れて修正してから発売したら
どうなんでしょう? こういう激レア盤の再発のやり方には、音楽への愛情が感じられなくてどうしても好きになれません。
ただ、そういうやるせない不満はあるにせよ、1曲目のガレスピー作の Be Bop がとても見事な演奏です。
3人が一体となって疾走していく様は素晴らしくて、その次のエヴァンスの Interplay の憂いさとの対比も効いていて、音楽的な感動を憶えます。
ピアノは腕がしっかりしていて聴いていて不安感がないのですが音に陰影が乏しくあまり音楽的魅力は感じません。 その代わりにベースと
ドラムが凄くて、特にドラムはフィリー・ジョーを思わせるところがあって、これに耳を奪われます。 ピアノの魅力で聴かせるのではなくて、
トリオが一体感として非情に纏まって進んでいくところに魅力があります。 これはなかなか難しいことなので、この音盤は気に入りました。
しかし、腕の立つピアニストは、ガレスピーの Be Bop を好みますね。 確かにかっこいいフレーズがぎゅっと詰まった名曲ですが、あまり
ピアニスティックな曲でもないし、そもそも演奏するには難しい曲です。
Sonny Clark with Paul Chambers, Philly Joe Jones ( Blue Note 1579 )
ピアニストが録音したこの曲の代表作として名高いのが、ソニー・クラーク。 この人がクラシックピアノの素地が高いことを証明したのが
このレコードです。 ここで聴かれる演奏には、まるでホロヴィッツやルービンシュタインのように旧い時代のグランドマナーで楽曲を
ねじ伏せるようなところがあって、この人が他のジャズピアニストとは根本的に別格の腕前だったことがはっきりとわかります。
ブルーノートのラインナップの中では、明らかに異質な雰囲気を持ったレコードです。
1曲目の Be Bop は、汲んでも汲んでも尽きることのない泉の水のようにアドリブが次から次へと流れるように弾かれて、あのフィリー・ジョーが
明らかにピアノに圧倒されてしまっている様子がよくわかります。 ソニー・クラークは本当にすごいピアニストでした。