廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ゲッツ流40年代のスイング・ジャズ

2017年03月20日 | Jazz LP (Verve)

Stan Getz / Interpretation #2  ( 米 Norgran MG N-1008 )


ジョン・カービーのレコードを聴いた後にこのレコードを聴いて、積年の疑問が解けた。 

昔から疑問だった。なぜゲッツはこの時期の相棒にブルックマイヤーやジョン・ウィリアムスを選んだんだろう、と。 なぜトランペットではなく、
トロンボーンが必要だったのか。特に音楽上有益な効果が認められるわけでもないこの2人をなぜ選んだのか。たくさんの録音があるということは、
明らかに何か意図があったのは間違いないんだけど、我々がゲッツに期待するのはもっとしっとりとした洗練された音楽なのに、このバンドの演奏は
どれもアップテンポで、抒情味に欠ける音楽をやっている。スタン・ゲッツらしくない音楽だ,、とずっと思っていた。

ところが、ジョン・カービーの演奏の後にたまたま続けてこのバンドの演奏を聴いたら、この2つの音楽がとてもよく似ているということに
気が付いた。ゲッツの音楽のほうがカジュアルな普段着で軽装だけれど、個別に聴くとそういう連想は出てこないのにこうして連続して聴くと
よく似ていることがわかった。

つまり、ゲッツは40年代のスイングジャズを自分なりに再現したかったということだったんだろうと思う。だからワンホーンではダメだし、
トランペットではモダンになってしまう。 そういう意味では、ブルックマイヤーによるサウンドはうってつけだったし、没個性的なウィリアムスも
ピアノが意味を持つとスイングジャズにはならないから最適だったということなんだろう。白人同士のほうがやりやすかったという事情もあったの
だろうけど、それでもジョン・ウィリアムスは非常に指の良く動くリズム感のいいピアノを弾くことができたから、彼がリズムセクションの重要な
担い手になることでこのバンドは明るいスイングジャズを創り出すことができたのだと思う。

ブルックマイヤーは不思議なアーティストで、ズートと組めば彼の中間派的な部分を引き出すし、マリガンと組めば西海岸の乾いた空気にうまく
染まるし、ジュフリーと組めば中西部のカントリー的慕情を喚起させる。 ゲッツとの演奏ではニューヨークでかつて盛んに演奏された
スイングジャズを下支えして、という具合いで、まるで各リーダーのアイデンティティーの扉を開け閉めする門番のようだ。

そんな中で、ブルックマイヤー作の "Minor Blues" というマイナーキーの仄暗い曲で、ゲッツはついうっかりとモダニストの顔を覗かせる。 
ミディアム・テンポながらもゲッツらしい湧き出るような滑らかなフレーズで、心に残る楽曲へと仕上げている。 これはいい演奏だと思う。


コメント
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