Donald Byrd, Gigi Gryce / Jazz Lab ( 米 Columbia CL 998 )
「ジャズ研究所」とは随分御大層な名前だけど、何かの冗談だったのか大真面目にそう思っていたのかはよくわからない。 それでも1年近くユニットとして
活動していたようだから、それなりに意志を持って演奏していたのは間違いない。 ただ、内容はアレンジの効いた普通のハード・バップである。
コロンビアに残した2枚のスタジオ録音はメジャーレーベルらしくアルバムの半分が多管楽器編成によるソフトなラージアンサンブルで、金がかかっている。
サヒブ・シハブがバリトンを吹いているのが目を引くけれど、特に目立って出番がある訳でもなく、贅沢な使い方をしている。 フレンチ・ホルンやチューバを
入れた重奏部分の柔らかい感じは完全にギル・エヴァンスのパクリだと思う。 それをコロンビアというレーベルで堂々とやってしまうのだから恐れ入る。
ただ、ありふれた2管編成のハード・バップだけではなく、変化球を多用しているところに彼らが何かを模索していた痕跡があり、そういうところが如何にも
意識家だったこの2人らしい。 一般的に重奏を好まない多くのジャズ・ファンからはこの手の工夫は評価されず、名盤に認定されることはついぞなかったように
思うけれど、手堅くまとめられた内容は悪くないと思う。
最後に置かれた "クリフォードの想い出" は淡い霞に包まれたような幻想的な仕上がりで美しい。 バックのアレンジはベニー・ゴルソンのスコアよりも
こちらの方が自然な感じで出来がいい。 楽曲が持つ情感がたっぷりと表現されていて、頭でっかちなコンボというイメージを払拭してくれる。