Roy Haynes with Frank Strozier / People ( 米 Pacific Jazz PJ-82 )
パーカーのバックを務めるなどビ・バップ時代から第一線にいたロイ・ヘインズはリーダー作が多いけれど、これは全然話題にならない。 パシフィック・ジャズ
というレーベル・イメージに合わないせいかもしれないし、ビッグ・ネームがいないせいかもしれない。
でも、フランク・ストロージャーはとてもいいアルト奏者だ。 コルトレーンが抜けた際にマイルスのバンドに誰を入れるかをメンバー間で話し合った際に
彼の名前が挙がったこともあるくらい、当時のミュージシャンの間では評価されていた。 なぜか作品には恵まれなかったが、残された数少ないアルバムは
どれもいい演奏ばかりだし、ここでもワン・ホーンで朗々と歌っていて、このアルバムは彼のワン・ホーン・カルテットと言っていい内容になっている。
フィル・ウッズに似たスカッと抜けのいい綺麗な音色をまっすぐ吹いていく様は素晴らしい。
ロイ・ヘインズも普段のバッキングでは決して見せないような目立つ叩き方をしていて、リーダー作という自由な空気を満喫している。 ブレイキーのような
目立ち方ではないけれど、それでも普通のリズム・セクションの型にははまらない叩き方をしていて、きちんとその存在を誇示している。
ただ、メロディーを持てない楽器の宿命で、音楽的主役の座はストロージャーに譲っている。 ストロージャーはその期待にきちんと応え、非常に品のいい
アルトサックスのなめらかなワン・ホーン・アルバムに仕上げることができた。
このレコードは音質も極めて良く、このレーベル独特の乾いた軽いサウンドではなく、楽器の音が濃密でクリア。 スタジオ内の空気感も伝わってくる。
パシフィック・ジャズもこれくらい後半になると、サウンドの色も変わってくるのかもしれない。
大名盤に飽きた頃に手にすると嬉しい、地味ながらもじっくりと聴かせるとてもいいアルバムだ。