Teddy Charles / Vibe-Rant ( 米 Elektra EKL-136 )
これも主客転倒してしまったアルバムで、テディー・チャールズがリーダーにもか関わらず実態はアイドリース・スリーマンのワン・ホーン・カルテットだ。
テディ・チャールズのヴァイブにはこれと言って特徴はない。 一般的な認知のされ方も、卓越した演奏者というよりは実験的なアプローチをした人という
イメージだろう。 だから、実際はそうでもないけれど、こういうスタンダードを含めた普通のアルバムを作っていること自体が珍しいという印象になる。
ヴィブラフォンは意外と演奏者の個性がよく出る楽器だけど、この人の演奏は淡麗だ。 ミルト・ジャクソンはその強い個性のためにアルバム1枚聴くと
すぐにお腹いっぱいになるが、この人のは飽きがこない。 1枚だけじゃなくて、もっと続けて聴きたいと思う感じだ。 演奏自体はどちらかというと
たどたどしくて、不器用な人が一生懸命言葉を探しながらしゃべっているようなところがある。 音も大き過ぎたり重なることもなく、印象に残る。
そういうあっさりとしたヴァイブの響きの中を、スリーマンのトランペットが大きな音で泳いでいく。 かなり大きな音だ。 線の細い演奏をする印象が
あったけど、録音が良ければまるで別人のような姿が現れる。 音圧の高さに圧倒されるけれど、音程はかなり不安定で怪しい。 リーダー作の少ない人で
なぜだろうと思っていたけれど、これが原因だったのかもしれない。
そんな感じでどれも上手さで聴かせるタイプではないけれど、全体としては落ち着きがありながらも勢いのある演奏で、印象に残るアルバムだと思う。
Elektra の録音も良く、接近して録った楽器の音を何も手を加えずそのまま溝に刻んだような感触。 そういう面でも満足度は高い。