The Al Belletto Sextet / Sounds and Songs ( 米 Capitol T-6514 )
ワンコインでお釣りがくるこのレコードも、聴くとため息が漏れるくらい出来がいい。一応オールド・ジャズのスタイルを取っているけれど、
演奏はものすごく洗練されていて、古臭さは微塵もない。感覚的にはモダン・ジャズで、インストとコーラスによる歌唱が交互に収められている。
アル・ベレットはルイジアナ州立大学在学中に学生ジャズバンドを結成して、その流れでプロとして活動していたようだ。自身はサックスや
クラリネットを吹いていた。彼のスモール・バンドには若き日のドン・メンザが在籍していた時期もあり、キャピトルの次に契約したキング・
レコード時代の録音ではメンザの演奏が聴ける。
セクステットによる軽やかな演奏はウエストコースト・ジャズとは一味も二味も違う清潔さがあり、非常に好ましい。アル・ベレット自身が
ニュー・オーリンズで生まれ育ったこともあり、他の地域のジャズとは感覚が違うのだろう。彼の吹くアルトはアート・ペッパーによく似ており、
これが1つの聴き物になっている。
また、交互に収録されているグループによるコーラスはフォー・フレッシュメンそっくりで、これにも驚かされる。時期的にはほぼ同時代
だろうと思うけど、歌が上手く、アレンジの才能もないとこうはならない。部分部分では誰かに似ている要素で構成されているけれど、
それが物真似という感じがしないところにこのグループの独特の才能を感じる。そしてそれらがまとまって聴けるというお得感も楽しい。
キャピトルの "Kenton Jazz Presents" シリーズは、スタン・ケントン楽団で演奏していたミュージシャンやケントンが推薦するミュージシャンを
取り上げるというコンセプトで始まった録音だが、基本的には白人ミュージシャンで構成されている。そのどれもが明示こそされなかったものの、
当時の主流派であった黒人ジャズへの対抗馬として企画されたことは明白である。こういうレコードを聴いていると、これらが後のウエスト
コーストを中心とする白人ジャズの隆盛の基礎を作ったのではないか、と思えてくる。
そこには黒人ジャズへの、どう頑張ってみてもあんな風にはとても演奏できない、という強いコンプレックスが感じられるし、でも、それでも
ジャズという音楽が好きなのだという独白も読み取れる。キャピトルというのはそういう白人ジャズ・ミュージシャンたちの貴重な受け皿の
役割を果たしていたんだなあ、ということが今になってみるとよくわかるのである。