![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/81/96163422eec7e8d03ac692ba004cf85a.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/c0/490323465d9a5856fbc30f034eb7410e.jpg)
Thelonious Monk / Plays The Music Of Duke Ellington ( 米 RIverside RLP 12-201 )
記念すべきリヴァーサイド12インチの第1号としてリリースされたこのレコードには、2つの謎がある。 謎、というといささか大袈裟かもしれないけれど、
とりあえず理由がよくわからないので、そういう言い方にしておく。
①なぜヴァン・ゲルダーの刻印がないのか
このアルバムは1955年7月21日と27日にニュー・ジャージー州ハッケンサックのルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオで録音されて、その際のエンジニアを務めたのは
ヴァン・ゲルダー本人だったけど、デッド・ワックス部にはなぜか "RVG" の刻印がない。 つまり、録音はしたけれどマスタリングには関与しなかったということだ。
これはなぜだろう。
リヴァーサイドは1955年からニューヨークのリーヴス・サウンド・スタジオを使い始めているけれど、何らかの事情でそこが使えなかったか、それともわざわざ
ハッケンサックまで行って録ったのか。 あえて行ったのであれば、それはモンクの意向だった可能性もある。
理由はなんであれ、ニュー・ジャージーまで行ったのに、ヴァン・ゲルダーがマスタリングしなかったのは不思議だ。 録音コストを下げるためにマスタリングまでは
委託しなかったのかもしれないし、先行するブルーノートやプレスティッジのサウンドとは差別化させるためにRVGにはやらせなかったのかもしれない。
その結果、このレコードから出てくる音はRVGのピアノトリオの音とは当然違うサウンドで、ピアノの音は透き通ったクリアできれいな音だし、ベースの音が
くっきりと大きくサウンドの真ん中にいる。 全体的な音場に透明感があって、非常にいい雰囲気のサウンドになっている。 私にはRVGじゃなくて正解だったと
思える。 この傾向はUS盤よりもUK盤のほうがより顕著にわかるから、このアルバムに関しては英LONDON盤で聴くのもいいと思う。
②演奏の印象がおとなしいのはなぜか
敬愛するエリントンを弾くということでかしこまってしまったのか、演奏がおとなしい。 打鍵は真芯で捉えられているので音はしっかりとしているし、
モンク節が至る所で全開であるにも関わらず、非常に上品な感じに仕上がっている。 もし、モンクがエリントンの音楽の美質をこういう洗練さにあると
考えていたのだとしたら、その想いは見事にここに結実しているけど、それにしてもモンクの演奏らしくない。
ただ、マスタリング上、ドラムの音がかなり絞られていて音があまり目立たないようになっているから、そういうことも印象に影響しているかもしれない。
叩いているのがケニー・クラークだから、なおさらサウンドが大人しく聴こえる。 これがブレイーキーが叩いていたら、このアルバムの印象はもっと
全然違うものになっていただろう。
オリン・キープニュースが鳴り物入りで迎えたのがこのモンクで、それまでの彼の不遇な状況を何とか改善しようとエリントン集やスタンダード集を作らせたのは
プロデューサーとしての最大の配慮に満ちた計らいだった。 裏ジャケットの全面を埋め尽くすキープニュースのこのアルバムに関する記述には彼のモンクへの
敬意と愛情が溢れている。 そういう作り手の想いが聴いている我々にきちんと届くレコードだ。 リヴァーサイドのモンクのレコードが他レーベルのものと比べて
一番違うなあと感じるのは、そういう1作ごとに垣間見える厚みのようなものかもしれない。
思うのは、
モンクはどうしてか、ハッケンサックでの録音を希望した。
ヴァン・ゲルダーは、なんだかんだで、そのレーベルのカラーというかそうしたその音にしてしまう名技師でもあります。
12インチ第一号で、この時まだレーベルの音のカラーが見極めきめきれてなかった。
で、マスタリングはご自由にそちらでどうぞということだったのか?
でも、おっしゃる通り結果的に良かったと思われます。
モンクはリバーサイドの自然な音感があっているように思います。
キープニュースらは既存のサヴォイやブルーノートのレコードを聴いてかなり研究したでしょうから、違うサウンド感を求めたのも可能性は高いような気がします。
12インチ期のサウンドを左右した録音の1枚だったかもしれませんね。
そう思いながら聴くのも、なかなか楽しいかもしれません。
http://kanazawajazzdays.hatenablog.com/entry/2012/07/12/122445
この録音はこれで正解だったと思いますね。ピアノの音がとても自然です。
レコード1枚に右往左往するのも、バカげたような、それでいて楽しいような。