Jakob Bro / Streams ( 独 ECM 2499 5717024 )
DUのCD館で新譜として並んでいたのを見て、聴きたいなあ、とCDを手に取りしげしげと眺めながらも、もしかしてレコードも出るかもしれないしなあ、
どうしようかなあ、とボケっと突っ立って逡巡していたのが8月の夏休みのさ中だった。 傍目にはさぞかし間抜けな姿だったことだろう。 でも、
こうして180g Vinyl を聴いていると、あの時我慢して良かったよなと思う。
前作同様ギター・トリオ形式による演奏だが、前作はオランジュリーに展示されているモネの「睡蓮」のように、複数のピースがまるで一幅の大きな印象派の
絵画のような仕上がりだったのに比べて、今作は1曲ごとに楽曲が独立してる感じが強く、各々の曲調にも違いがある。 ギターも軽いディストーションを
かけてみたり、と前回の終始漂うような感じと比べると少しソリッドなアプローチが目立つ。
抽象性イコール現代性、という通俗的な等価関係に終わらせず、それらをしっかりと音楽の側に引き込むところにECM本来の価値があるのだが、どの作品もが
成功しているとは必ずしも言えない中で、これらのヤコブ・ブロの作品は最良の成果を出していることは間違いない。 テレキャスターを使うことで、
従来のギター・トリオの定型的イメージからは完全に隔絶した、言わばまったく新しい音楽形式であることをすんなりと納得させる。
レコードから再生される音の質感もこれ以上ない極上さを見せる。 3つの楽器のブレンド感は絶妙で、ドラムを叩いた時に鳴るボディ-の共鳴音の生々しい
ところや、ベースの音の透明度の高さや鮮やかな色合い、空間への放出される時の響き方の自然さなど、アコースティック楽器の美質とそれを聴く愉楽の
心地よい一体感を味わえる。 ギターも控えめなオーヴァー・ダブを施されて、ゆらゆらと揺れ動きながら移動する淡いオーロラのようだ。 たぶん、CDだと
もっと精緻で張りの強い音なんだろうけど、このギター・トリオにはレコードの質感のほうがよりフィットするのではないか、と今は勝手な想像をしながらも、
いずれ機会があればCDも聴いてみたい。
近年のECM作品は私の好みにハマるものが少ないので、単価が安いとは言え、予備知識なく手を出すのが躊躇されます。
かと言って、中古でも出回ることも少なく、参ったなあ、と途方に暮れているのが実情です。
アヴィシャイもパッとしなかったようなので、結局買ってません。あれはちょっと高いですからねえ。
今回のブロさんはアマゾンで2,600円(送料無料)でした。高いんだかどうか、よくわかりません。
予約注文を数週間前に入れて、1度出荷予定が年明け1月の中旬N延期されたと連絡が来たので、今回急に届いたのは驚きました。
私も新譜をレコードで買うようになったのは、今年に入ってからです。(例のエヴァンス未発表から) 新譜で買うのも悪くないな、と感じ始めてます。
新譜をLPレコードで聴くのは、ただの道楽と永らく思っていましたが、やはりCDとの音の違いを感じます。技術屋として何だろうなあ、と思います。