Bill Evans / Evans In England ( Resonance Records HLP 9037 )
昨日は出かける用事があったので、ついでに新宿に寄って Racord Store Day してきた。 当日にレコード屋に行くのは今年が初めてである。
事前に当たりを付けておいた2枚を拾って帰って来た。 しかし、趣旨はわかるけれど、直接店に行かなきゃ買えないというのはいささか難儀である。
平日なら仕事帰りに寄れば済むけど、休日だとわざわざ出かけなければいけない。 しかも街は尋常ならざる人混みである。 休みの日にわざわざ
新宿や渋谷なんかに出かけたくない。
1枚目は今年のハイライト、ビル・エヴァンス。 最近の傾向を考えるときっとたくさん売れるんだろう、他のタイトルとはケタ違いの在庫量だった。
2枚組で7,452円というのは高過ぎる。 新品2枚組は4,000円と昔から相場は決まっている。 買うかどうかギリギリまで踏ん切りがつかなかったけど、
現物を見るとやはり抗えない。
レゾナンスのエヴァンスのレコードには重要な未発表の演奏を世に送り出すという使命があるから仕方のないことだが、良い演奏も良くない演奏も全てが
収録されている。 だからアルバムを通して聴くと全体の印象の平均点はどうしても下がってしまう。 レゾナンスはそこを理解して評価する必要がある。
リヴァーサイドのヴァンガード・ライヴだって、たくさんある演奏の中の最もいい部分だけをセレクトして編まれたから世紀の名盤になったのであって、
あの公演すべてをごった煮にしてリリースしていたら、今のような名声はなかっただろう。 アルバムというのは、そういうものだ。
だからこれはわざわざレコードで買うよりはCDで買った方がいいのかもしれないと思う。 そうすれば自分だけの "Evans In England" を作って
楽しむことができる。
1969年12月の録音で時代相応の音質だが、現代のマスタリング技術のおかげで音の質感はかなり健闘しているとは思う。 69年当時にリリースされて
いたら、もっとプアな音質だっただろう。 聴いていて気付くことは、まずピアノの音があまりきれいとは言えないこと。 アコースティック・ピアノ
らしくなく、ちょっとエレピっぽい感じがする瞬間が多々ある。 何が原因なのかはよくわからないけど観客の拍手の音もそうなので、PAの問題なのか、
録音機材の問題なのか、クラブの音響の問題なのか。 それと聴いている位置とステージの距離が少し離れているような印象がある。 端的に言うと、
さほど高音質という印象ではない。 "Waltz For Debby" のイントロや "Turn Out The Sttars" ではテープの傷みで音がグニャリと歪む箇所がある。
演奏は全体的に粗っぽいなという印象だ。 最初はイイ感じで進んでいても、後半からタガが外れて弾き散らすようになり、最後は乱舞の様で終わる
という曲がいくつかある。 ライヴだからこういうのは普通のことだと思うけれど、レコードに収録する必要はないなという曲があるのは確か。
みんなが期待する "My Foolish Herat" ~ "Waltz For Debby" は、正直言ってあまりよくない。
それとは対照的に、素晴らしい演奏も当然ある。 "Sugar Plum"、"The Two Lonely People"、”Elsa"、"What Are You Doing For The Rest Of Your Life"、
"Turn Out The Stars"、"Re:Person I Knew"、"So What"、"Midnight Mood" など、主にDisk2に素晴らしい演奏が集中している。 これらの曲で
エヴァンスは思索的なピアノを弾いている。 "So What" も独特な雰囲気が上手く出ている。 いいトラックは文句なく素晴らしい。
期待値が非常に高い状態で聴き始めるので最初はいろんなアラが目に付きがちだが、冷静に考えると今まで聴いたことのないエヴァンスの演奏がLPで
2枚分も聴ける凄さにはただ感謝しかない。 並みのアーティストではなく、あのビル・エヴァンスの演奏なのだ。 多少の瑕疵など、どうでもいい。