Charlie Parker / Charlie Parker with Strings :The Altanate Takes ( Verve B002967101 )
私の今回のRSDの本命はこれだった。 CDでは既に未発表曲17曲が出ていたそうだが、今回はそのうちの13曲がレコード・デビューしたとのことで、
CDでは聴く気にはなれない音源だからこれはマストバイだった。 安っぽい作りのジャケット、薄手の盤、の割に3,780円というのは割高感があるけど、
まあ、しかたがない。 ハードコレクターが70年代以降のオリジナル盤に興味を示さないのはこういう作りのチープさが原因の1つになっている訳で、
現代のレコード産業もブームを盛り上げたいならこういうところの手抜きはしちゃいかんと思う。 ノヴェルティーとしてのカラーワックスなんか
どうでもいいし、大体この趣味の悪い色は何なんだろう。
それでもこれを買ったのは、もちろんパーカーだからである。 大衆に迎合したヒモ付きだとバカにされようが、パーカーのウィズ・ストリングスは彼の
作品の中でも屈指の出来。 パーカーの魅力が全く伝わってこないダイヤル・セッションなんか別に聴かなくてもいいけど、ウィズ・ストリングスなら
全てを余すところなく聴きたい。
肝心の音質についてはエヴァンスのレコードのような歯切れの悪い言い方をする必要はなく、単純に良好な仕上がりだ。 古い録音なのでハイファイとは
言えないのはどうしようもないけれど、それでもその古さが深い郷愁を誘う効果があって心地よい。 聴いていて、不自然さが全くない見事な音だ。
そのおかげで、音楽に集中できる。
正規盤に収められた楽曲の別テイクは、やはりアドリブのイマジネーション不足だったり、フレーズの単調さが目に付く。 でも、それでもパーカーの
演奏だ、ただ事ではない内容になっている。 リッチなトーン、聴いたことがない旋律、深いリズム感。 レコードの中でパーカーが生きている。
SP時代の巨匠たちの録音はLPに切り直された際に別テイクも並べて収録されることがあって評判が悪いけれど、パーカーなら全然OK。 この人なら
どんなフレーズでもすべて聴きたい。 当時のレコード製作者たちもみんなそう思っていたんだと思う。 彼らもいちファンだったのだ。
その想いがたくさんの録音音源を生み、こうして日の目を見るのは素晴らしいことだと思う。 既にこの世にはいない敬愛する巨匠たちが新作を
リリースすることはできない以上、こういう形でしか新しい演奏を聴くことはできない。 音楽を愛するのであれば、音楽を聴こう。