廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ステレオ期のアール・ハインズ

2019年12月15日 | Jazz LP

Earl Hines / Spontaneous Explorations  ( 米 Contact CS-2 )


デューク・エリントンやセロニアス・モンクは好き嫌いの嗜好は別にして巨匠としての評価は誰しも揺るがないところだろうけど、本来は同格の扱いを
受けても何もおかしくないアール・ハインズはまったくと言っていいほど人気がない。エリントンやモンクは伝統を踏まえて自身の音楽を作り上げたが、
アール・ハインズはそこまでには至らなかった。そういうことにはあまり興味がなかったのかしれない。

ルイ・アームストロングと同世代だから、ジャズの歴史をそのまま生きたような感じになる。録音は無数に存在して、どれから手を付ければいいのやら
さっぱりわからないし、大体どれを聴いても古いスイングジャズで、1度聴けばもういいや、という感じになるのが一般的な反応だろう。
だからこの人を聴くなら60年代以降のアルバムがいい。その中でも、このソロ・ピアノを聴けばそれまでの印象が一変するだろうと思う。

エリントンやモンクほどアクが強くなく、彼の一番弟子だったテイタムほど饒舌でもなく、テディ・ウィルソンほど退屈でもなく、エロール・ガーナーほど
大袈裟ではなく、そういう人たちと較べると意外なほど中庸でモダンで素直な演奏だ。ピアノの音そのものにリズムが宿っているから、ベースやドラムは
元々必要なく、これだけで音楽は成立している。

音数は多いけれど、うるさい感じはない。粒立ちのいい音が流麗に流れていく。古臭い感じがなく、表情も豊かで全然聴き飽きるようなところがない。
楽器がしっかりと鳴っており、運指もなめらか。古いスタンダードを取り上げているけれど、とてもモダンな演奏だ。じっくりと聴くには相応しい。

1964年の録音なので、当然ステレオ盤で聴くのがいい。ピアノの自然な残響が捉えられていて、等身大のアール・ハインズが眼前に立ち現れる。
その姿は巨匠というよりは、繊細な1人のピアニストとしての姿に見える。


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