Lenny Hambro / Mambo Hambro ( 米 Savoy Records MG-15031 )
レコードに頼るしかない我々のような日本人にとって、レニー・ハンブロのようなミュージシャンの実像は掴みにくい。リーダー作は私の知る限りでは3枚で、それらからは
彼の音楽的主張のようなものは感じ取れないので尚更である。でもWikipediaにはその生涯がかなり細かく書かれていて、アメリカではそれなりに知られた存在だったのかも
しれない。グレン・ミラー・オーケストラ時代が長かったようだが、マチートらとラテン音楽に手を染めていたこともあったようで、このデビュー作はコンガやティンバレス
をバックにエディー・バートと共にラテン音楽にどっぷりと浸った音楽をやっている。
よく鳴るアルトで朗々とメロディーを吹き流す姿がよく捉えられており、早い時期から演奏が上手かったことがわかる。リズム感がよく、テナーに近い太い音色で堂々と
歌う様は見事だが、ジャズ好きのスコープからは少し外れる音楽なので食感は微妙。一口にラテン音楽と言ってもその種類は多岐に渡るわけで、ここで演奏されているのは
マンボ系の音楽。ジャズと比較するとその官能性のようなものが顕著で、それがラテン音楽の本質なんだろうなあということがわかる。それに比べるとジャズというのは
かなりインテレクチュアルで構造性に寄った音楽なのだということを実感する。
Lenny Hambro / The Nature Of Things ( 米 Epic Records LN 3361 )
一般的に彼のアルバムとして一番よく知られているのはこのアルバムだろう。ワンホーンの美音滴る演奏でスタンダード中心の選曲が万人受けする、如何にもエピックが
作りそうなアルバム。私自身はバックのウエストコースト形式の伴奏がハンブロの東海岸的哀感とはミスマッチで全体的には惜しい作りだと思っているが、あまり拘りなく
聴けば非常に口当たりのよい上質な内容だ。フィル・ウッズやチャーリー・ラウズらがこのレーベルに残したアルバムと同じコンセプトで作られていて、メジャーレーベルの
きちんとしたマーケティング戦略に乗っかった作風である。
上手い演奏をした人だったが、これ以上に踏み込んだ音楽はやらなかったためレコードもここ止まりだった。コロンビアにも1枚あるが、そちらは駄作で聴く気になれない。
硬派なレーベルでジャズに本腰を入れた演奏を聴いてみたかったと思う。