J.J. Johnson, Kai Winding / Jay & Kai ( 米 Savoy MG-15038, 15048 )
ディキシーランドでは主役の一角を担っていたトロンボーンもバップのような音楽には不向きとされていた中、ブレイクスルーさせたのが
JJジョンソンだった。そこに目を付けたサヴォイのオジー・カデナが敢えて白人のカイ・ウィンディングを連れてきてコンピを組ませたのが
Jay & Kai というユニットで、これが当たった。いろんなレーベルにレコードを残し、晩年も事あるごとに共演している。
このユニットのデビューアルバムがサヴォイの2枚の10インチで、同時にジュークボック用にEPも切られていて、積極的に売り出そうと
していたのが伺える。ジャケット・デザインもリード・マイルスとバート・ゴールドブラッドを足して2で割ったようなセンスで、当時の
雰囲気がよく伝わってくる、とてもいいジャケットだ。
音が明るく雄弁なフレーズのほうがカイで、少しくぐもったようなマイルドな音色がジェイジェイで、2人の個性はきちんと聴き分けできる。
この2人の作る音楽はいい意味で軽快で、パシフィック時代のマリガンのピアノレス・コンボの質感とよく似ている。深刻にならず、ラジオ
などから流れてくると思わず身体が揺れてメロディーに合わせて口ずさんでしまうようなところがあり、そこが良かったのだろう。
明るく上質なムードに溢れていて、尖った音楽だったバップ系の中ではホッと一息つけるような心地よさがとてもいい。
ただ、終始そういう牧歌的な雰囲気だったかと言えばそうでもなくて、注目すべき演奏も含まれている。このセッションはベースを当時の
サヴォイのハウス・ベーシストだったミンガスが担当しているが、1曲、彼が書いた "Reflections, Scene Ⅱ, Act Ⅲ"が演奏されており、
これが圧巻の仕上がりになっている。
2管による不気味なイントロの導入から無軌道なピアノのフレーズが絡まり、心象風景のような環境音楽のような抽象画タッチの楽曲が
仕上げられていく。当時のジャズとしては異色の楽曲で、さすがはミンガス、と唸せる素晴らしさ。柔らかい不協和のハーモニーは
エリントンの匂いがほんのりと漂い、非常に印象的な楽曲として異彩を放っている。
そういう音楽的にも満足度の高い内容に加えて録音も見事で、言うことなしのアルバムとなっている。不思議なのはVol.1はRVG刻印があり、
音も非常にヴィヴィッドだが、Vol.2には刻印がなく、音質がややぼやけていること。古い10インチなのでセカンド・プレスというわけでは
ないと思うけど、RVGも忙しくて手が回らなかったのか、理由は定かではない。