Sonny Criss / Jazz - U.S.A. ( 米 Imperial LP 9006 )
最初の1曲目から最後の曲までのどこを切り取ってもソニー・クリスが吹きまくっている、まさに金太郎飴のようなアルバム。 インペリアルには3枚の
アルバムを残したけれど、すべてが同じ作りになっている。 ワンホーンでスタンダードを短く吹き流す。 ヴィブラフォンが入っていたり、ギターが
入っていたりとアルバム毎にバックの構成の違いはあるけれど、本質的な違いはない。
ほとんどのフレーズを同じ音量でフラットに吹いていくので、そこには陰影美のようなものは感じられない。 音色は濁りのないクリアできれいな音で、
音圧も高いのでこのアルトのプレイには圧倒される。 強い顎の力や大きな肺活量がなければこうは吹けないだろうし、何より淀みなく流れるフレーズが
技術力の極みを証明している。 こんなになめらかに吹き続けられる人は他にはあまり思い付かないのではないだろうか。
ただ、そこにはパーカーやゲッツのような新しくて美しいメロディーの創造はない。 手クセ・口グセの断片をひたすら積み上げていくスタイルで、これが
音楽の金太郎飴化現象を引き起こす。 それをフラットな音量で吹き続けるので、その印象は増々強くなる。 素晴らしい演奏なのは間違いないけれど、
アルバムのすべてを聴き通す前に猛烈な満腹感がやってくる。 レコードなら片面の再生が終われば音楽は自動的に鳴り止むが、CDや配信だと再生を止める
タイミングが難しそうだなと思う。
この人の場合はそういう個性のアルトだから、2管編成くらいのほうがいい。 その時の相手は饒舌なタイプではなく、できれば口数の少ない人がいい。
そうすることで彼の素晴らしさは相対化されて、より輝くことになっただろう。 ただ、本人的にはそういうことには興味が無かったようで、その後も
似たようなアルバムが続くことになる。 全体の中でもう少しアルバムの作り方に変化があったら、もっとよかったのになと思う。
でも、経験的に言って、そういうのはある時期に急にまとまってバタバタっと出るようになるもんです。気長に待ちましょう。