廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

音色の美しさで仕上げられた傑作

2019年05月18日 | Jazz LP (Bethlehem)

Charlie Mariano / Charlie Mariano  ( 米 Bethlehem BCP 25 )


チャーリー・マリアーノが32歳の時に吹きこんだワンホーンの傑作。 聴いていると、やはり白人アルトというのは黒人アルトとは全然違うなと思う。

何よりも魅力的なのはその音色で、ちょうどフィル・ウッズとアート・ペッパーの間のような感じだ。 きらびやかで艶やかな輝きがありながらも彫りの
深い陰影感で聴かせるところが特徴で、ウッズとペッパーのいいところを併せ持ったようなところが珍しい。 アドリブ・ラインは弱くプレイそのものも
たどたどしいところがあり、演奏力で圧倒されることはないけれど、その弱点を音色の彩で大きくカヴァーしている。

黒人アルト奏者はこういう建付けを好まない。彼らは自己表現のために何よりも楽器の習熟を最優先にするし、自身のプレイに自分のすべてを委ねようと
するけど、白人アルト奏者は全体と個を相対化して見ているようなところがある。 調和を乱すような行き過ぎたアドリブは取らないし、音の大きさよりも
サックスの音色が音楽とうまく溶け合っているかにも随分気を配っているような感じがある。

マリアーノもただ吹きまくればいいんだという演奏はせず、全体をリードしながらも最終的には音色の美しさで音楽を仕上げてみせる。 このあたりは
同時期のソニー・クリスなんかと比較してみれば、その違いは明白だろうと思う。 ソニー・クリスはその音色も十分美しいけれど、あくまでもアルトの
プレイそのもので音楽を構築している。 だから、マリアーノのこのアルバムを聴いてもちょっと喰い足りないな、もっと聴きたいな、という腹八分な
印象が残るけれど、ソニー・クリスやソニー・スティットのアルバムは聴いている途中で満腹感が襲ってくることになる。 

こういう音色の陰影美で聴かせる人は多管編成よりもワンホーンがいい。 若い頃のフル・ワンホーンはこれしかなく、人気があるのもよくわかる。
スタンダードをメインに美しく仕上げたところが素晴らしい。

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