Charlie Rouse / Yeah! ( 米 Epic LA 16012 )
1940年代のビ・バップ時代から活動し、ファッツ・ナバロなんかとも共演していた割にはリーダー作に恵まれず、日陰の存在だったように思う。
テナーのレコードを聴こうと思った時にすぐにこの人を思い出すことはなくて、何かの拍子に「そう言えば、チャーリー・ラウズがいたな」と
気が付く感じだ。いいテナー奏者なのにいつも視界の外にいる感じがもったいない。尤も、そういうところがマニア心をくすぐるのかもしれないけれど。
数少ないリーダー作の中の唯一のワンホーンアルバムとしてマニアから寵愛されるこのアルバムは貴重な存在だが、ラウズの魅力が100%開花しているか
と言えば、そうは思えない。フィル・ウッズの場合もそうだけど、どうもエピックのアルバムの内容はどれも演奏が抑え気味で演奏者の力が余っている
ようなところがあって、聴き終えた後の爽快感が希薄だ。ラウズはもっとエモーショナルに吹いても決して下品になることがないのが美点の人だ。
魅力があるとは思えないアップテンポの曲を間に挟んでいるけど、どうせなら全編スロー・ミディアムのバラードアルバムにすればよかったんじゃないか
という構成上の疑問も残る。手放しで褒めたいのに、そうはさせてくれないところがこのアルバムにはある。
このアルバムの後に、例えばベニー・グリーンの "Back On The Scene" を聴くと、ラウズのプレイは別人のように表情が活き活きとしていて、陰影感の
彫りの深さも遥かに上回っているのがわかる。聴き終えた後の手応えや充実感が全然違う。だから、私がラウズの演奏を聴こうと思って取り出すのは
いつもデューク・ジョーダンの "危険な関係" やベニー・グリーンのこのアルバムだし、思い出すのは "The Feeling Of Love" や "Melba's Mood" だ。
ただ、ラウズのテナーはいい音色をしているし、ペック・モリソンのベースがきれいで生々しい音で録れているなど、エピックらしい高品質なモノづくり
になっているのはとてもいい。できればこのレコードはステレオ盤の方が聴きたいんだけれど、縁が無い。演奏に覇気がないと感じるのはモノラルだから
なのかもしれない、と思うようになった。ステレオ盤で聴くともう少しいい方向に印象が変わるんじゃないか、という予感がある。