Stan Getz / Stan Meets Chet ( 米 Verve MG V-8263 )
余計なお世話だと思うけれど、このレコードは買わないほうがいい。特に、高い値段が付いているものは。
とにかく音が悪い。レコードの、というよりはマスタリングに失敗している感じだ。音がこもっていて、演奏が奥に引っ込んでいる。これでは音楽の
良さなんてまったくわからない。役者が揃い、選曲もよくて名盤の資格十分なのに、そうはならなかったのはひとえにこの音の悪さによる。
音楽の輪郭がよくわからないので内容を評価しようがない、困ったレコードだ。チェットの演奏の印象がまったく残らないし、ゲッツの演奏にも
普段感じる感銘を受けることがない。ピアノはジョディー・クリスチャンという人だが、あんた誰?という感じだ。一体どういうセッションだった
のだろう。好きなアーティストが2人揃っているので何となく処分しきれずに手許に残っているが、どうしようかな、といつも思う。
聴いていて不快さがあるわけではないので、まったく聴かないということではない。さりとて、聴いても感動することはない。そういう中途半端さが
面倒臭い。こういうレコードもちょっと珍しい。他に同じようなパターンはあるかなと考えてみたが、何も思い付かない。
一口にオリジナル盤と言っても、いろんなレコードがあるよなあ、という話である。由緒あるヴァーヴのしっかりとした初版で有難いはずなのに。
さっさと売ればいいだけなんだけど、売っても大した金にはならないし、と思うと踏ん切りもつかない。こうして、「箪笥レコード」が生まれる。
マニアのレコード棚にはこういうレコードがきっとたくさん眠っている。