Benny Golson / Gettin' With It ( 米 New Jazz NJLP 8248 )
ゴルソンのNew Jazz3部作の中では最も言及されることが少ないこのアルバムはトミー・フラナガン、ダグ・ワトキンス、アート・テイラーのトリオが
バックを務める。 カーティス・フラーとの2管編成でスタンダードを交えてゴルソン・ハーモニーで彩りながら演奏するスタイルは同じだが、バックの
メンツの違いが音楽の雰囲気を少し変えている。 名前を見ると、このトリオが一番興味を惹くだろう。
冒頭の如何にもフラナガンらしいレガートなピアノの導入部でこのアルバムの雰囲気は既に決定的だ。 そしてワトキンスのイン・テンポなベースは
チェンバースの後ノリのリズム感とはまったく違うムードを音楽の中に持ち込んでいる。 この縦ノリのかっちりとした雰囲気はサキコロそっくり。
ベース奏者が変わるだけでこうまで音楽は変わってくるのか、というお手本のような内容だ。
そういう非常に目立つ2人を、アート・テイラーの寡黙なドラムが支える。 テイラーはハイハットをメインに使い、おかずのシンバルは最小限にしか
使わないので、非常に静かなドラムであることが身上で、彼がドラムに座った演奏はその他の楽器の音が聴き取りやすく、バンド・サウンドの内部構造が
よくわかる。
そしてこのアルバムは他の2枚に比べて2管のハーモニー部の比率が低く、それぞれのソロ演奏に重点が置かれている。 そういう意味でこのアルバムが
一番演奏の本気度が高い印象がある。 特にB面最後の "Bob Hurd's Blues" でのフラーの長尺のソロは圧巻の出来だ。 片面を2曲のブルースだけで
目一杯溝を切ったB面がこのアルバムの真骨頂と言える。 そしてこのアルバムはフラーの好演が全面に出ている。 ゴルソンもそれがわかっていたのか、
ファースト・ソロはフラーに取らせて、自分は一歩引いて演奏している。 丁寧に聴けば聴く程、ゴルソンの人柄がにじみ出ているのがわかるだろう。
全体的にゆったりとした曲調が多く、マイルドで洗練されている雰囲気が素晴らしい。 "Groovin' With"とは好対照を成すアルバム作りの上手さが
絶妙だと思う。 昔のレーベルはこういうところに感心されられる。