James Moody / Hi Fi Party ( 米 Prestige PRLP 7011 )
ジェイムス・ムーディーは50~60年代にレコードを異例なほどたくさん作れた稀有な人だが、代表作に恵まれず、実力に見合う評価を得られなかった。
ビリー・テイラーなんかとその状況は似ている。 知名度は高かったのでレコード会社は喜んでレコードを作ってくれたが、その内容には凄みが欠けている。
プレスティッジと契約していた時期はゲッツ、コニッツ、マイルスなど錚々たる顔ぶれの中に彼のアルバムも並んでいて彼らと同等の扱いを受けているけれど、
その内容は多管編成による古風な作風で、且つどのアルバムも同じパターンで作られているのはやっぱりまずかった。 この欠点はアーゴ時代にも顕著で、
フルートやサックスの持ち替えで似たような内容のアルバムを連発しているのには閉口させられる。 サックス奏者なんだから、ワンホーンのスタンダード集を
正面切ってドーンと作るべきだった。 そうすれば、もっと人気者になっていたんじゃないかと思う。
ただ、音楽自体は上質で雰囲気のとてもいい出来栄えだ。 街灯に照らされた夜の道を歩いているようなノスタルジックなムードがあり、独特の質感がある。
バラードで見せるムーディーのサックスの音色はどこまでも深い。 彼の紡ぐフレーズは歌にもなるほどメロディアスなもので、音楽を作り上げる腕は確かだ。
どのアルバムもパターンは同じなので何枚も持つ必要はないが、50年代前半のニューヨークの夜の雰囲気が味わえるような内容はもっと見直されていい。
こういう雰囲気の良さで聴かせる音楽はブルーノートにはあまり無く、プレスティッジのほうに分がある。
プレスティッジの人気の無いアーティストやタイトルは、昔に比べて値段が大幅に安くなっていてずいぶん買いやすくなった。 昔はプレスティッジである
ということだけで一定以上の値段がついたものだったが、今は違う。 そのおかげで、この辺りの音楽が気軽に聴けるようになったのは喜ばしい。