廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

中古レコード漁りの楽しさの原点

2019年01月13日 | Jazz LP (Columbia)
中古レコードを漁るようになって35年が経つ。 その前の7年間は中古レコードなんてものの存在は知らなくて、レコードを買うと言えば駅前のデパートへ行って、
その中にあったレコード屋で新品の国内盤を買うのが当たり前だった。 それは何とも平和な日常だった。 中古レコードの存在を知って、それを漁るようになって
状況は良くも悪くも一変する。 そして、最近は本当に贅沢になってしまったなあと思う。

オリジナル、オリジナルと騒ぐのが未だに気恥しいし、オリジナル盤を買うことに今でも後ろめたい気持ちがある。 よく考えてみると、中古漁りをしていて
一番楽しくて幸せだったのは、中古の国内盤を探して買っていた学生時代だった。 それは間違いない。 とにかく定価で2,500円するレコードが半値以下で
買えることが驚異的で何よりも嬉しかった。 少ない小遣いの中で、1枚買うのにも呻吟に呻吟を重ねたものだ。 それが今じゃどうだ。

中古漁りの本当の楽しさを忘れないようにするためにも、時々は原点回帰する必要があるとつくづく思う。 だから、最近は改心して国内盤も丁寧に漁っている。
そうすると、こういう素晴らしい音楽に出会えて、忘れかけていた楽しい気分も蘇ってくる。



Jeremy Steig / Monium  ( 日本 CBS/Sony SOLP-244 )

ジェレミー・スタイグがエディ・ゴメス、マーティー・モレルのエヴァンス勢と組んで、ティンバレスを加えて自身のフルートをオーヴァーダブした力作。
フルートは強く吹けば吹くほど音がかすれて尺八のような感じになるが、そんなのお構いなしで疾走する。 不思議なもので、スタイグがそうやって力めば力むほど、
音楽の純度が上がっていくような感じなる。 そういう意味では、この人は天性の音楽家だったのかもしれない。 1974年のリリース作品で時代を感じるサイケで
第三世界的要素が濃厚だけど、不思議と心惹かれて止まないお気に入りのレコード。 700円。 ジャケットの絵はスタイグ本人の自筆だそう。




Dollar Brand / This Is Dollar Brand  ( 日本 Trio Records PA-7063 )

名盤100選の常連であるこの人の代表作 "African Piano" は、どうも私にはその良さがわからない。 歴代の大先生たちはこぞって褒めていたけど、
その裏には黒人文化へのコンプレックスが見え隠れしていて、そういう教条主義が胡散臭くて鼻につく。 

それに比べて、こちらは驚愕の大傑作。 こんなに心に刺さるピアノは滅多にない。 "Kanazawa Jazz Days" の kenさんから国内盤の音が良いと教えられて
いそいそとユニオンに行くと、簡単に見つかった。 500円。 この日本Trio盤、本当に音が良い。


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6 コメント

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Unknown (Starraney)
2019-01-13 09:13:30
Dollar Brand African Piano,Clifford Jordan In The World,Keith Jarrette Facing You これらはJazz として云々以前にそれらが発売された其時にJazz喫茶で聴いた自分にとっては二度とない時代の思い出なんですね。どんな優れた演奏でもそこに聴いた時点の背景がないと自分にとっての愛聴盤にはならないようです。しょっちゅうCDを買い漁っていてもそこに背景がマッチしないと自分にとっての名盤にはならないようです。
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Unknown (ルネ)
2019-01-13 09:37:38
仰せの通りだと思います。 音楽はそれを聴いた時の環境や状況に大きく左右されると思います。 私もリリースされたその当時にジャズ喫茶のような環境で聴いていれば、もっと違った感想を持ったかもしれません。
ただ、そういう環境云々の条件を超えて、独立して燦然と輝く音楽があるのも、これまた真実。 何気に難しい問題です。
アフリカン・ピアノは私の感想なのでお気になさらず、こいつわかってないなあ、と笑い飛ばしておいてください。
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Unknown (松葉蘭)
2019-01-13 17:25:34
 こんにちは。拝読して、私も漁り始めの幸福だった30年前を思い出しました。あの頃はそうお安くもない国内盤レコードを有難く購入していたものでした。当時観た映画と共に、背景を持ったレコードは人生の折り返しを迎えた身には貴重なものに感じられます。
 ここ最近、ジェレミー&ザ・サテュロスというロックっぽいCDを聴いていたばかりでしたので、御紹介のディスクにも興味を持ちました。また、私はジェレミースタイグの描く絵にジョージ・グロスに似たエグ味を感じて不思議と惹かれるものがあり、これは探したいと思いました。あくまで、お安く。
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Unknown (ルネ)
2019-01-13 19:58:09
私も10代後半に心焦がした音楽は、今でも私の根幹を支える重要な根っこになってます。 それらがなければ、今頃どうなっていたかわかりません。
ジェレミー&ザ・サテュロス、今まで知りませんでした。 ネットで試聴しましたが、妖しい妖しい(笑) 退廃ですねえ。
私もお安いのを探します。
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まさしく (ken)
2019-01-14 23:35:16
中古レコードをパタパタと見る愉しみ、は何者にも代えがたい。記憶力を失った近年、その瞬間だけ学生の頃みて手が出なかったレコードを思い出す。好奇心の赴くまま手にする。CDが出る前までだから、20代までの記憶の宝庫なんですよね。
私も記憶力がない割りには、ルネ氏の記事は覚えていて、ショボショボ入手。ESPのパウエルも、Savoyのハンク・ジョーンズも楽しかった。いつもありがとうございます。
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Unknown (ルネ)
2019-01-15 07:57:19
40年以上レコード屋でパタパタしてますが、ワクワク感がなくなることがないですね。 持続するこの感覚は一体何なんだろう?と不思議でなりません。 ここしばらくはお忙しいようなので御自愛下さい。 またレコード屋でパタパタ出来る日が早くやって来ますように・・・
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