Cannonball Adderley / Alabama Concerto ( 米 Riverside RLP 1123 )
ジョン・ベンソン・ブルックスは40年代にレス・ブラウンやトミー・ドーシーに編曲や自作を提供するなどしていたいわゆるアレンジャーで、
ギル・エヴァンスと親交があった。ギル・エヴァンスはブルックスが書いた "Where Flamingos Fly" を好んで取り上げるなど、2人は仲が良かった。
ジャズの世界では Vikレーベルに1枚だけ残した "Folk Jazz U.S.A." で知られている。
その彼が南部の田舎で暮らす人々の生活を題材に書いた組曲 "アラバマ協奏曲" をキャノンボール、ファーマー、ガルブレイス、ヒントンの4人が
演奏したのがこのアルバム。ジャズのレコードではこれ以外には録音はないんじゃないだろうか。まあ、究極のマイナーアルバムだ。
4部構成で、譜面に込められたブルックスの想いを読み取ることができる知的な演奏家が必要ということで、この4人に白羽の矢が立ったようだ。
各楽曲はジャズのスイング感は希薄だが、元々のコンセプトがインプロヴィゼーションを中核にしながらもジャズの音楽を狙ったわけではない、
ということで、これはこれでいいらしい。"ポーギーとベス" のように歌があるわけではなく、インストだけで普通の人の生活を物語るというわけ
だから、これはなかなか難しく大変な仕事だと思うけれど、4人の一流はさすがにしっかりとした演奏で、じっくりと聴かせる。
ピアノとドラムがなく、ギターとベースは軽くオブリガートを付ける程度なので、実質的にはアルトとトランペットの無伴奏による二重奏という
内容となるため、管楽器の演奏には一定の腕が必要になること、そして、そういう内容だから管楽器の音が上手く録音されていなければいけない。
そう考えると、このアルバムは成功していると言える。特にキャノンボールのアルトは素晴らしい演奏だし、そういう演奏をリヴァーサイドの
ステレオ・プレスが実に生々しく再生してくれる。このレコードの音質はクリアで、楽器の音が非常にくっきりとしている。
普通の4ビートでスイングする音楽ではないので、そういう基準で聴いてもこのアルバムの良さはわからない。これはキャノンボール・アダレイと
アート・ファーマーという2つの知性が奏でる楽器の生々しい音をまるごと愉しむアルバムだ。リヴァーサイドのステレオ盤、サイコー!という
ノリで音量を上げて聴くとよい。