廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

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やはり素晴らしい晩年のエヴァンスのライヴ

2016年08月27日 | Jazz LP (復刻盤)

Bill Evans / Live at Lulu's White in Boston - October 30,1979  ( 英 DOL DOR2085H )


エヴァンスの最後のトリオによる、死の1年前にボストンで行われたライヴ演奏。 この音源自体は前からリリースされていて愛好家にはよく知られたものだが、
私は聴いたことがなかった(というか、エヴァンスの音源は多過ぎてカヴァーし切れない)ので、安価でLP化されたのを機に聴いてみることにした。 

大好きな曲 "Re : Person I Knew" で始まるうれしいプログラム内容で、以下お馴染みの曲が続いて行く。 エヴァンスのピアノはいつもと変わらず
音が美しく、運指もなめらかで、フレーズの構成の仕方もエヴァンス・マナー。 若い頃はブロックコードを多用していたが、後年は広い鍵盤の上を
静かに波を切って進んでいく帆船のようにシングルノートで音を紡いでいく。 

"I Do It For Your Love" ではポール・サイモンが工夫を凝らして編み込んだ複雑でデリケートなコード進行の彩を何とも妖しく再現していて、
エヴァンスが如何に原曲の曲想を適確に捉えてそれを表現できるかというのを証明している。 これを聴けば、きっとポール・サイモンも満足するだろう。

最後の "My Romance" はアップテンポでベースやドラムのソロスペースを大きくとって観客を興奮させて、ライヴは終了する。 こうやって観客を
楽しませる演出も忘れない。 そして、メンバー紹介とお礼の言葉を述べるエヴァンスの声に、涙、涙・・・

観客たちの賑やかな話し声やグラスの触れ合う音が上質なトリオの演奏と混ざり合った至福の時が流れていく。 部屋の中がまるでジャズクラブになった
かのような錯覚に襲われる。 なぜか、こんなに演奏内容が心と身体に沁み込んできたのは久し振りだった。 際立った演奏ということではなく、いつもと
変わらないエヴァンス・トリオの演奏なのに、レコードから流れてくる音が私の心に直接響いてくる。 このレコードはうちのいささかくたびれたオーディオ
セットとは相性がいいのかもしれない。

気になる音質だが、旧いモノラル盤を聴き慣れている耳には音圧はやや低めかなと感じるかもしれないが、音自体はとてもきれいに録れている。
人為的にいじった形跡もなくとても自然な音場感だし、シンバルも粒度の細かいきれいな音で録れている。 ラジオ放送用に録音されたものなので、
十分な設備の下で録られたようだ。 これならMPS2枚組の時のような論争は起きないだろう。



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