Laurindo Almeida Quartet featuring Bud Shank ( Pacific Jazz Records PL-1204 )
まるで洗いざらしのTシャツとジーンズのような肌触りで、本当に飾り気のない音楽が詰まっている。 アルメイダの演奏はあまりブラジル臭くなくて、
飽きのこない音楽になっているのが好ましい。 野心的な所もなく、一般にはあまり知られていない楽曲を集めているので、いつだって新鮮に聴こえる。
だから、苦手なこのレーベルの中では例外的によく聴くレコードになっている。
バド・シャンクがアルト1本で参加しているところも良い。 私はこの人のフルートが苦手なので他のリーダー作は聴く気になれないけれど、ここでは
ハスキー気味なトーンでメロディーをゆっくり確かめるように吹いていて、素朴な風情がいいと思う。 西海岸には何といってもアート・ペッパーがいて、
どうやっても彼には勝てないと思っていたに違いない、だからフルートを多用するようになったんじゃないだろうか。 でも、こうやってアルバム1枚を
通してアルトを吹いているのを聴いていると、この楽器1本だけで十分やっていけたと思うよ、と言ってあげたくなる。
このレコードは1953年と54年の2つのセッションが収められているけれど、こんな早い時期に、クリード・テイラーがゲッツにやらせた10年も前に、南米の
音楽とジャズを違和感なくブレンドした上質な音楽を何気なくやっていたというのは、よく考えると凄いことだ。 カリフォルニアには他の地域よりも
メキシコや南米の文化がずっと自然に根付いていたとは言え、日常風景からそれらを上手く切り取って新しく提示し直している様に感心してしまう。
アルメイダのギターは基礎的な訓練が十分に積み上げられたことがわかる演奏で、好感がもてる。 実直に音楽に取り組んできたんだな、と思う。
普通ならジャケットには本人の顔が大きく写ったデザインがされるのがアメリカのレコード制作の常道だけど、初版の2枚の10インチも含めて、そういう
デザインを避けているのも、この人が派手なことを嫌ったからなのかもしれない。
また、この録音は人工的な音響装飾を排して目の前の演奏をその場の空気ごとそのまま録ったような生々しさで、これがいい。 後のこのレーベルの
音に感じるような違和感がなく、素朴な演奏の雰囲気が等身大で目の前に現れる。 エンジニアは Philip Turetsky。 ロサンゼルスの北西にある
ローレル・キャニオンの自宅に小さなスタジオを構えて、このレーベルのいくつかの録音に携わっていた。 LP期に入って間もない時期なのに、これは
いい仕事を残してくれたと思う。 スタジオで演奏された音楽をバイアスを気にせず、ありのまま愉しむことができるのは心地よい。